第3話 魔王

こんばんわ、コルンです。

只今、私達は夕食の準備をしております。

美香さんは山にフランゴ狩りに、

勇樹君は川に洗濯・・・いや、釣りに。

そして私は火の番をしております。


ほどなくして美香さんは2匹。

勇樹君は6匹ほど釣ってきました。


勇樹君はチャチャっと魚の内臓をとり串にさす。

それが終わるとフランゴの調理に取り掛かりました。


私もフランゴの解体に手を貸しております。

私も調理を覚えたいと懇願し暇を見ては勇樹君の

持ってきた向こうの世界の本で勉強しております。


馬車でユネーフェルを出て、すでに5日目。

黄の国の首都まではまだまだの道のりです。


食事をとりながらの談笑の時間です。


「な~んもないわね、イベント。フラグさえ立たないわ」

と美香さん。フラグとは?と私は疑問に思います。


「美香さん、そんなもんない方がいいよ、

 魔獣とか出てきたじゃないか」と勇樹君が言うと

「雑魚ばっかりじゃない・・・」と美香さん。


そういえば、と私は

「もうすぐ以前に緑の国という、まぁ今は青の国の自治区ですが、

 青の国が支援し復興させたところがあります。

 20年前、そういえば美香さんもその時期にあちらに転移

 したんですよね」


「ちょうど魔王エンドが復活し討伐された時期ですね」


勇樹君はちらっと美香さんの顔をみた。

そして頭を抱えうなだれた。

勿論美香さんは目をキラキラさせて私の話を聞いています。


「早く続きを」と鼻息荒く催促してきます。


「魔王エンドとは、まぁ今は封印されていますが何十年周期で

 復活する魔王です。ちょうど20年前がそうでした。

 エアスト大陸の国々が力を合わせ、そしてまた封印されました」


「その時に魔獣との戦闘で大きな被害が出て緑の国と白の国は

 王を失い、王都すら戦闘難民が多く混乱しておりました」


「その時に皇女の娘であった、今の皇女ルナティア様が

 支援を行い、復興の手伝いをして今に至ります」


「ルナティア様はそれは聡明でお優しく、青の国の民に

 すごく慕われています。まるで女神だと」


「ほうほう」と美香さん。

勇樹君は焚火を見ながら静かに聞いていた。


「私ですね、不思議に思ってるんです。そのルナティア様が

 無意味に戦争をすると思えないんです。文献では、

 紫の国が魔族と手を結びエアストにある国を混乱させようと

 戦争を仕掛けてきたとあります。」


「そもそも、紫の国が亜人と仲がいいというのは子供も知っている

 事です。そういった理由で紫の国が戦争仕掛けるなら

 20年前にエンド復活の時に便乗するでしょう。」


「エンド復活時に紫の国は討伐戦の先陣を切り

 魔王城に突入し後続の為に道を切り開いていったとあります」


「様々な文献を見て、書き方はそれぞれでしたが、検証すると

 青の国の戦争はとにかく王家だけを執拗に狙った感じがあります。

 その時の王、王妃、そして勇樹君」


「だから電光石火で城を落とし、王子、そう勇樹君が居ないと

 今度は関連の街を・・・。そして、街ではなく王家関連の

 公園等の人が住んでいない場所」


「だから紫の国は王都と少しの街しか被害はありません。

 他の街は全くと言っていいほど被害はありません」


「俺の両親は何か絶対にしてはいけない事をしようとし、

 青の国がそれを察知して滅ぼした・・・と。」

勇樹君は焚火を見ながら呟いた。


「あ、・・そのすみません。これは・・」と言い続けようとすると


「いや、いいんだ。感情的にならず正確に背景を知りたいんだ。」

と勇樹君は私の言い訳を遮り言った。


私は話をつづけることにした。

「青の国は今まで、確かに国同士の小競り合いがありました。

 しかし、そのたびに話し合いでの解決を望んでいます。

 戦争もほぼ防衛のみで終戦もほぼ外交で済ませております」


「これは皇女がルナティア様となって20年、今でも

 そうです。と言うよりも・・・15年前の戦争時、皇女は

 紫の国側の亜人討伐すらしておりません。」


「青の国はとにかく争いを好みません。これはルナティア様が

 皇女になってから、さらに顕著となっております」


「国同士のちょっとした小競り合いを入れると、

 それまでは年に5~6回ほど行われておりました。しかし

 ルナティア様が皇女になってからはほとんどありません。」


「殆どと言ったのは少し知恵を持たない亜人が人間と

 小競り合いするからです。なので正確には人間同士の

 小競り合いは皆無、無し、ゼロです」


「戦争については私の父親に聞けばはっきりするわ。」と美香さん。


確かにここで想像するよりも正確に詳しく知っているだろう、

美香さんのお父様ならば・・・。


「それよりも魔王エンドよ」と興奮したように美香さん。

勇樹君を見たら少し苦笑いしていた。


「確かに美香さんの言うとおりだ。今、紫の国と青の国の

 戦争の話は置いておこう、で、俺も聞きたいな。魔王エンドの事」


と何気に勇樹君も目がキラキラしていた。


「魔王エンドとは」と切り出し私は話した。


魔王エンド、すべてを無に帰す魔王。魔族を率い、この

エアスト大陸を戦乱に陥れる。


「と言いたいとこですが、よくわかっていません。封印されて、

 それが解けそうになって魔獣が大量に現れますが。

 そもそも封印が解けたらすぐに討伐されちゃいますから。

 ちょっと暴れてそして封印されます。」


「ちなみに魔族と言う亜人に対しての蔑称以外、

 エンドに連なる魔族はいままで確認されていません」


「魔王は、ぼっちかよ」と美香さん。




「よく考えてみるとさ、ゲームとかアニメでも復活したら

 すぐに討伐されちゃうよね。魔王様」と勇樹君。


























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