Ep.2:菅野 愛香の場合
「負けた〜!!」
「じゃあ、
「あ〜、助かった〜、あぶなかった〜」
教室の一角で騒ぐ3人のギャル。
SNSの推しのフォロワー数の多さを競っていて
「罰ゲームなんにする?
「あぁ〜、
いい事を思いついたとドヤりながら
罰ゲームは『隣のクラスの
「えぇ〜〜」
休み時間中3人は姦しく騒ぎ続けた。
◇
「ピコンッ」
スマホの通知音がなる。
やばっ、マナーモードにし忘れてた。
ついでに通知を確認。
『Aki:うちのクラスの
あら、久しぶりだな
こうやって連絡があるという事はまた罰ゲームか。
「Kyoh:ありがとう」とだけ返しておく。
お察しの通り、
彼女も罰ゲームで俺と交際を始めて罰ゲームの期限かっちりで別れた。
まあ、お互いに分かってた事だから友達の様に過ごしてそこで終わり。
今は事前に嘘告の情報が分かれば教えてくれる友人。
今は
俺こと
俺が無害なのをいい事に嘘告をしているのは分かっている。だから俺も、嘘告彼女には極力触れない。話だけで楽しく友人の様に接して期間を過ぎれば彼女達の方から別れを告げてくる。俺は毎回それに『嘘告お疲れ様』と返すのみ。
どの子からも悪く言われてはいないし
本当の俺の恋はこんな稚拙な遊びをしている奴等とは始まらないんだよな。
◇
放課後になり教室を出て昇降口を降る。
下駄箱を開けると一通の便箋があった。
無視するという選択肢はない。小学校の頃それをして女子から浴びせられた非難の目は忘れられない。もし今あの目を浴びせられたら性癖が歪みそうだ。
きっと新たな扉が開く事だろう。
まあ、とりあえず便箋を開け中の手紙を確認する。
事前に
「しゃあないなあ」
気乗りしないが向かうしかない。
体育館裏には隣のクラスのギャル、
彼女といつも一緒にいる2人のギャルの姿は見えない。
直接絡んだことのない彼女だが、モジモジとしている姿を見ると
初心なその反応を見ているとギャルのイメージと違うなあ。
もっと色々経験してそうな子がくるかと思ってた。
以前、嘘告に付き合ったギャルは付き纏いを交わすために偽の彼が欲しかったと言われたなあ。
「
「は、ひゃいっ」ビクッと肩が跳ねる。すっごい緊張してるな。
「俺を呼び出した理由を聞いていい?」
「あ、ええっと〜」凄い勢いで目が泳いでる。
これだけ緊張されると逆に俺は落ち着いてきた。
「
「吐いて〜」「はあぁ〜」
「どう、少しは落ち着いた?」
「はい」
「よし、じゃあ、要件言ってみよう!」
勢いで先に進める。ギャルだけあってノリはいいみたいだ。
「え、ええっと、わ、私と付き合って!」
「いいよ」
「え〜〜っ!!いいの!!」
「うん」
後ろからザッという音が聞こえた。
誰かがきたけど告白中だったから気を利かせてくれたのかな。
「それで
「うん?そうだよ」
「だったら一週間くらいかな?」
「えっ、いやっ、あの、その……」
「じゃあ、今日、俺用事があるから、明日からよろしくね」
今日はスーパーの特売があるからな。
「え、えっ」
嘘、待って、一週間って、なに?
『Aika:勘違いされたっぽい』
『Manami:どしたの?』
『Kagari:なんて言ったの?』
『Aika:告白はOKだった。けど、一週間って』
『Manami:は?』
『Kagari:は?』
『Manami:何それ』
『Kagari:どうしたらそうなる?』
『Aika:罰ゲームのこと知ってたっぽい』
『Kagari:どゆこと?』
『Aika:罰ゲームの告白かってきかれた』
『Manami:それで正直に答えた?』
『Aika:うん』
『Kagari:ちょい抜ける』
『Manami:おけ』
『Manami:嘘告と思われたね』
『Aika:たぶん』
うちの学校に
「
「
「
「ああ、わかりました」
普段人があまりいない4階の多目的ホールに移動する。
途中、自販機により
「それで
「ああ、この前まで
「なぜ
「友達が告白して一週間て言われてな。なんでそんな事を言ったのか気になってなぁ」
「あぁ、そういう事」
「思い当たる節でも———」
「なんだよ、それ……、小学校から嘘告されて、断ったら虐められてたなんて
「ええ、まともな恋はできないでしょうね」
「そう、だな……、
「
「それは……キツイな」
「ええ」
「いや、ありがとう教えてくれて。そろそろ、戻るわ」
「はい、それでは」
「
『うん』
『
「分かった、けど、今回はうちらが悪いわ」
『なに?』
『どうして?』
「絶対、他の人に言うなよ。
『嘘っ!?』
『マジッ!?』
「付き合ってる彼氏の良いところを聞かれて『なんとなく』って言われたら信じられんだろ。それで、告白断ってたらイジメられてたらしい」
『いや、酷いわ、ソレ』
「ああ、それで
『ああ、それで一週間なんだ。
「そうだなぁ」
『まいったね、そんなつもり無かったんだけど……』
「告白を持ちかけたの私だから、
『私も一緒に行くよ』『すんっ、私も、行く』
「そうだな、明日、みんなで謝りに行こうか」
電話の向こうで泣いている
今回は本当に失敗した。
まあ、罰ゲームで告白さそうとしたんだから人のことは言えんか。
明日とりあえず謝ろう、それからだな全部。
◇
翌日、俺は
そして今、俺の目の前では普段見る事のできない光景が広がっていた。
3人のギャルが土下座をしていた。
いやいや、なにこれ、この状況。
「なんで、3人とも、とりあえず立って」
「
「
「
「良いから、とりあえず立って、それこそお願いだから!!」
なんとか3人の土下座をやめさせた僕は自分の口から当時の事を話した。
ギャルと車座になって話をする日が来るとは思っても見なかった。
一番最初に僕に嘘告を告げてきた子はクラスの女子にいじめられていた子で僕が選ばれたのもなんとなくだった。初めてのことでその告白を喜んで受けた僕は一週間後にクラス中から嘲笑を受けた。告白してきた子ですら一緒になって笑ってた。それからも何度か告白を受けて別れてを繰り返した。そのうちに彼女に 『僕のどこが好き?』って聞いてみたんだ。そしたら帰ってきたのが『なんとなく』だよ。絶対、僕のことなんとも思ってない。また、揶揄うつもりだって分かったんだ。だから、告白された時にそれを聞いて答えられない子とは付き合わなかった。そうするとね、クラスの女王様が『面白くない』って怒りだして今度は僕がいじめの対象になった。
いじめが落ち着いた頃にまた告白が始まった。また女王様の怒りを買うのが嫌だから告白は受けるけど手を繋いだりとかは一切しない様にして僕と女の子を守る様にしたんだ。中学に上がった頃には指示してくる女子がどんどん悪質になってきてね、ホントに何回か貞操の危機を感じたよ。一番酷かったのは僕が頭を殴られて気を失ってる時に服を脱がされて、いやだって泣いてる子に無理矢理挿入させようとしてた時かな。ギリギリで目を覚まして逃げれたから良かったけど、あのままだったらと思うとその子達が怖くなった。それで僕はこっちに転校してきた訳。まあ、転校後もよく告白されるけどやっぱりみんな『なんとなく』僕の事を好きだって言うんだ。だから、学生の間は告白ごっこに付き合って社会に出てからホントの恋ができたら良いなと思ってる。
「
「うん、そうだよね」なぜか
「それで、改めてお願いなんだけど」
「うん、なんでも言って」
なんでもって言いました?いや、僕はチキンなので手は出さんけど。
「3人と友達になれないかな?」
「「「えっ」」」
「これだけ僕の事を知ってもらったんだし、これで『はい、さようなら』は寂しいなって思えたから。友達になってくれない?」
3人はお互いの顔を見てこちらに向き直る。
「分かった、それじゃ、これから宜しく」代表して
「ありがとう、こちらこそ宜しく」
4人で笑い合う。
僕はかけがえのない友人を得る事になったのだが、その事に気がつくのはまだ先のお話し。
今回、意図せず嘘告最短記録を更新してしまった。
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