第8話 命の”始まり”

【数日後・地方検察庁】

「―如何ですか、そめさん?」

「・・・。」

 あの拉致監禁後の事件から数日…。染は、検察官の取り調べ室で『どうして事件が発端したのか?』と言う事を聞かされていた。

 しかし、染は一向に喋る気配がない。黙って、真っ直ぐ前を向いたまま、検察官の顔を噛みしめる様に見ていた。

「・・・。―私達は、今回の誘拐は、『先生が引き起こした事件』でもあると、認識しています。

 ご協力下さい。」

 説得する検察官。唾を飲み込む事務次官。―そして、染が口を開いた!

「・・・もう。もう、時は来たんだ。」

「?何を言って―。」

 その時だった!!窓が割れ、染のこめかみに銃弾が食い込んだ!

「!!」

「きゅ、救急車を呼べっ!早くっ!!」

 染が取り調べを行っている部屋は、地上から5…。そこは、極秘で知られるはずのない所だった…!


【後日・某警察署内】

「すいません!ドタバタしちゃって・・・。」

「いいんですよ。―よっと!・・・これが他の所轄でも調べていた”調書”です。」

 所轄の「川田さん」に、改めて私「成美 みちる」と同僚の「佐々木さん」と共に、本来調べるべきヤマ事件を聞きに、再び足を運んだ。

 殺風景の無人の部屋に、大量のダンボールに入れられた調書が沢山入っていた。

 中を掘り出し、調書を1ページずつ、確認作業を始めた。

「それにしても、今回もっすよね・・・。」

?」

「だって・・・。ほら!ここ!」

 佐々木さんが、気になる文章に指を指した。―文脈には『他の事件もまた、下腹部。特に犯行である。』と記されている。

(『子宮を狙撃した』・・・か。)

「?何か、心当たりでも?」

「はい。・・・それも、から。」

 ―それは、私が”交番勤務”をしていた時期だった…。


 【半年前・都内某所 交番】

「あの〜・・・最近出来た病院の場所を、聞きたいんだけど―。」

「えぇ・・・?そんなの、スマホ使えば分かるじゃん?」

「!コラッ!成美ぃ!!・・・すいません。代わりに、私が―。」

 半年前…。私は、急に交番勤務をする事になった。「千國」と言う奴に、渋々従って、ここで”お巡りさん”として働く事になった。

 黒髪じゃなく、ブリーチかけて金髪に。付け爪もしているコスプレ警官だった。

 でも、想像したくもない事を目の前でやるのがつまんない。あ〜あ。早く終わんないかな〜・・・。

「成美ぃ!!」

「へ〜い・・・。」

「いい加減にしろぉ!!」

 上司の男が、私の胸ぐらを掴んだ!

「・・・いくら千國さんのお気に入りだからって、調子こいてんじゃねぇぞぉ!」

「・・・。」

「返事はぁっ!?」

 今の私に、そんな事したって無駄。全然怖くもない。ただ単にいきがってるキモい奴と思うだけ。

「殴りたければ、殴れば?―日本のケーサツって、バカばっかりさ。」

「あぁっ!?」

 その時。私はスキを見て、みぞおちを蹴り・顎下中心に右ストレートをかました!

「!!―あああっ!!」

 殴られた上司の口から、下の歯がボロボロ抜けて、出血しているのが分かった。

「あ・・・。付け爪割れちった。―きゅーけーしま〜す。」

 他の男警官も、手も足も出せず、私は奥へ引っ込んだ…。

(つまんねーの。まだ昔の方がマシだったなぁ・・・。)

 そう思いながら、割れた付け爪を外そうとしていた時だった。


〈此方、〇〇署!―〇〇公園で未成年男女が集団暴行をしている!至急、急行せよ!!〉

 ―警察無線だ。最寄りの警察署から”110番”がかかれば、交番へ連絡する様になっている。

「は、早く行くぞ!成美!」

「やだ。自分達で行けば―?」

 返答待たずに、襟を捕まれ、無理やりパトカーに乗せられた…。

「―此方、〇〇交番!至急、現場へ向かいます!!」

 無線に返答しながら、運転する。…私は、後ろの席で寝転んだ。


【都内・某公共公園】

「うるせーぞ!」

「引っ込んでろ!」

 現場へ着くと、集団のガキ共が騒いでいた。正直、めんどくさい。

「何しているんだ!やめなさい!」

 他の交番や、巡回していた警邏隊けいらたいも応援に駆けつけていたが、喧嘩が止まる気配がなかった。

「黙れ!ポリ公!」

「一体、何が起きたんだ!話しなさい!」

「うっせぇ!」

 正直、こう思った。(ほっとけばいいじゃん・・・。)と。大の大人が、よって集って、チビの面倒見るなんて…。

「早くお前も手伝え、成美!」

「・・・。」

 そんなに言うなら、がある。

〈バァンッ!!〉

「・・・は?何しているんだ、成美・・・?」

「―威嚇射撃。」

 そう言いながら、私は携帯拳銃をガキ共に向けた。

「・・・知ってる?この拳銃。最初の一発は”空砲”。つまり、弾が入っていない。

 ―でも、2発目以降は”実弾”。本物の銃弾が入っている。撃たれたら、軽い怪我じゃ済まないよ?」

 不気味に喜びながら、拳銃の引き金をゆっくり引く…。

「ひ、ひぃっ!」

「こ・・・殺さないでぇえええ!!」

〈バァンッ!!バァンッ!!〉

 わざと大きく外し、脅かせた。

「あはははっ!!バッカじゃないの!?あんたらみたいな、を殺したって、一銭の金や名誉が出るわけじゃねぇんだよぉ!」

 …周りの警官や男女の少年は、腰が抜けて声も出なくなっていた。

「・・・懲りたら、さっさと帰れ。クソッタレ共。」

(これで懲りただろ・・・。)と興ざめて、私は再びパトカーで寝ようと思い、戻ろうとした。…その瞬間だった!!


「―いっだああいいい!!」

「は―?」

 演技かと思い、後ろを振り返ると、未成年1人の女の腹に、血溜まりが出来ていた!

「なっ・・・!?」

「な、何が起きたんだっ!?」

 警官達も、我に戻って、未成年達を守った!

「此方、警邏隊!!―み、未成年の女子が撃たれました!お、応援を!救急車も!!」

 無線で応援を呼ぶ警邏隊。私は、直様辺りを見回す!

(・・・辺りは家ばっか。狙撃出来る場所は限られる!―撃たれた射線から考えて・・・、あそこか!?)

「!どこへ行くんだ、成美!おい!」


 ―私にとって、これはとなったきっかけ。生意気な小娘から、弱者を守ると決めた瞬間の出来事だった…。


 続く…。

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