繋ぐ運命を
白い扉
第1話 戦争の変革点
妖怪と分かり合えたのは一体いつの幻だったのだろうか。少なくともこの日本では妖怪と人間、二つの異なる種族が分かり合うことはなかった。
それをわかりやすく見せてくれるのが目の前で妖怪によって焼かれる一つの村だ。
そして妖怪によって焼かれる村から逃げてきた一人の少年、その少年が妖怪を滅ぼしたいと思うには十分なモノだった。
日本で起きた妖怪と人間との戦争。
お互いが血で血を洗う争いをしているがゆえにこの戦争は世代を重ね数百年続くものとなっていた。
その戦争は今となっては見る影もない。妖怪と人間はお互いに今でも嫌うものはいるものの大多数は共存に成功している。
それもこれも二人の少年少女のおかげだ。
周りに理解されずにいたなかでも妖怪と人間の共存を描き続け人間を妖怪を動かした。
少年少女はその世界を見ることはできなかった。
そんな少年少女は今では数少ない人の胸の中にしかいない。
しかし少年少女が忘れられることは決してない。
その理由は永遠を生きるこの私が御伽噺の様に語り続けるからだ。
今日は皆にあの時何があったか戦争末期から終戦、そして今につながる話をしてやろう。
それは今から約七十年ほど前、少年と少女が出会った頃だった。・・・・
昨日まで自分が起きて朝ご飯を食べ畑仕事をして友達と走り回って遊んで晩ご飯を食べて寝ていた家が、村や友達が、その日攻め込んできた妖怪たちによって殺され焼かれ蹂躙されていた。
村の人たちは妖怪に対して最後まで抵抗し続けた。
大人は子どもを逃がすために体が貫かれようとも倒れることなく妖怪と戦い続けた。
少年は子どもたちの中ではもっとも年が高く泣いたり、親の所へ行こうとする子どもたちを引っ張って村から近くの村へ逃げようとしていた。
大人たちを手伝うため、少年は子どもたちを先に逃がして村へ戻ろうとした。
しかしその先にも妖怪が数体いた。
子どもだけでは抗うこともできずどんどんと殺されていった。
少年は持っていた刀で妖怪に向かっていった。
目が赤くなるほどに無我夢中で戦い気が付くとそこにいたはずの妖怪たちは動かなくなっていた。
しかしその近くには子どもたちが横たわっていた。
少年は近くの木を一発殴りつけた。
木は少し揺れ少年の手からは血が流れ出た。
少年は村へと戻ろうとしたが戦う音が聞こえなくなっていることに気が付き少年はその場で膝から崩れ落ちた。
涙を流し木を殴り続けた。手の肉が裂け骨が見えそうになったところで少年は気を失った。
翌朝、目が覚めると同時に手に強い激痛が走った。
手を見てみると血だらけになっていた。
昨日のことを思い出した少年は妖怪に殺されてしまった子どもたちを自分よりも大きな石の近くに埋葬し数十秒手を合わせると、少年は走り出した。
自分が暮らしていた村へ。淡い期待を抱いて。
しかしそこにあったのは今も燃え続け村の人たちの遺体を焼き続ける火だけだった。
村の生き残りは少年一人になってしまった。
少年は自分の声とは思えぬほどの声を出して泣いた。目からは血の涙がこぼれていた。
数時間の間泣き続けた少年はいつの間にか泣き止み横になって空を見上げていた。
いつの間にか降り注ぐ雨に打たれながら少年はこのまま自分も死んでしまおうかと考えていた。
もう自分には何もない。生きる理由も意味も。
何も持たない自分が生きていても何もならないと考えそのまま死ぬまでここで横たわり続けようとしていた。
そこに現れたのは妖怪にやられた報告を受けて来た軍だった。
軍の人たちは村につくとまず生き残りの捜索と妖怪の確認のため村の捜索をした。
そんななか一人の少女が少年の下へ来た。
「あなた、こんなところで何をしているの。死ぬわよ。」
と、横たわる少年に話しかけてきた。
「このままにしてくれ。俺はこのまま死ぬ」
そう答えた少年に対して少女は
「あなたは自分の家族が、友人が、村の人々が目の前で殺されてそのまま野垂れ死にたいの」
少女のその言葉に虚ろな目をしていた少年は起き上がり少女を見て
「ふざけるな。そんなわけがないだろ。それでも俺にはその力がない。妖怪たちと戦う力がないんだよ」
少年は少女に対して吠えるように答えた。
「なら力を貸してあげる。妖怪と戦いこの戦争を終わらせるだけの力を。あなたは妖怪によって失う悲しみを知っている。戦うにはそれだけで十分よ。これ以上あなたのような人を増やさないためにも」
そういって少女は手を差し出してきた。
「妖怪をすべて殺すため、戦争を終わらせるために力を貸してくれるのか」
少年の問いに少女は
「共に戦いましょう」
と、そう一言言った。
少年は少女の手を取った。
この少年と少女の出会いがこの世界のすべてを変えた。
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