転生したのにすぐ死ぬなんて聞いてない!
木㳂 佑也
第1話 突然死ぬなんて聞いてない!
私、神宮寺 リンネはゲーム好きの普通の高校生…だったはずなんだけど。
***
「じゃあね、リンネ!」
「うん、また明日!」
友人とお互いに手を振りながら、私は家に足を向ける。久しぶりに部活もなく、早く帰ってゲームでもしながらゆっくり過ごそうと思っていたのだが…
そのことに夢中になっていた私は、右から迫ってくるトラックの存在にギリギリまで気がつけなかった。
「あっ」
と言う間に体が跳ね飛ばされ、宙を舞い、私は意識を失った。
***
「すまんかった!」
そして現在。自称神様のおじいさんにめっちゃ土下座されてます。
「えーと、まず顔を上げてください。別に神様のせいじゃないんですよね?」
「じゃが、管理が行き届いていなかったのは事実であっての…」
なんでも、私が死んだのはコンピュータで言うところのバグらしく、想定外の事態だったそうだ。私がこの天界受付に現れた途端、おじいさんはその場で別の部門の神様に掛け合って、地球に私を戻せないか三時間以上交渉してくれた、のだが。
「やはり、戻すことはできんらしい」
「そうですか」
「意外とあっさりしておるの」
そりゃ、あんまり未練がないからね。親も早々に他界して、ばあちゃんに預けられ、そこからも追い出されて一人暮らししてたし。
「大変だったんじゃの」
「まぁ…」
大変じゃなかったとは言わない。が、そこまで気にしてもいなかった。
「ところで、おまえさんはこれからどうする?」
「どうする、とは?」
空気に耐えきれなくなったのか、おじいさんは強引に話題を転換する。話してくれたのは、私がこれから取れる選択肢についてだった。
「一つは、この先の天界へと向かうパターン。この場合は天界で記憶を全て失って、新たな命として生まれ直すことになる。ただ、死んだばかりの今のおまえさんだと門前払いされる可能性が高いの」
「なるほど、なしですね」
それって死ぬって事じゃん。いや確かにもう死んでるけどさ、自分という存在とそう簡単にオサラバしたくはない。まだ生きていたい。死んでるけど。
「まあ、そうじゃろうな。二つ目は、ここに留まるというパターンじゃ。わしの部下として招き入れることになるな。飯つき宿つき完全週休二日制じゃ」
「大丈夫なんですか? それ」
「なに、心配せんでもよい。こう見えてわし、結構偉いんじゃぞ」
と、茶目っ気出しながらウインクする神様。あと六十歳若かったらなぁ。
選択肢そのものは、普通に考えれば悪くない選択肢ではある。
「最後が、この記憶を持ったまま異世界に転生するパターンじゃ。おそらくこれが一番現実的じゃな。ただ、異世界である以上、さまざまな部分が地球とは違う。対応するために、わしが一から体を作り直すことになりそうじゃ」
「それって、今の容姿のままですか?」
転生と聞くと、もう一回赤ちゃんからみたいなのを想像するけど。
「その通りじゃな。変えられるのはせいぜい、髪の色とか、目の色とかぐらいかの。体型も変えられはするが、元の体との剥離が激しいと動かせんくなるし」
なるほどねぇ。
「最後のやつでお願いします」
どうせなら、もう少し生きてみたい。異世界なら、剣と魔法の世界だよね!
「わかった。体を用意しておこう。あ、それと、もしその世界で死んだらここに戻ってくることになるぞ」
「同じ世界に戻ることは?」
「無論、無理じゃ」
やっぱりか。
「行くのは、ここにするか。おまえさんの好きな『もん◯ん』とやらに似た世界じゃ。馴染みやすかろう」
「やった!って、え?」
おじいさん、なんで私が『モン◯ン』好きだって知ってるの?
「そりゃ、お主の心が読めるからじゃの」
「え゛っ」
私、失礼なこと言ってなかったっけ!?
【あと六十歳若かったらなぁ】
「あっ」
ごっ、ごっ、
「ごめんなさああああああぁぁぁぁぁぁぁぁい!」
***
これから、私がさまざまな旅を経験するなんて、まだこの頃は思いもしなかった。
強さを求めた少年。
婚約破棄された聖女。
ポンコツな探偵。
壊滅寸前の悪の組織。
これは、みんなの前に現れる、天使でもない、悪魔でもない、
ちょっと変わった女の子の話。
転生したのにすぐ死ぬなんて聞いてない! 木㳂 佑也 @professar
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