第12話 新たな仲間
ミノタウロスは手を振りながら魔方陣の中に
帰っていった。白い歯がキラリンと光った気がした。
全員疲労感と喜びが混ざり合い変に興奮している。
元リーダーが
「あんたたちすげえな」と言う。続けて
そこまで強いんだ、この国に来たのが訳アリって
納得したよ。街に帰ったら望みの品を渡すよ。
1人の剣士がこちらを見て何か言いたげだった。
戦闘は、この中でも少しまともそうな人だった。
基礎的な動きに徹し持っていた盾で攻撃を防ぎながら
ほぼ回復魔法士の手を煩わせない。
なるほどこれがランクAクラス4なのかと思うほどに。
私達は洞窟から出て、居酒屋で待ち合わすこととした。
「ねぇ、このままあの人たちバックレないよね」と美香さん。
問題ないでしょう。と私は言い
あれだけの強さを私達は示し、さらに青の国の「なにか」と
完璧に信じています。ここで約束を守ったほうが
後々、メリットとなると考えているはずです。
「この戦いって身分証分、というか金貨20枚の価値あるの?」
と勇樹君。
そりゃあもう。
ズィオンの湖の洞窟のブカバクはボス級の中でも弱い方です。
しかし、ランクSになりたいと彼らが思っているならば
絶対に倒さなければならないレベルでもあります。
ランクSとなれば、何気に楽で高報酬の仕事が多くなります。
ランクAからすると3倍くらいの稼ぎとなります。
月に金貨5枚の稼ぎだったら、それが15枚となります。
それに今回の魔獣の核、道中は中級でしたので
1つ辺り銅貨2枚ほど。それが80匹ほどでしたので
銀貨16枚ほどです。
しかしブカバクの核、あれは一つで金貨8枚ほどです。
超級魔法付与には欠かせませんし。
「そういえばさ、洞窟のボスっていなくならないの?」
と美香さん。
いい所に気づきました。
いなくなりません。時間と共にまた現れます。
わかりやすく言うと召喚魔法が自動的に発動している。
みたいなもんです。と私は説明した。
宿に帰り水浴びをし3人で指定された居酒屋に向かった。
既にパーティの何人かが居て、こっちだと手を振る。
「お疲れ~」と美香さんは言い、拳と拳を合わせる。
ほどなく全員がそろい報酬の山分けに入った。
「本当にあんたらはいいのか?」と元リーダー。
身分証が手に入れば問題ないです。と私が言うと
隣の女性が、スッと2枚の身分証を机に置きこちらに
渡してきた。
「安心して、これ本物の身分証よ」と付け加え。
本物とは?と私が聞くとその女性は語りだした。
去年、私の知る冒険者があの洞窟で命を落とした。
20名ほどのパーティだったが数名が全員の荷物を
持ち逃げし、短距離転移も出来ない状態になり
魔物に囲まれパーティは壊滅し4人を残し他は・・・。
生存して戻ってきた人間も一人を残し死んだ。
生き残ったのは彼だけだった。と一人を親指で指す。
私がその先を見ると洞窟で私達に何か言いたげな
剣士だった。彼なら生き残るだろうと私も思う。
女性は話をつづけた。
その死んだ3人は今でも私達のホームで
治療中で生きている事となっている。
だってそうだろう。冒険者として・・・
冒険者として討伐対象より先に死にたくはない。
変な意地だが・・・敵に負けたことになる。
私達は死んでいった彼らを負けにしたくなかったんだ。
この身分証はその3人のうちの二人分だ。
1つは私の弟のヤツ、1つはリーダー・・・
おっと、いまは「元」ね。と少し微笑む。
1つは元リーダーの婚約者のヤツよ。
持って行って・・・。と女性は話を終えた。
私達は沈黙している。
「しんみりしないでくれ、俺たちは討伐したんだ」
と元リーダー。
「それにこれで多分俺らもランクSだ。ウハウハだ。
乾杯しよう!」と続けた。
そしてみんなで乾杯し食い、飲む、そして食い、飲んだ。
皆大はしゃぎだ。少したって一人の男が私達の所に来る。
「ちょっといいかな」と話しかける。そして
あんたらすごいな、力量的にはランクSSに匹敵する。
何も隠さずに言う、
俺をあんた達のパーティに入れてくれないか。
と続け、さらに
このパーティは今回で抜けることになってた。
去年の事もあったしな、敵は討てた、いや、
全員で勝ったと思っている。
これで死んだ奴らにも顔向けできるし。
私は少し思案する。
私達は強いが前衛が居ない。盾職が居るのといないのでは
大きく違う。喉から手が出るほどに欲しい。
・・・今後の事も考えて冒険者パーティとの偽装も
完璧に出来る。・・・しかし。
私はその男に向かって
身分証を見せてくれないか。と言った。
その男は身分証を私に見せた。身分証には
黄の国 リアス・バイシャス 剣士 冒険者
そして住所が記載してあった。・・・首都だ。
ほかにも色々と・・・。ふむ。・・・ふむ。
私は勇樹君と美香さんに、その男の前で
「しっかりしています。本物の身分証です。
一緒に行動しても問題ないと思います」
と話した。そして
「逆に仲間にするべきです」とも付け加えた。
美香さんは
「大丈夫なの?こんな簡単に仲間にしちゃって」と。
「ハッキリ言って敵かもしれないじゃない」
とも付け加えた。
その男は
「勘弁してくれ、俺はただ強くなりたいんだ。
強い中に居ないと成長は見込めない。じいちゃんの
口癖だ。それに俺の憧れている剣士もそう言っていた。
変なことをしたら殺ってくれていい」
と説明した。
「あんた達が何しようが俺には関係ない。
強くなれるなら協力もなんだってする。だから
仲間に入れてくれ」と強い目で懇願してきた。
「いいよ、旅は人数多い方が楽しいしね」と勇樹君。
その一言で仲間にすることに決まった。
全員が
「門出だ~。リアスが強さを求めて旅に出るぞ~。」
と、もう乾杯しまくりであった。
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