立ち上がらない友人は何をしても立ち上がらない

タカ 536号機

どちらかと言うとむしろ狼藉の将来が不安だby螺尚

俺こと頑張がんば 狼藉ろうぜはコンビニにより適当にアイスを買いながら友人の田地安賀たちあが 螺尚らなおの家に向かっていた。


そもそも事の発端はこうだ!ラインで螺尚の奴からラインがきた。めちゃくちゃ簡潔な文で「俺は今日告る」だ。

やめておけと送ったが既読スルーをされてしまった。


そもそも螺尚が好きな相手は螺尚とまるで接点がない。相手は螺尚のことを知ってすらいないだろう。好き、好きではないの問題ではなくそもそもあなた誰ですか?状態なのだ。

当然うまくいくはずがない。


1時間後「ダメだった、家に来てくれないか?もう俺は気力をなくしてしまった」と来た。俺はマズイと思った。螺尚は普段はポジティブで螺尚のことを知らない相手に告れる程の勇気を持ったやつだ。

でも、その分一度落ち込むと中々立ち上がれないのだ。


俺は「すぐ行く」と送り今こうして向かってるというわけだ。


「ふう、着いた。チャイム、チャイムっと」


ピンポーン


1分後 おかしいな出てこないぞ?押せてなかったか?


ピンポーン


また1分後 あれ?全然出てこないぞ?


ピンポーン


3分後 「何の用?」


「お前が呼んだんやろがい!」


インターごしから声が聞こえた。


「えっ俺お前呼んだっけ?」


「呼んだよ!ライン見てみろよ!」


「....あっ本当だ!すまん、しばらく放心状態で自分がなにしてたか分からないんだ。とりあえず上がってくれ。鍵は開いてる」


ということでようやく螺尚の家に上がれたのだった。


「まあ、それにしても残念だったな。そ、そんなに落ち込むなよ!また、好きな子見つければいいじゃん。ただし、今度はある程度関係を進めた上で」


俺はポンポンと螺尚の肩を叩くが反応がない。


「....俺は落ち込んでなんかない」


「嘘つけ!そのテンションで誤魔化せるかよ」


「狼藉なら騙せるかと」


「それは褒められてるって解釈でいいのか?」


「いや、馬鹿にしてる」


「ぶっとばす!お前が今失恋中とか落ち込んでるとか関係ねぇぶっとばす」


「真面目な話、俺はもう恋はしないつもりだし、頑張ることもしないつもりだし、将来は働かずに狼藉から金を搾取さくしゅして生きていくつもりだし」


「なんか、最後に俺にとんでもなく不利益な

「だし」なかったか?」


「お前に利益しかない話だが?」


「そうか、なら良し」


なんか、螺尚が小声で「馬鹿すぎる」とかなんとか言っているが意味が分からないのでスルーだ。


「と、とにかくほら前向こう次の恋は始まってるんだぜ!」


「始まらない。彼女が最後の恋愛相手だ。

そして狼藉に春は訪れない」


「なんか、俺まで巻き込まれてなかったか?」


「そんなことはないが...最近秋と春が消えて夏と冬の気候だけになってるよなって話だ」


「そっか、なら良い」


「...俺は俺より狼藉の方心配だ」


「ん?なんでだ?今はお前だろ?なあ、くよくよしてないで前向こう、前!立ち止まったっていいけど進むことをやめちゃダメだろ?

そういうの灯台デモクラシーって言うんだそ!」


「うん、言わない。そしてそれを言うなら灯台下暗しな」


「そんなことはどうでもいい。問題はお前だ!」


「問題はお前の国語能力だと思う」


「一度の失敗でくよくよすんなよ!

また、やり直せばいい。いざ、ギブアップ」


「うん、それネバーつけてないからただ諦めてるだけだぞ」


「屁理屈をこねるなよ!一度の失敗を恐れるな!怖くなったらこの言葉を思い出せ

「一度あることは二度あるし二度あることは三度ある」」


「その言葉を思い出したら余計怖くなると思う。そしてそれを言うなら「二度あることは三度ある」だ。本当に心配だよ」


「ま、まあなんだ。努力することだけはやめんなよ!いつも影で見られてないとこでネチネチ努力するのがお前じゃないか」


「ネチネチだと嫌味に聞こえるから俺以外の奴に同じセリフ吐くんじゃねぇぞ?」


「とにかくー立ち上がれ」


「最終的にすごく雑になってない?嫌だけど」


「なんで、嫌なんだ。一緒に「鼻水垂らして」頑張ろぜ!」


「そこは汗水流してくれないか?それはただの風邪だぞ?それに弟子もできたし」


「なんで!?どうゆう経緯か全く分からないだけど」


「今や俺教祖だし」


「何の!?」


「諦めようぜ教」


「誰が入るんだよ!?」


「内容は簡単世の中の全てに絶望し諦めることが目標」


「本当に誰が入るんだ!?」


「今弟子40いる」


「そいつら何が目的で入ったんだよ!?」


「でも、みんな「ミャー」とか「ニャー」しか言わないから意思疏通ができない」


「全員野良猫じゃねぇか!ってかお前そんなに野良猫手懐けたのかよ!」


「さっきたまたま猫の鳴き声マネしたら寄ってきて仲良くなった」


「何その才能!開花してるじゃん。いいじゃんそんな才能があるならやってける!頑張ろうぜさっ走ろうぜ「宇宙に向かって」」


「夕日に向かって走ろうな。まあ、走らないけど」


「走らないんかい!」


「でも、俺割と元気だからさ。ただただ世界を諦めただけだからさ」


「どこが元気!?」


「でも、今日はお前が来てくれて大分紛れたしありがとうな!」


「ま、まあ今日の所はこのくらいか。明日こそお前を立ち上がらせてやるからな」


「本当にありがとうな」


「ああ」


そうして俺は螺尚の家を今日の所は帰るのだった。




螺尚は狼藉が帰った後ため息をついた。


狼藉は本当にいい奴だよな。友達想いで。

でもな、だからこそ俺はお前に嘘をついちまったよ。


確かに振られたのは悲しかったし落ち込んだりもしたけど、何より一番キツイのは振られた相手がお父さんの再婚相手の子供ということを告白して振られて帰ってきた後にお父さんから聞かされたことなんだよなあ。


きっとこんなこと言ったら狼藉は自分を犠牲にして頑張っちゃうからなぁ。


でも、一言だけ叫ばせ欲しい。


「めっちゃ気まずくなるに決まってるだろおおおおおお」







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