第7話 踊らされた生き人形
【????】
「ううっ・・・!ここは・・・、何処なんだ?」
「ようやくお目覚めになりましたか?”染先生”?」
不気味な男達が、椅子に縄で括り付けられた染に対して話している…。
「その声!?
「今更かよ、親父?」
「な・・・何だと!?」
クスクスと笑う染の息子『巨樹』。
「―さぁ?お話といきましょうか?お父さん。」
【某時刻 東京郊外】
私達は、郊外の寂れた港へ5人集合した!
「―すいません!」
「・・・。」
千國班長は、苦虫を噛んだ顔をしていた…。
「・・・その女性が、『早志 智草』さん?」
私が名を尋ねると、早志さんは俯いてしまった。
「―みちるちゃん。今は”一大事”よ。
・・・染と早志さんで出来た”デザイナーベイビー”達が、染を誘拐したの。」
「何ですって!?」
「―今回ばかりは、突入するしかない!・・・全員、武器は持っているか?」
千國班長が言うと、乗ってきた車のトランクから、大量の武器を出してきた!
「・・・また、令状も無しに持ってきちまったが、時間がない!準備したら、突入だ!!」
『はいっ!』
私・佐々木さん・山尾さん・二坂さん。…そして千國班長が、武器を装備した!
「・・・行くぞっ!」
千國班長を前に、私達はとある倉庫へ向かった!
【寂れた倉庫】
「―わ・・・分かった!か、金なら―。」
「金?・・・お父さん。まさか、それだけで手を打つ気じゃないでしょ?
俺達が?今まで?どれだけ我慢してきたか分かる?」
男達が、刃物や銃を持って脅してきた!
「だ・・・誰か、助け―。」
「―警察だぁっ!!今すぐ、染を開放しろぉ!」
「!?・・・警察?」
「俺達は・・・特殊犯罪班『桜』だ。」
「なっ!?・・・『桜』だと・・・!?」
男数人が、挙動不審になった。
「狼狽えるんじゃねぇ!!・・・どうせ、そこらへんのサツとおんなじだ!」
そう吠えると、班長は、1人の男の眉間に撃った!
「!」
「・・・悪いが。そこらへんのサツと同じだと思ったら、大間違いだ・・・。」
「クソッ!反撃―。」
しかし、指示を出すのが遅かった!…既に、強そうな男達を撃ち倒したのだ!―今度は、私が前へ出た!
「このっ!?」
「はぁっ!」
強い前蹴りを繰り出した!
「いってぇっ!!」
「・・・かかってこい。」
「何だと・・・?」
「私がケリをつけさせてやる!」
果敢に前へ!右ストレート・左フック・右ボディブロー。それを繰り出して、男をダウンさせた!
「・・・まさかっ!―お前は・・・あの”殺人鬼”!?」
「―過去の話。今は、”警察官”。ただの誘拐で済むと思ったら、大間違い。」
「・・・噂の”失敗作”が、ほざいてんじゃ―。」
一気に間合いを詰め、ゼロ距離でお腹に、ハンドガンの引き金を引いた!―弾は腹部へと貫通した!
「・・・ぁ!」
お腹を押さえ、その場で苦しんだ…。
「お・・・俺達の・・・人生が―。」
「誘拐してまで、取り戻したい人生だったの?―呆れる。」
事件は…終止符を打とうとしていた…。
【数時間後 某警察署 第2取調室】
「―私は・・・どうなるのでしょうか?」
染は、暗い表情で、千國班長の尋問を受けていた。
「世間へ己の行為を公表する必要があります。―それも、私達の手で。」
「「弁解の余地も無い。」・・・と言う事ですか。」
「申し訳ないですが、その様になります。」
そう伝えると、染は泣き出した。
「私は・・・。私はただ・・・!」
染の供述は、数十年前に遡る事から始まった…。
[―
苦しいサラリーマン生活を耐えながら、必死に”国会議員”を目指し、その夢は叶った。 当時、20代で結婚した女性、息子と娘が居た。 サラリーマン時代は優しかった家族。…しかし、それは国会議員になった途端に、豹変する。
「―妻は・・・金遣いが荒くなりました。子供達も、まるで隠していたかのの様に、素行が悪くなりました。息子は非行に走り、娘も、それを追う様に態度が悪くなりました・・・。」
―そこから、週刊誌にすっぱ抜かれて、国会で追求される事となった…。そこからだった。染の運命の変える出来事が。
「?”デザイナーベイビー”?」
「そうです、先生。」
突然、秘書から提言された。秘書はこう話したそうだ。
「先生のご子息には、申し訳ありませんが”デザイナーベイビー”が変わって、先生のご子息となれば、問題は解決するかと・・・。」
「な・・・何を言って―」
「―国会議員の職は難しいですが、”天下り”をした後は、新しい人生が待っています。
やりましょう。先生。」
―そこからだった。染の人生が変わったのは。
「・・・も、もしかして?」
調書を取っていた佐々木が、思わず話しかけた!…染は言った。
「・・・妻と離婚し、子供達との縁を切りました。―代わりに、”デザイナーベイビー”が代わりの子供となりました。
―仕方なかったんだ!!知名度も無い私にとって、国を支え!汗と涙を流す事が生きがいだった!!
それなのに!あんな・・・子供がいたら、仕事が!!」
「・・・そんな事だから、こんな目にあったんだろうが。」
千國班長が改めて問いただすと、染は肩を落とした…。
「まさか・・・。実子に襲われるとは・・・。」
「まだ話がある。―お前が偽った”デザイナーベイビー”は、今何処に居るんだ?」
千國班長が言うと、染は言った。
「・・・。分からない。」
「お前が何かしたんじゃないのか?」
「本当に分からないんだ!・・・電話番号も消えていて、連絡がつかないんだ。」
「は・・・班長?」
千國はこう思った。
―まんまと利用された。…と。
【数時間後 警視庁 特殊犯罪班室『桜』】
「・・・。」
皆が黙ってしまったのは、私でも分かった。―染や早志さんから、聞き出せる供述は、もうこれ以上収穫が無かったのだ。
―それよりも、肝心の染の”デザイナーベイビー”が行方不明なのが気がかりだった。
「・・・今日は解散する。―明日以降は、染の供述の裏取りを進めてくれ。」
『はい・・・。』
そう言って、私達は散って帰って行った…。心残りがあるのに。
【????】
「そうか。染が駄目になったか。」
「・・・そうです。全然、”僕達の父親”の資格にはなれませんでした。」
そう言うと、ゲラゲラと笑い始めた!
「まぁいい。―先生はカスの様に信じた。作戦は成功だ・・・。」
その男は…染の国会議員時代の元秘書だった!!
「さぁ始めようか・・・。”新しい日本政策”の始まりだ・・・!」
〜第1節・完〜
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