第9話 それでも

「何処行くんだ!成美!!」

 私は、上司の言葉を待たず、すぐさまを特定した!

(―撃たれた所から、逆算すれば・・・!)

 足は、迷いもなく動いた。さもないと、”奴等”に逃げられる可能性がある…!しかも、よりによってにスキを突かれるなんて…!

 逆算した角度を頭で瞬時に計算し、特定までには1分もかからなかった。それだけ、は”ゲーム”の様に楽しんでいるからだっ!

「―ちょっと、そこどいてっ!」

「な、何っ!?」

 井戸端会議している主婦の間をぬって、私はパルクールをするがの如く、瞬時に塀や家の壁をよじ登り、屋根の上へ!

「・・・居たっ!」

 屋根を伝っては飛んでを繰り返し、に近づいた…!


 【某時刻 某公園内】

「・・・繰り返します。今現在は―。」

 狙撃された公園内、及び周辺は騒然としていた。野次馬のマスコミや近隣住民のスマホ撮影等起き、場の警察官・被害者とその少年達・応援に駆けつけた刑事達が、現場を埋め尽くしていた…。そこへ、刑事デカがやって来た。

「!!千國警部っ!」

 警邏隊の警察官達が一斉に敬礼した。千國がジェスチャーで「手を下げろ」とアクションした瞬時、すぐさまこう言った。

「・・・成美は?」

「え!?え〜っと・・・。」

「―もういいっ!ガイシャは?」

「は、はいっ!―被害者は、18歳の「北折 由美きたおり ゆみ」。ここで―」

「・・・搬送先は?」

「「西蓮寺さいれんじ病院」へ搬送され―。」

 ―この時、千國は再度尋ねた。

「搬送先とガイシャは、それで合っているんだな?」

「は、はいっ!」

 千國は、がした…。この”2つ”の名前に、からだ。千國は言う。

「お前達言う。搬送先の病院「西蓮寺病院」は・・・先月、されている。―つまり、新しい患者を受け入れる暇はない筈だ。」

『!!』

 現場の刑事・警察官が凍りついた…。

「そして、ガイシャの名字「北折」は、他の所轄がガサ入れ準備している一般社団法人『のコウノトリ』の”1人娘”だ。

 もう分かっただろうな。」

「・・・。」

「お前達を責めるつもりはない。―しかし、今回のヤマ事件は、厄介な事だと思え。俺は先に、捜査本部へ戻る。」

 そう言って、車に乗って去って行った…。


 【某住宅街 屋根上】

「・・・随分と余裕じゃんか?あぁ!?」

 成美が圧を掛けると、狙撃手と思われる男が返答した。

「!お!みちるちゃんじゃ〜ん♪」

「気軽に名前で呼ぶんじゃねぇっ!!」

 腰のホルスターから拳銃を取り出し、狙撃手へ撃った!…だが。

「・・・痛ってぇ。そんな荒々しい歓迎しなくてもいいじゃ〜ん・・・。」

「くっ!」

 腹部へ撃った筈が、血が流れているのに、男は平然とした態度で接した。

「そんな怖い顔しないでよぉ〜?お互い”新人類”同士で仲良くしようぜぇ?」

「黙れっ!」

 そう一喝すると、男の態度がガラッと変わった…。


「・・・こんな事して許してくれるの、俺ぐらいだよ?―何でこんな無駄な抵抗するの?」

「・・・!」

「俺達さぁ・・・。色々、じゃん?―でも、折角自由が手に入ってって時に、みちるちゃん。俺達から抜けちゃって、悲しかったんだぜ?誇りだったのによぉ・・・。

 ―”人殺しの天才”って名誉。」

「!!」

 この時、成美は脂汗をかいた。それも、多く、パニックになりそうなほどに…。

「―残念だよ。再会したと思ったら、みちるちゃん、ポリ公になって・・・。」

「・・・。」

 成美は、何も言い返す事が出来なかった…。まるで、的確に言われたように…。

「―どうする、みちるちゃん?俺を捕まえる?」

「ぐぅ・・・ぐぐぐ・・・!」

「何時でも準備は出来てるよ。・・・ほら。」

そう言って、男は両腕を差し出した。…煽るように。腰にある手錠はあるが、成美は、何故か出来なかった…。

「・・・そうか。」

 そう言うと、男は狙撃用の銃を解体し、ゆっくりと歩き、屋根から降りて行った…。


 【数時間後…西蓮寺病院】

「・・・ん?」

 狙撃された北折 由美が病院のベッドで目を覚ました…。近くには、母親らしき人物と医師が、コソコソと話していた。

「ママ・・・?」

「!気が付きましたか!?いや〜本当に良かったですぅ!」

 医師は、ゴマをすっていた。母親が近づく。

「由美。―これから、先生がから、よく聞きなさい。」

「え?」

「お嬢さん。・・・残念なんですが、銃で撃たれたところを確認しました。子宮が破裂していました。」

「・・・。」

「簡単な話よ。―由美は、現状赤ちゃんを産めない体になってしまったの・・・。」

「えっ!?・・・そ、そんな―。」

 目から涙が出てくる瞬間だった!医師が告げる。


「―でも。をすれば、問題は解決します。ご安心下さい!」

「?」

「簡略で申し上げますと・・・。実は、当病院には『復元手術』が可能です!つまり、今!此処で入院して、手術に同意してくれれば、お子さんが産める体にと言う訳です!」

 目が笑ってはいなかったが、由美は頷くしかなかった…。

(赤ちゃんが産めるのなら・・・。)と思った由美は、静かに同意した。

「・・・先生。宜しくお願いします。」

「お任せ下さい!―それでは、手続きの方へ・・・。」

 そう言って、医師と母親は部屋から出ていき、代わりに看護師が入って来た。

「―これから、緊急手術の段階に入ります。」

「あ、あのっ!」

「?」

「ほ・・・本当に大丈夫なんですか?」

 看護師はにこやかに微笑んだ。

「大丈夫ですよ。ですから!」


 【夜中・勤務先交番】

 ―成美は、元気が無く、幽霊の如く交番へ戻って来た…。其処に居たのは、捜査本部の指揮をしている筈の千國警部の姿があったのだ。

「・・・どうしたんだ。成美。」

「・・・。」

「コラッ!返事を―。」

「いいんだ。」

 千國が怒鳴らせるのを止めた。…何があったのか察していたからだ。

「まさか・・・”旧友”が現場に居たのか?」

 成美は、俯いたままだったが、頭で小さく頷いた。

「そうか・・・。」

 腕を組んだ…。

「(”奴ら”がやって来たと言う事は、只事では済まないだろうな・・・。)分かった。・・・緊急かもしれないが、此処に居る全員。明日から1週間、”休暇”だ。」

「えぇっ!?」

 その場に居た警察官が驚いた!

「―勿論。成美、お前も対象だ。・・・明日から、代わりの奴が、此処で勤務するから支度するんだ。いいな?」

 そう言って、成美に近づき、耳元で囁いた。


「明日、捜査本部へ来い。朝イチでだ。」

「!」

 気が付くと、千國は居なかった…。”伝言”を残して。


続く…。

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逆襲の失敗作 〜警視庁・特殊犯罪班『桜』〜 青山ろっく @rock-san

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