第6話 ひさしぶりに戦闘だぁー!



 ああ、勇者を支えてともに戦った僕。勇ましかった。

 精霊王の剣(レプリカ)を手に、なんならすてた金額ぶんが素手攻撃力になる『持たざる者』を駆使してさ。あのころはダンジョンかワールドマップなら、いくらでもお金ひろえたからねぇ……(遠い目)。


 今はすてたら返ってこない!

 お金使う技は封印だ。


「あっ!」


 僕は気づいた。

 今日はただの実地調査のつもりだったから、風神のブーツをはいてない。風神のブーツは今までの戦闘で、ずっと僕を強化してくれた超便利グッズだ。つまさきをふみふみするだけで、戦闘スピードがグングンあがってく。


 この世界のバトルはターン制なんだけど、敵と自分の素早さ数値の差で、ターン内の行動回数が決まるんだ。つまり、敵より三倍早ければ、一ターンに三回行動できる。風神のブーツがあれば、一ターンで千回行動もザラなんだけど。


 地獄の番犬は牙をむいて、うなり声をあげる。デカイなぁ。まあ、体高五メートルの狼みたいなもんだ。牙だけで三十センチはありそうだよ。


 チャララララ……。

 あっ、聞きなれた戦闘音楽。

 やっぱり、かかるんだな。

 となると、続いて出てくるのはテロップか。



 アコギーな地獄の番犬が現れた!



 あっ、テロップが今までと違う。野生の〇〇が現れたでも、〇〇が現れたでもない。野生のとつかないときは、魔王軍のモンスターって意味だったのに。


 アコギー商会のモンスターだから、アコギーなモンスターなんだろうか?


 ちょっと違和感をおぼえたけど、とりあえず、戦闘だ。


「ぽよちゃん、行くよ?」

「キュイ!」

「聞き耳!」

「キュイキュイ!」


 ぽよちゃんのスキルによって、敵のレベルや数値、使えるスキルなんかがわかる。地獄の番犬はレベル13。

 スキルは雄叫び、仲間呼び、一点集中だ。雄叫びは次のターンで相手を金縛りにするスタン技。仲間呼びはその名前のとおり、仲間を呼ぶ。


「ん? 一点集中ってなんだろう?」

「キュウ?」


 僕とぽよちゃんが話してるうちに、ダンケさんが走りだした。


「ウオーッ! 坊主どもはさがっておれー!」


 あっ、勝手に行っちゃった。

 ムリしなくていいのに。

 たぶん、このなかでおじさんが一番弱いから。


 ダンケさんは両手剣で地獄の番犬に切りつけた。けど、魔王城にいたモンスターだからね。少なくともレベル三十以上じゃないと、まったく太刀打ちできない。ダンケさんは刃をふりおろしたものの、地獄の番犬の硬質なボディーに、あっけなく、はじきとばされた。


「よし。ぽよちゃん、僕らで倒そう」

「キュイ!」


 と思ったんだけど、ん? 動かない。足が動かない?

 これは、まるでスタンにかかったときのような? でも、地獄の番犬はまだ雄叫びしてなかったけどな?


 ああっ! ダンケさんだ。ダンケさんのスキルに、をつとめるってのがある。仲間の行動を全部すっとばすかわりに、自分の攻撃力を二倍にする技……。


「な、なんてことしてくれるんだ。僕ならワンパンで倒せたのに」

「むむ。思ったより固いわい」


 いやいや、ダンケさん、レベル15じゃん。攻撃力二倍になったところで、僕の十分の一もないんだけど。


 僕とぽよちゃんの行動順はとばされてしまった。つまり、僕らのターンは終わりだ。ああ……僕の行動、何十回あったと思ってんの? 風神のブーツなくても、むちゃくちゃ速いんだよ?


 地獄の番犬の行動ターンだ。

 ニヤッと牙をむきだして、ヤツはダンケさんにむかっていく。ウルフパンチ! いや、番犬ってことはドッグパンチか。ダンケさんは大きくふっとばされた。


 ああ……あれは気絶したかな? だから言ったのに。

 まあ、僕とぽよちゃんの素早さが高いから、どうせ、地獄の番犬は一回しか行動できない——はずなんだけど?

 あ、あれ? パンチ、パンチ、パンチ、パンチ、パンチー! 連打した?

 五回? それだと、僕らの平均より五倍早いことになるんだけど、変だなぁ。地獄の番犬の素早さはそこまで高くないぞ?


「もしかして、一点集中のせいかな?」

「キュイ」


 えーと、一点集中。長押しでスキルの詳細な説明が見れるぞ。なになに?



 ——意識を集中して、ロックオンしたターゲットが戦闘不能になるまで連続攻撃する。



 なるほど! 使われたら倒れるまでやられ続ける技か!

 ごめんね。ダンケさん。

 今の僕らには何もできない……。

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