第5話 国内に流出した侵略モンスター
侵略モンスターを倒して特殊試練をクリアした後、医務室で厳つい男、デュランさんの手当を行った。
医務室を漁るとすごいものを見つけた。
ガーゼ等に染み込ませて傷口に当てておくと一日ぐらいで大体治る液体の薬品。ゲームとかでよくある、即座に完治するポーションには負けるけど充分優秀すぎる薬品だと思う。
この薬品は支給品なのか、医務室に大量にあった。
あるのは助かるけど、大量に使う未来が来ない事を願いたいなぁ。
手当を終えて、一息ついていたら十五時になり、生存試練が終了した。
――生存試練が終了しました。
日本の挑戦者生存数は250,416人です。
特殊試練の結果を連絡します。
難易度A、討伐成功1、失敗2
難易度B、討伐成功0、失敗5
難易度C、討伐成功1、失敗11
難易度D、討伐成功30、失敗5
難易度E、討伐成功48、失敗0でした。
挑戦者に試練ポイントを配布しました。
次回の試練は三日後を予定していますが、特殊試練のみ突発で発生する可能性があります。
初回試練をクリアしたことにより、挑戦者のチーム機能を解放します。――
挑戦者の生存数が大体25万人って事は、75万人は死んだということ...
初戦闘から障壁とか使ってくる敵とか難易度頭おかしいとしか思えない。
だけど、私の考えていることが合っていたらこの難易度になってもおかしくはない。
謎の声は生存試練の時には擬似モンスターと言っていたのに対して、特殊試練の時は侵略モンスターと言っていた。
擬似ということは本物に似ているけど別物。
本物って言うのが突発で現れる侵略モンスターの事で、それを倒すために擬似モンスターで経験を積むって感じなんじゃないかなって。
何故かはわからないけど、謎の声は侵略モンスターを倒してほしいと思っている……?
経験を積むのが目的なら、擬似モンスターでの戦闘で死ぬのは違うんじゃないのとか考えてしまうけどその辺は考え出したらきりがない。
次に国内に流出した侵略モンスターの難易度と数。
難易度Aは身をもって経験したからわかる、あれは魔力が使えないと無理だと思う。
あれと同レベルの侵略モンスターが二体国内に出てしまった。
銃火器が効くならどうにかなりそうだけど、効くなら私たちにも銃火器が用意されていたはず。
装備が置いてある部屋を見た限りそれらしき物は見当たらなかったから効かないと思ったほうが良さそう。
難易度Bは五体が流出、どのくらいの強さか分からないけど全ての挑戦者が全滅しているから難易度Aと同じくらいと考えていた方がいいかも。
難易度Cも討伐成功しているところもあるけど、1ヶ所以外は全滅しているからこれもA、Bと同じかな。
難易度D、Eは大体討伐成功しているからまだ魔力なしでも何とかなるのかもしれない。
今の私なら難易度Aを倒すことは不可能じゃない。
どうにかこの空間から出られないかな。
試練から解放されて元の場所に戻った時に日本が滅んでいたら最悪だ。
端末を起動すると、試練ポイントを合計80,000ポイント獲得しましたと表示が出た。
表示を消してそのまま試練ポイントを使うページを開く。
・能力強化▼
・アイテム交換▼
・その他・提案▼
その他・提案を開くと入力フォームが出てきたので記入する。
→国内に流出した侵略モンスターを討伐したいのでこの場から出たい。
送信ボタンを押すと即返答が返ってきた。
『一時的に国内に移動することは可能です。悪用を禁止するため、外にいる間は試練ポイント使用不可になります。
外で侵略モンスターを討伐した場合、討伐報酬で試練ポイントが支給されます。』
なるほどねぇー。
そうだった、そもそも侵略モンスターはまだ討伐されていないのだろうか。
→国内に流出した侵略モンスターはまだ討伐されていないですか?
提案でもなんでもない質問でごめん、でもこれ聞いておかないと……。
『国内に流出した侵略モンスターの難易度Dが数体のみ討伐されています。難易度CとDは犠牲は出ますが自衛隊等でも対処可能でしょう』
ということは難易度AとBは対処できないということ。難易度A、Bで7体流出しているから早く倒さないと被害が凄いことになる。
今のところ難易度A、Bを倒せるのは私だけ。
デュランさんは魔力を使えるようになれば余裕で倒せるようになるだろうけど、今は私だけだ。
一時的にここから出られるみたいだから倒しにいくのは決定として、問題は侵略モンスターがどこにいるか、戦ってたりして警察などに捕まったりしないか等いくつか問題もある。だけど、どうすればいいかはすぐには思いつきそうにない。
「デュランさん、私は国内に流出した侵略モンスターを倒しに行ってきます」
「……なら俺も行こう、手伝わせてくれ」
「え、でもデュランさん足を怪我して……」
「……この程度問題ない」
「わかりました。では準備が出来次第行きましょう」
「……了解」
私は試練の時に着ていた皮の鎧を脱ぎ、盾も置いていくことにした。
理由は単純に着ていても邪魔になるだけで意味なさそうだから。
難易度Aの敵に対して皮の鎧があったところで両断されて終わりなだけだしね。
それなら身軽になった方がいい。
そういえば国内のどこに出るんだろう?
ここに来る前にいた場所……?
それならデュランさんが手伝ってくれるって言ってたけど合流とか大変そう。
合流している時間で侵略モンスターによる被害は大きくなるだろうし……。
端末の入力フォームに記入して聞いてみた。
『元々いた場所でも、指定した場所に二人一緒に転送等希望があれば融通できます』
それならよかった。後でデュランさんに相談しよう。
「……すまない、待たせたか?」
デュランさんはさっきの戦いの時もだけど防具系は身につけておらず、大剣を背負ってる。服は戦闘で切り裂かれたりで少しボロボロだけど、替えの服がないから仕方ない。けど、ここを出たら目立つよね……。
というか私もだけど武器持ってるから通報されたらどうしよう。
まぁ何とかなるでしょ。
「ううん、ちょうどいい感じかな。一つ相談なんだけどここから出た後、元々の場所に転送か、指定した場所に二人一緒に転送か選べるみたいなんだけど、私は難易度Aの侵略モンスター付近に指定して転送してもらおうと思ってるんだけどどうかな?」
「……それでいこう」
「ココくまは戦闘時以外は私が抱っこするね」
「くまー!」
「ココくまの斧はおっもい……、どうしようこれ持ち歩けないんだけど、置いていく?」
「……斧は俺が持とう」
「すみません、ありがとうございます。では行きます」
ココくまがデュランさんに斧を渡した後、ココくまを抱き抱える。その状態で端末を操作し入力フォームに提案を記入する。
→一時的にここを出たい。転送場所は難易度Aの侵略モンスター付近にデュランさん、ココくまと一緒に。
『提案を受理しました。試練ポイントを一時的に使用不可にしますがよろしいですか?』
→おっけー。
転送を開始します。
すっと、一瞬意識が落ちかけて、はっとした時には私たちは日本のどこかの街中に立っていた。
付近のビルの建物のガラスは割れ、車道には車が乗り捨てられていたり、事故を起こしていたり、かなり悲惨な状況だった。
所々赤い物が飛び散っていたり、動かない人がいくつも地面に転がっている。
動いている人は近くにはいない。
動ける人はみんな逃げたのかな……。
そんなことを考えていると、怪物のとしか言いようのない雄叫びが聞こえてきた。
「……さっき戦ったヤツと同じ鳴き声だな。おそらく同じ種類だろう、こっちの方角だ……」
「ありがとう、襲われてる人がいるかもしれないし早くいこう!」
デュランさんを先頭に雄叫びが聞こえた方へ進んでいくと警察の人が侵略モンスターに襲われていた。
「……俺が気を引こう」
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