第31話 エルセブンとウォッカ

数日前 とある前人未到の秘境


「エルさん、あれを・・」とウォッカ。

「静かに・・・。」とエルセブンは言う。


二人の視線の先には目の所が少し飛びでている感の

時折、虹色にキラリと輝く影。


エルセブンは

フライフィッシングよろしく糸を前後に振り

毛バリを水面へ落とす。


沈黙。


その影が素早く動き水面に落ちていた毛ばりに食いつく。


ヒットだ!


エルセブン。知る人ぞ知り、

知らない人は全く知らない釣り人。

この大陸の水の中にいる全てを釣りし伝説の釣り人。


竪琴を操る補助魔法系の職業。

時折に操糸、そう竪琴の糸で敵を絡めとり

そのまま切断を行う。


ウォッカと初めての出会いはとある海。


ウォッカが潮干狩りをしている時だった。

ドラゴンの気配。

そう、海に潜む古代から生きながらえている

アクアドラゴンだ。


水面に現れそして左から右へ暴れながら移動。

そして潜る。・・・・そして水面に現れ、そして

首を振りながら・・・左右へ泳ぐ。


「なんだありゃ・・・」とウォッカ。


よくよく見てみると口から何かが垂れている。

時折きらりと光る紐?糸?

の様な物が口から・・・・その先に

人間?がぶら下がっている。


アクアドラゴンは大きく首を動かすと!

そのぶら下がっている人間?が吹っ飛ぶ。

そしてウォッカの方へ。


ウォッカはあわてて風の精霊を呼び出し

落ちるであろう浜辺の予測地点に

エアークッションを作る。


落ちた先にウォッカが行くと、そこには


釣竿を持ち胡坐をかいて海を見ていた人間が居た。


「もう少しだったのにな・・・くそ。

もう少しでアクアドラゴンを釣れたのに」

と呟いた。


いや、はたから見てるとそれは釣りとは言わない。

そもそも体長約60メートルのアクアドラゴン。


なんかゴミみたいなものが口から出ているとしか

見えていなかった。

あれだ、

焼きそばを食べてメン1本を口から10センチほど

たらしている図。


そう!その人間はアクアドラゴンを釣ろうとしていたのだ!

・・・・のだ?

そして餌に食いついたアクアドラゴンに

海に引っ張られたのだ!・・・・のだ!


釣り師としての魂でもある釣竿を離すことなく

7時間ぶら下がっていたのだ!・・・のだ!


ウォッカは思う

「こいつと関わらない事にしよう・・・」と。


そして目を合わすことなく

立ち去ろうとしていたウォッカに


背後近くから

「たすけてくれてありがとうね」と声をかける。


ウォッカが背後を取られた瞬間だった。

勿論ウォッカも対処が出来ていた。

鋭利なタクトを左手に逆持ちしエルセブンに

向けていた。


「あら怖いわね。お礼を言っただけなのに。

 でも背後に立った事を気づかれたのは

 十数年ぶりかしら」とも笑顔で言った。


「お互い様だ、背後に入られたのはこっちも

 十数年かぶりだ」とウォッカは返す。


ウォッカは武器を引っ込め振り返る。

目の前には容姿端麗で少し男の子っぽい女性が

微笑んでいた。・・・釣竿を担ぎ。


「アクアドラゴンを釣ろうとしてね、失敗よ、失敗」

とヤレヤレだ、みたいな表情で苦笑いする。

「私はエルセブン。竪琴使いの釣り師よ」と続けた。


私はウォッカ。精霊使いの剣士だ。と自己紹介。

「精霊使いの剣士ってなにそれ、わらえるわ」

とエルセブンが言う。


ウォッカが準備していたテントの所へ二人は行く。


「あれは釣りなのか?どう見てもアレを釣り上げる

 ことはできないだろう・・・。」とウォッカ。


「いや、餌に食いついたという事実は残ったんだ。

 一歩前進だ。釣り上げてはいないが。

 餌は6メートルのホオジロンドシャークを使った。」


「勿論、・・・生餌だ。」

その生餌の時点で釣りが成立してるだろう、

とウォッカは思ったが言わなかった。

が、ある事に気づいて


「本当はホオジロンドシャークを釣ってたら

 アクアドラゴンがそれに食いつ・・・」と

ウォッカがそこまで言った所で


「いやぁ、ざんねんだなぁああアクアドラゴン!

 シャークの生餌も、もったいなかったなぁあ!」

と強引に狙いは元々アクアドラゴンとしたエルセブン。


その後、二人は意気投合し

エルセブンの別宅へ行く。

似た者同士の、そう、後先考えない


バカ二人が出会った瞬間だった。



そして話は秘境に戻る。

エルセブンは慎重に、丁寧に糸を巻く。


そして格闘する事15秒!

エルセブンはついに釣り上げた!


「ただのヒカリゴケがついたカエルじゃねえか」

と二人は言う。


「エルさんや、ちょっといいかな?」とウォッカ。

「えぇ、なんでしょうウォッカさんや」

とエルセブン。


そもそもだ、前人未到の秘境でってとこで

気づくべきだったんだが・・・。


えぇ、その通りです。

誰も入ったことのない所、だから前人未到。

ウォッカは何故か池のポイントまで

×印で記載された地図まで持っていた。


ここに虹色に輝く出目金が居るというのは

誰も知らないはずだ。

というか出目金は野生では存在できない・・・。



エルセブンは頭を抱え天を仰ぎ叫ぶ!

「あまりにも興奮しすぎて初歩の事を失念してた!」


まず秘境、前人未到と言う言葉で興奮。

そして、虹色出目金と言う存在で興奮。

売れば金貨100枚は下らないと興奮。


人はこんなにも簡単に騙せるのか、と

・・・言う一つの例だった。


ウォッカは右手に剣を握りしめ

何色とは言えないオーラを出し

気の座った目をし、呟く。

「あいつをたたっきる・・・。

 あの情報屋を切る・・・。」



「いくら払ったの?」とエルセブン。

「地図込み金貨5枚だ・・・。」とウォッカ。




数日後、とある街に一人の男が

糸でぐるぐる巻きにされ

教会の鐘に括りつけられているのが



・・・見つかった。


























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