第32話 前へ

私達は村までの道中に存在する街で

屋敷から持ってきた物を売りさばく。


そして他の街でも売りさばく。

合計金貨34枚銀貨7枚


「これっポッチかよ。コルン、本を売れ。」

とバーボン様。

私はまるで絶対神に慈悲を斯うがごとく

涙を流し、それだけは・・・と言った。


道中、馬車の中。

「お父さんのあっちでの名前は?」と美香さん。

そうか、言ってなかったな。

「加納 嘉寿(かのう よしひさ)」だ。


あーだから加納か、と美香さん納得。

「お前は美香と呼ばれていたんだな。」と

バーボン様が言う。

「長い名前よりこっちが気に入ってるの」と

美香さんが言うと

バーボン様は次から美香と呼びだした・・・。


「なんでこっちでバーボンって名乗ってるの?」

美香さんが聞くと


「そりゃ、最初は嘉寿って言ってたさ、でも

 ウォッカと、お前の母さんと会って名前を

 変えたんだ。向こうでウォッカは

 お酒の名前だ。だから俺もお酒の名前にした」


「ラブラブなのね」と美香さん。

「ああ、ラブラブだ。・・・多分。」とバーボン様。


ところでジェニエーベルも勇樹と呼んだ方がいいのか?

長い名前はめんどくさいんだよ。呼び方。


勇樹の方がいいですと答える。


笑いながらバーボン様はわかったと言った。


ところでそのウルト〇マンはなんだと聞く。

美香さんは精霊を宿した探索用よ。と答える。

そうか・・・ふむ、そうか・・・。と

なにか含んだようにバーボン様は言った。


そういえばリアス、君はいいのか?

君のお父さんは黄の国の下議員だろうに。

それに多分次の13人衆だ。

私達といるとお父さんの立場が危ういんじゃないか?

と質問すると、リアスは


「いえ、逆です。首都で時間を戴いて実家に戻り

 説明しました。そしたら必ずバーボン様について行けと。

 私達の事は心配するな、と言われました。

 あ、勿論勇樹君の事は言ってません。」


「そして、これが後生の別れではない。必要なら頼れ。

 それが親だ。親と言うものは子供の為には

 苦しくても辛くても笑いながら助けるものだ」

とも言ってくれました。


「いい親だな。向こうの世界でもそういった気持ちで

 子供を育てる親が多ければよかったんだがな」

と呟いた。


私は向こうの世界で知ったことを思い出していた。


「わかった、最大限お前の親は守るように言っててやる」

とバーボン様はリアスの背中を叩き笑いながら言った。


「父はバーボン様が国を興すと知ると

 大喜びで大興奮したよ。バーボン様は

 あの街では人気高いですからね」


興すんじゃないよ、乗っ取るんだよ、青の国を。

と大笑いでバーボン様は言い返した。


全員この時は本当に、ただの冗談と思っていた。

酔った勢いでも言っていたが・・・。



それから数日かけて村に着いた。


結構早かったな。ここがミネルヴァの街か。

よし、先に墓に行こう。とバーボン様が言うと

全員でミネルヴァの所へ向かった。


バーボン様はお祈りをする。

長いお祈りだった。何かを伝えていたのだろう。

全員が祈る。そしてボルドーの所へ向かう。


ボルドーいるかぁ、とバーボン様。


ボルドーが大慌てで古家からすぐに出てきた。

息が切れていた。

人は、いや吸血族はここまで早く反応できるのか、

と言うほどの速さだった。


「ま、まさかバーボン様がここに居るとは」

と鼻息荒いボルドー。


手を借りるぞ、俺は勇樹に付いた。

こっちのほうが面白そうだ。


というと、ボルドーは

「あの時、あの時は

 何故助けてくれなかったのですか!」


「そりゃ勿論あなたは青の国の人間だ!

 でもサンテミリオン様だけは助けてほしかった!

 あんたは昔同じ冒険者仲間だったろうに!」


「ウォッカさんもいなかったんだ・・・。

 あんただけが、頼りだったのに・・・。」


ボルドーは泣きながらバーボンに掴みかかっていた。

そして腰を落とし泣き崩れた。


バーボンはただ一言「すまん」といい


サンテミリオンから王がおかしいという事は

聞いていた。おれは調べていると政務官が

変な動きをしていることはすぐに分かった。


そしてその政務官は青の国へ行き、

ルナティアに取り入ったんだ。


まぁルナティアもそんな小物の相手はしない。

話だけを聞き俺の所に行けと言ったんだろうな。

そして俺の所に現れ、そして、そいつの話を聞いた。


おれは問答無用に両断したよ。

しかし俺が考えているよりルナティアの行動は

早かった。


本気になったルナティアはだれにも止められない。

・・・今のウォッカでもだ。


私は思う。

そりゃそうだ、創造神アエスト。

神を封印する事だけでも奇跡だったのだ。

止められるはずもない・・・。


バーボン様は続けて言う。

「ボルドー、お前は過去の事を悔いながら、

 ああしたらよかった、こうだったらよかったと

 後悔しながら後ろだけを見て生きるか。

 それとも、過去を受け入れ、その人の気持ちを考え

 その人の想いを胸に前を向いて歩くか。」


今考えろ、今選択しろ。・・・と。


前に決まってるだろう!とボルドーが言うと


「そうだ、勿論前だ。手を貸してくれるな?勇樹に」

とバーボン様は勇樹君を見ながら言った。


「ボルドー、俺はみんなが幸せに笑いながら暮らせる

 場所を作りたい。手を貸してくれ」

と勇樹君はボルドーに手を差し伸べる。


ボルドーは涙をぬぐいながら手を取った。

「最初から俺は言ってたじゃねえか、お前に

 ついて行くって・・。」と。


ところでソミュール達は?と美香さん。

晩飯を取りに行っている。もうすぐ戻ってくるころだ。

そう答えると少し心配げに


「ここを青の国が攻め込んだりしないかな」と言った。


バーボン様は

「問題ない。何気にルナティア様も楽しいことは好きだ。

 どうなるか見物したいだろう。というか手も打ってある」

と答えた。



手を打ったと聞いて・・・

ボルドー、一人だけ安心。他全員、不安。





























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