Ep.4:相坂 響の場合(2)
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そこで目にしたのは学年でも有名なギャル3人組の1人、
その彼女の告白を彼は了承した。
今でも思い出せる。
「え、ええっと、わ、私と付き合って!」
「いいよ」
「え〜〜っ!!いいの!!」
「うん」
そこまで聞いて私はその場から走り去った。いや、逃げ出したんだ。
そのまま走り続けて家に帰った。
自室に飛び込んでからはベットで蹲った。
「うわああああああぁ———また、私———遅かったんだあぁ」
後悔。
また、私の行動は遅かった。
泣き続けた。誰もいない家の中で抱えていた気持ちを吐き出すように吐露し、止まらない涙を流し続けた。
私はいつの間にか泣き疲れて眠ってしまっていた。
「酷い顔……」
翌朝、鏡に映る自分の顔からどれだけ後悔していたかが伺えた。
初めて、子供の恋じゃない、本当の恋と言えるものを
でも、彼との関係を進めたくて、彼の事をちゃんと知りたくて、一度距離を取ろうとした。この時に伝え方を間違えた。
彼が私と距離を置いていたのは私の告白を嘘の告白だと思っていたから。
その事に気づいた時には彼は去っていた。
気を取り直して彼に告げようとした。それなのに。
その時には、もう遅くて、
その日、教室に入ったのは予鈴が鳴る少し前、泣き顔は化粧でうまく誤魔化せたつもりだったのに
休み時間になって
私は手遅れだった事を告げた。
その事を話しているとまた涙が溢れてきた。泣き続ける私を保健室まで送ってくれて『しんどいなら今日は帰る?』と聞いてくれた。
そっと私を抱きしめて教室へ帰って行った。
私も少ししてから保健室を後にした。
家に帰り、誰もいないリビングでソファーに座り込む。
「
思わず口から溢れた言葉。私の本心だと思う。
それだけ彼の存在が大きくなっている。
『失って初めてわかる』事があるのは物語でよく言われている事、それがまさか自分がそう思うなんて思いもしなかった。思いたく無かった。
また、涙が溢れてきた。泣いて、泣いて、泣き疲れてソファーで眠ってしまった。
目が覚めたのは21時、昨日からなにも食べてなくて、身体は空腹を訴えてくるけど、心は食べる事を拒む。
空腹と失った水分を補うために水を飲んだけれど、その途端に吐き出した。
随分長い間、吐いていた気がするけど途中からはなにも吐き出せない。
フラフラとした足取りで自室に入り倒れ込むようにベットに突っ伏した。
誰もいない家で一人後悔の念に苛まれていた。
深夜に喉の渇きで目を覚ました。
時間を確認しようとスマホのスリープを解除する。
『
他には私を気遣うものが沢山届いていた。
「また……嘘の告白……どうして、
それならこの気持ちをもう一度伝えたい。
でも、最初はキチンと話をする事から始めようと少しだけ前向きになれた。
体調が悪いということで次の日は学校を休んだ。
その次の日には学校に行く事ができるくらいに体調は回復した。
彼の元に向かった私の前にはそれ以上の光景が広がっていた。
派手な見た目の彼女達が彼の周りにいることで近寄る事ができない。
遠巻きに眺めていても仲が良さそうに見える。
いや、彼女の友達って距離感じゃない。もっと親しい関係に見える。
「
「いいよ。
「私は今日でもいいよ」
「私も〜」
「じゃあ、帰りに買い物して行こうぜ」
「わかった」「お〜〜っ」「了解」
聞き耳を立ててしまった訳じゃない。と、思う。
彼らの会話は普通に聞こえる声量だった。
周りのクラスメートも驚いた視線を向けている。
なんで、嘘の関係で料理作るの?彼女でもない
理解できない。今、あの4人の関係ってどうなってるの!?
嘘の告白なんだよね!?
なんでそんなに打ち解けてるの!?
私が頑張っても全然靡かなかったのに!?
これがギャルの距離感なの!?
へたり込みそうな体に力を込めて自分のクラスに戻って机に突っ伏した。
おでこを机に打ち付けてゴンと大きな音が周りに響いた。
「
「
心配してくれる
もうすぐ休み時間は終わる。
「後で、聞いてくれる?」
「お昼休みでいい?」
「うん」
悶々とした気持ちを抱えたまま午前中の授業を受けた。あんまり頭に入ってこなかった。
昼休みになり
途中、
つい目で彼を探すとあの3人が彼と机を合わせてお昼ご飯を食べようとしている。
「ふ〜ん、ずいぶん仲が良さそうだね、あの4人」
「……うん」
そう返すのがやっとだった。
◇
中庭についてベンチに腰をかける。
さっきの光景を思い出して俯いてしまった。
「ほ〜ら、シャンとして、ねっ」
私の頬を両手ではさみ顔を上げさせられた。
「なにがあったの?」
「
「それだけ?」
「もう、なんか作ってもらった事があるみたい……」
言ってて涙が滲んできた。
「私、付き合ってる時に、そんなお願いされなかった……」
「それは———」
嘘の彼女に頼めなかった。そう言葉を紡ごうとして踏みとどまった。その予想通りなら
どういう状況!?
まさか3人と付き合ってる!?いや、そんな事はない……と、思う。
「もう少しだけ、様子を見ない?ほら、嘘って分かってるんだから……」
「うん……」
私の想像通りなら
それなら、結論を急がなくてもいいんじゃないか。
曖昧なままの方が希望を持てるんじゃあないか。
そんな風に考えた。
でも『うん……』と言って俯いた
それなのにかける言葉が出てこず私も黙ってしまった。
◇
暫く経っても
最近は彼女達がいることで
代わりに『
面と向かって言えないその情けない姿を見ていると腹が立った。
陰口を叩く男子と勇気を持って前に踏み出せない私。両方に腹が立つ……
こんなの私らしくない。このままはイヤ!
今日、私は一歩踏み出す。
お昼休み、
4人で昼食を取ろうとしているところに割って入る。
「
今、私の顔は真っ赤になっていると思う。
ガタッと音がして
「いいよ、座りなよ」
ホッとして「うん」とだけ答えて席に着いた。
「
「私は
「
「私は
「もっと、楽にしなよ〜」「そうだよ〜」「だな」
口々に返された言葉が思いの外優しいものでホッとした。
「
「……一緒に、お昼食べたかったの」
「ふ〜ん、一緒にいたかったんだあ〜」
うっ、そこを突いてくるかな〜!!
「いいや、一緒に食べるのでいいよ。じゃあ、いただきます」
「「「いただきます」」」
「……いただきます」
数日前から
机の上に出されたのは3段のお重。
あれ、みんなで取り分けてるの?
「もしかして、新堂さんがみんなの分作ってきてるの?」
「そうだよ〜、
「私も
「
「そんなに褒めてもなにもないぞ」
「まあ、料理は好きだし、好きでやってる事だしな。それに食材のお金はみんなに貰ってるからな別に負担じゃないしな」
「照れる
隣に座っていた
驚いているとウインクをして元の席に戻っていった。
「
「カレーかぁ、
「
「うん」「俺もいいよ」
羨ましいな……私も———
「
「えっ!?、行っても、いいの?」
「ん、俺はいいよ」
「なら、行く!!」
「お、おう」
「中辛、辛口どっちがいい?」
「俺はどっちでも大丈夫」
「私、中辛〜」「私も〜」「中辛でお願い、します」
「おっけ、中辛ね。そろそろ昼休み終わるから戻ろうか。
「うん!」
片付けをして、席を元に戻してそれぞれの教室に帰ってゆく。
一歩前進できた。
放課後、
教室に戻ってから
多分、私は舞い上がっていた。
◇
放課後になりみんなで買い物を済ませて
付き合っていた時にも行った事が無かった彼の家。
「「「ただいま〜」」」「お邪魔します」
彼の部屋、あんまり物がない。
1DKのダイニングキッチンにはローテーブルと座椅子が一つ、クッションが4つ。壁際にソファーがある。
40インチのテレビとTV台の中にレコーダー。
キッチンには買い揃えられた冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器の他に調理器具。
「
「うん」
付き合っていた時に許されていた距離。
「みんなと、仲良いんだね……」
「3人とも、友達だからね」
そう言ってキッチンに立つ2人を見ている彼の表情は優しげで慈愛に満ちていた。
「私らがさ、
ソファーからこっちに四つん這いになってきた
「俺、飲み物とってくる」
逃げちゃったよ〜。
「
「それで
ニシシッと笑い私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「応援、してくれるの?」
「ん?ああ、
「うん、
「
「うん、
「はい、アイスティ」
「お〜」「ありがとう」
「何の話?」
「ん〜、今度みんなでここに泊まろうって話」
「「えっ!?」」
「ん?」
「
「お〜」「いいよ〜」
「はい、決まり!!
「俺に拒否権は!?」
「「「な〜い!!」」」
「ないんだ!?」
「まあ、いいけど。来客用の布団一つしかないよ」
「なんなら、一緒に寝る〜」
「ばっ、そんなこと言うなよ!?真に受けたらどうする?」
「ん?一緒に寝るよ」
「「えっ」」
「だって、寝るだけでしょ。そ・れ・と・も・2人はどんな意味にとったのかなぁ〜。言ってみ」
「それは、その〜」
ごにょごにょと口籠もってしまう。
「
「そこまでにしような
「ちぇ〜、話逸らした〜」
3人は気さくに私を受け入れてくれる。
告白をした
「こんな格好してると、結構、色々言われるから人目があると寛げないんだよね〜。ここだと気にしなくて良いし、
その後は
私が作るものより美味しかった。美人で料理上手、羨ましいなぁ。
片付けを終え、談笑をしていると
まだ19時、失礼な感想だけど、意外にもちゃんとしてる。
「じゃあ、
「またね」「またな」「私も」
「うん、みんな気をつけて」
「あっ、そうだ。
「
「うん、名前がいい」
「じゃあ
「うん」きっと私の顔は赤くなってると思う。
「え〜、
「うっ、三人も、また明日」
「ま、いっか〜」「うん、明日」「ああ」
私達は
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