第6話 800万
デュランさんは敵の背後から襲い掛かるが、障壁で大剣を受け止められる。
それにより敵はデュランの方へ意識が向いたらしく、襲っていた警察官を放置して豚頭の巨体がこちらへ向いた。
デュランさんが敵を引き付けてくれている間に敵の背後、警察官の居る辺りに移動する。
「た、助かった……、君たちは一体……」
「ここは危ないので少し離れててください、すぐに終わらせます」
君たちは一体って言われてもどう答えればいいかわからなかったからそこは答えずに。
ココくまを足元に下ろし、レイピアを抜いて魔力を込める。
「細く、鋭く、すべてを貫く……」
敵はデュランさんに意識を向けているけど、背後にいる私たちが何かすれば気づくくらいには警戒されている。
だけど関係ない。
攻撃する時に声を出したりはしない。
一番攻撃が避けづらいタイミング、敵がデュランさんに攻撃する瞬間を狙って敵の頭部を貫く。
障壁で防ごうとするのは想定済み。
あのタイミングの攻撃でもとっさに障壁を展開できてるだけでどれだけ脅威か……。
だけど、今回は私の方が上だった。魔力を込めたレイピアは障壁を貫き、敵の頭部に突き刺さった。
レイピアを引き抜くと敵は崩れ落ちる。
まだ油断はしない。もしかしたら最後の一撃が来る可能性があるから。
「よし、倒せたっぽいね」
「……お見事」
倒した敵はあの建物で倒した敵と同じだし、難易度Aの侵略モンスターかな?
そうなら難易度Aはあと一体。
他の侵略モンスターの場所って被害出てるだろうし、警察官とかなら把握してるかな?
ココくまを抱き抱えて、デュランさんと一緒に警察官のもとに向かう。
「あの、私が倒したこういうのがほかの場所でも現れてるみたいなんですがそういう情報って持ってますか?」
「は、はい! 何県に出たとかの情報は持ってます。 あ、すみません、先に本部に連絡させて下さい」
「わかりました、ただこちらも急いでいるので早めにお願いします」
警察官の人はわかりました!と言うと無線機で連絡し始めた。
「……時間がある時でいい、俺に敵を倒した方法教えてくれないか?」
「はい、もちろん!」
私が障壁や魔力を扱えるようになったのはデュランさんが命懸けで時間を稼いでくれたからだ。断る理由なんてない。
デュランさんも魔力を込めたり障壁を展開したり出来るようになればもっと楽に安全に倒せるようになるしね。
「お待たせしました、本部に連絡したところ国が把握している情報すべて提供可能だそうです。ただお二人に情報提供の代わりに討伐を依頼したいそうです」
「元からそのつもりで来たから討伐は任せてください」
「ありがとうございます。――依頼は受けてもらえるみたいです。はい、はい、わかりました。――移動用の足として車を手配したそうです。詳細の話などは移動しながら車内でとの事でした」
二十分後、黒い高そうな車が到着した。パトカーとかじゃないんだ。
車に乗り込むと車内モニターに何人かの人がが映る。
「はじめまして、この国の首相をしている井之川一郎です。お二人のことは試練ライブネットで把握しています。今回は侵略モンスターを討伐していただきありがとうございました。難易度AとBの侵略モンスターは攻撃が一切効かず困っていたので助かりました」
「難易度C、Dはどうにか出来そうですか?」
「難易度Dは銃火器である程度余裕を持って対処出来ていますが、難易度Cは周囲への被害を考えなければ対応可能と言ったところです」
銃火器で難易度Dが対応可能なだけまだ良かったと思うべきなんだろうなぁ……。
周囲への被害を考えなければって事はミサイルとかそういうのレベルだろうから難易度Cも私たちが対応した方が良さそうかな。
「では、難易度A、B、Cの侵略モンスターの討伐は私たちでします。一つ教えていただきたいことがあるのですが、大分県に侵略モンスターが出ているか分かりますか?」
「ありがとうございます。報酬はしっかりと用意致しますのでどうかよろしくお願いします。大分県には侵略モンスターが出たという情報はありません。国内に出現すると考えられている二十三体全ての居場所を把握出来ているので見逃しもないと思われます」
親と妹は大分に住んでいる。
もし大分に侵略モンスターが出ていたなら最優先でいくつもりだったけど、出てなくてよかった。
「そうなんですね、ありがとうございます。デュランさんは聞きたいこととかありますか?」
「……ない。どう動くかはすべて任せる」
「わかりました、井之川さん、被害が他よりも遥かに大きい場所はありますか?」
「いえ、難易度A、Bはどこも同じ規模の被害と聞いています」
「では基本的に近い所から討伐していきます。それとお願いがあるのですが聞いて貰えますか?」
「出来る限り答えたいですが、どんなものか教えていただいてもいいですか?」*
「移動の足の用意、これは遠い場所の場合飛行機等の用意もお願いしたいのと、私たちはいきなり謎の場所に連れて行かれたので手持ちのお金がありません。なので泊まる場所、飲食の用意もお願いしたいです。あとは私たちが持っている大剣やレイピアなどの所持の許可を一時的でも良いのでお願いします」
「なるほど、それくらいでしたらお任せ下さい。それと国民を安心させるためにお二人のことを個人を特定できないようにした上で公表したいのですがダメでしょうか?」
あーそうだよね。だんまりだと国が動いてくれない、見捨てられたんだとか言い出す人いそうだしね。
個人を特定できないようにしてくれるみたいだけど、私たちは既に無許可で常時配信されてたからねー……。
今更感あるけど――。
そういえば今はどうなんだろ。今も配信されてるのかな。
「すみません、先にひとつ確認してもらいたいのですが、私たちは試練ライブネットで私室以外配信されていると聞いたのですが、今はどうなっているんでしょうか?」
「すぐに確認します」
井之川さんは隣に座っている人に指示を出す。
「どうやら今も配信されています。くま☆パラさんとデュランさん合わせて現在800万人が視聴中となっています」
いやいやいや、待って。
多くない?
謎の場所に居るなら私室に逃げ込めば配信されないらしいけど、こっちって私室とかないし下手したら常時配信だよね……。
うわぁあ……。
家族が大分に居るって言ったの失敗した気がする。その時点では配信されてること知らなかったから仕方ないって言えばそうなんだけど。
姿が変わってるおかげで誰かはバレてないのが不幸中の幸いかな。
こういう時絶対変な人が出るんだよねぇ……。
気をつけよう。
「お、多いですね。ありがとうございます。もはや公表してるも同然な気がするので公表してもらって構いません」
「ありがとうございます。もしお二人から連絡を取りたい場合は現在運転している者に言ってください。二十四時間いつでも可能ですので。ではどうかよろしくお願いいたします」
モニターの映像が切れる。
「運転手さん、今、次の場所に向かっているって認識で合ってますか?」
「はい、あと二時間ほどで到着予定です。食事は弁当を用意させてもらいましたのでお好きな物をお選びください」
「わかりました、ありがとうございます。じゃあこの時間にさっき言ってたやつしましょう」
「……お嬢、助かる」
お嬢!? まぁいいやデュランさんにくまパラさんとか言われても違和感すごいし、お嬢の方が合ってるか。
「まずは魔力について説明するね、魔力っていうのは――」
大勢の人に配信で見られながらの魔力講座って恥ずかしいんだけど……。
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