第2話 出会いは最悪

 



「ねぇねぇ、お姉ちゃんってさぁ、いつまで私の部屋にいるの?私が結婚するまでにはこの家を出てもらいたいんだけど…ねぇ聞いてる」


「んっ何か言ったぁ、洗い物してるから水の音で聞こえなかったんだけど」


「だからぁ、お姉ちゃんはいつ迄この部屋にいるのかなって話、だって、私十二月に結婚式上げるんだよ。

 その後、彼とここで暮らすの知ってるでしょ。彼だって次男坊だから実家にいる訳に行かないし、それに私だってお姉ちゃんだって実家に帰れないでしょ、お兄ちゃんの家族だってあるし・・・義姉さんとお姉ちゃんの事だから絶対に無理だよね。はぁ困ったもんだよ」


「うぅ~ん分かっているけど、もう少し待ってくれない!市役所の担当者に相談しているだけどなかなかいい返事貰えていないんだよね。母子家庭向け住宅に入れるように話しているんだけど、まだお腹にこの子がいる以上は母子家庭ではないしさぁ、でも、この子が生まれるまでにはどこかに引っ越ししなくちゃねぇ」


「そうだよ、何とかしないと。それに一人じゃ産めないんだよ。、そりゃぁ、私だって協力はするけど・・・その前にお姉ちゃんの部屋を探さなくっちゃ、身重で未婚の母じゃ何処も部屋貸してくれないしねぇ」


「そうなんだけどさっ!あっ、そういえば美咲に話していなかったけど、この間、お兄ちゃんから義姉さんが熱中症になったみたいで調子が悪いから買い物してくれと言われて、帰りにスーパー川西にいったの。

 それがさぁ沢山買う物が有って重くて重くて、そしたら私もちょっと具合が悪くなっちゃって、バス停近くでちょっとしゃがみ込んじゃって大変だったのよ。

 そしたら駐車場にいた男の人が駆け寄ってくれてさぁ、冷たいペットボトルの水を手渡されて。其れからタクシー呼んでくれたの、其れでそれで、運転手さんに私の帰る家を聞いて教えてくれてさぁあ、タクシー代二千円も出してくれたんだよ。

 顔はよく見えなかったんだけれど・・・・どこかで聞いたことが有るような声でさ、御礼を言おうかと思ったらその男の人、年配の人に呼ばれて、たぶんお父さんじゃないかなぁ?話す間もなく行ってしまったの・・・あれって誰だろうね。

 お金も返さなくちゃいけないし‥美咲知っている人いるぅ」


「えぇっ、そんな事あったの?スーパー川西って、どっちの川西、あっ仕事帰りじゃ市役所そばのしかないか。ふ~んそんなことが有ったんだ。私の知っている人だったらmailかlineで即連絡来るから、私の知り合いじゃないのは確かだね。」


「そうだよねぇ、でも聞いたことのある声なんだけどぉ、話している言葉が標準語だったから…たぶん、この辺の人じゃないのかもね」


「身重の未婚の女に声かけるなんてよっぽど物好きか、其れともお人好しさんじゃないの?あっははは」


(妹の美咲に言われるまでもなく、私は今年三十三歳を迎えた未婚の妊娠五カ月の女ですよ。)


 等と、心の中で思いながら助けてくれたお人好しさんの顔を思い出そうとしましたが、暑さか悪阻(つわり)の性なのかは分かりませんが、気持ち悪さに襲われながらも冷たい水を飲んでいる間にてきぱきと動く彼の背中に見とれていた自分を思い出したのでした。


 でも、あの後ろ姿・・・・どこかで見たことがあるんだよねぇ?う~ん思い出せない。

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