第6話 とある国の出来事

 それは、とある国の話。

 王様が、ある日お城から町の方を眺めると、多くの人が町を行き交っているのが見えた。

 王様は国民の数が多過ぎる、と感じた。

 王様は臣下を集めて、国民を減らすためにはどうするべきか? と相談する。

臣下1「重税を課しましょう。嫌な国民は海外にでていきます」

 そうしてみたけれど、国民は貧しくなって、海外に引っ越しもできなくなった。

臣下2「刑罰を重くしましょう。死刑を増やせば、国民は減ります」

 そうしてみたけれど、国民はより警戒して暮らし、逮捕されないようになった。

臣下3「毒を撒きましょう。国民が一定程度、死ぬぐらいに……」

 そうしてみたところ、国民の多くが死んでしまった。


 王様は、寂しくなった町を眺めて、国民の数が少なくなり過ぎた、と感じた。

 王様は臣下を集めて、国民を増やすためにはどうするべきか? と相談する。

臣下1「税を軽くしましょう。他国から移住者が増えるはずです」

 そうしてみたけれど、すでに産業が壊滅している国に移住する人はいなかった。

臣下2「刑罰を軽くしましょう。住みやすくなれば国民は増えます」

 そうしてみたけれど、事件が頻発するなど、治安が悪くなっただけだった。

臣下3「他国から子供を誘拐してきましょう。子供なら戻りたいと言いません」

 そうしてみたところ、他国との間でトラブルになり、戦争になって、さらに多くの国民が死んでしまった。


 王様は戦争で荒廃した町を眺めて、何とか復興したい、と感じた。

 王様は臣下を集めて、復興するにはどうするべきか? と相談する。

臣下1「国民に復興資金をださせましょう。よもや嫌とは言いますまい」

 そうしてみたけれど、国民は疲弊し、町がますます寂れただけだった。

臣下2「受刑者に、復興の工事をさせましょう。人件費が浮きます」

 そうしてみたけれど、受刑者が逃げたり、サボったりして作業はすすまなかった。

臣下3「国債をばら撒いて、そのお金をつかって復興しましょう」

 そうしてみたけれど、国債が暴落し、この国の信用が失墜し、復興どころかその国のいく末すら危うくなった。


 王様は壊れた経済を何とかしたい、と感じた。

 王様は臣下を集めて、経済成長するにはどうするべきか? と相談する。

臣下1「補助金をばら撒きましょう。損失補填、休業補償、国民が喜びます」

 そうしてみたけれど、補填、補償が終わると国民は破綻しただけだった。

臣下2「公共工事を増やしましょう。ケインズはそう言っていました」

 そうしてみたけれど、旧態依然とした建設業だけが潤っただけだった。

臣下3「金利を下げれば大丈夫ですよ。為替も安くなり、輸出も増える。お金も借り

    やすくなって、経済が回ります。ゾンビ企業が多いと、雇用も増えますよ。

    大丈夫、国王ではなく、中央銀行にさせていればいいのです。責任もないの

    ですから、やっちゃえばいいのですよ」

 そうしてみたけれど、経済はまわるどころか、低迷したままで、金利が安いからといって財政規律が狂い、補助金やら、公共工事やらにバラマキが増え、また国債発行が増大した。お金を返す当てもないのに、お金を借り続けているようなもので、国の未来は完全に壊れた。


 とある国はこの後、どうなったでしょう? あなたの国は、大丈夫ですか?




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