第3話 居 候



 私は梶谷(かじたに)美由紀、身長一五三センチ、体重?kg(言えない(笑))、やや小太りの丸顔、今年の四月十六日に誕生日を迎えて三十三歳になった未婚で妊娠五カ月の身重の女で・・・違った意味でも重荷かも、そして、お腹の子の父親は残念ながらもうこの世にはいません。

 先程から文句を言い乍らも一緒に生活して居るのは四歳下の妹の美咲で、私から見ても可愛くて美人で姉の私とは大違いで、私はそんな美咲の2DKアパートに転がり込んでいる居候なんです。


 実家には兄が一人いますが、父と母が亡くなって既にいないため、実家には兄夫婦とその子供たち三人、家族五人で生活をしている為に手狭となり、私たち姉妹には居る場所もなくなって実家を出る事にしたんです。

 其れでも、私は今年の三月までは実家で一緒に生活をしていたんですが、妹の家賃が大変だと云う名目で二人で折半して住もうと云う事になって今日があります。


 何故、私が身重で独身なのかって?話せば長くなるのですが、彼とは三年前から付き合い始めて、今年の三月に私は彼と大洗で遊んだ夜の帰り路でもらい事故に遭ってしまい彼は即死、私も重傷を負い三か月間入院を余儀なくされてしまったんです。

 事故から約一か月半も意識不明状態で集中治療室にいたとのことで、やっと意識が戻って大部屋に移り手足が動かせるようになり、リハビリをして三か月後に退院したのですが、意識のない状態の中でお腹には彼の赤ちゃんがすくすくと育っていたと云う、訳ありの女になってしまいました。


 退院した時には妊娠四カ月も過ぎていて、「これからまた手術するには後の体力が持たないよ」と云われてしまい、一人で産む決意をしたんですが其れからが大変で、兄夫婦に相談したところお義姉さんが激怒して、それはもう大変でした。



「美由紀さん何を考えているの?お兄さんの立場を考えて頂戴、ダメですからね!絶対に堕胎してください。一人じゃ産めないし子育てって大変なのよ!分かってるの」



 其れでやむなく妹が家賃が大変だからとの助け舟を出してくれて、それで妹の部屋にお世話になっていると云う、居候が確定した訳です。

 でもその後が大変だった、何がって?其れは後々分かる事なので此処では割愛させて頂きますね、本当に谷あり谷ありで、山への上り道は何処にあるのぉ~。


 でも、山って一度登ったらまた降りるのよねぇ!


等と勝手に思い悩みながら日々を過ごしてきたんですが、でも、もう美咲の日程は詰まっているし、でるのは溜息ばかりで・・・本当にどうしよう?


 誰かに縋りたいけれどその誰かさんは空の上だし、学生時代の時にはいつも相談できる彼が居たけれど、その彼は今頃は東京で家族を持っているんだろうなぁ?

 すてきな奥さんと可愛いお嬢さんが居たりして、アァア!でも、今の私は其れどころじゃないのは確かよね、一人で生活する場所を探さなくちゃならないんですから。


 でも、「悔やんでみても今更どうなるものではないでしょ!何とかなるわ」なんて強がりは幾らでも言えるけれど、現実はもっと非常で悲しいものなんです。

 社会の目とか色々あって、私はどうしたら良いの?「きっとこれは私に神様が与えてくれた試練なんだわ」と漫画や映画の主人公になったつもりで頑張っているのですが、最近は社会の目より妹の目の方が冷たいんです。



義理の姉さんも、そして美咲にも!どうしよう・・・・。



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