第6話 残酷な”秘密”

 【都内 警察病院】

「―すいません。遅くなりました!」

「お待ちしておりました。―終わったら、声をかけて下さい。」

 見張りの警官に変わり、病室へ入る…。―そこには、『五十嵐 小次郎』がベッドで横になっていた。

 ”警察戦車”の攻撃の影響で、左腕・左足を負傷していた。

「・・・何しに来たんだ?」

「喋って貰うためだ。」

「・・・”真人間”以外は、人権無いんだな。」

「・・・。」

 病室は…緊張感で一杯だった。

「・・・じゃあ―。」

「?」

「・・・。好きな食べ物は?」

「・・・は?」

「決まってるでしょ?―好きな食べ物は?」

「・・・おい、”失敗作”。これは、どういう事何だよ。」

「私に・・・聞かないでよ。」

 ―何時もムードメーカーの佐々木さん。…しかし、役職が『警視』であるのは、”取り調べの才能”があったからだ!

「・・・質問に返さなきゃいけないか?」

「他の質問の方が良い?」

「・・・。―いちご。」

「お!良いねぇ!―結構、スイーツとか食べる方?」

「・・・そんなんでもない。育ての親が厳しかったから、外でコンビニの前で食ってた。」

「勉強とかで、結構糖分欲するでしょう?」

「・・・それが、何よりの”ストレス発散”だから。」

 佐々木さんは、こうやって”尋問”する。―決して、厳しくしたり、非難はしない。じゃないと、信頼関係に基づく”情報提供”が出来ないからだ。

 この尋問する刑事は、少ない…。―けど、佐々木さんは、この方法で戦ってきた。自分の時間が割かれても、絶対に曲げてこなかった人だ。


 ―気が付けば、”尋問”が1時間が経とうとしていた。

「―やっぱり。親ってあまり子供のこと心配するって言うけど、意外と気付いてない事もあるんだよねぇ。」

「そう。・・・”生みの親”だったら、俺は、どうなっていたんだろうなって・・・。」

(―来た!!)

 ここで、絶対に焦っちゃいけない!―ペースを崩さない。

「―俺も思うんだ。「親が違っていたら、自分はどうなっていただろう?」ってさ。君はどう思う?」

「・・・どうって。が、40んだぜ?・・・家族どころか、話にならねぇよ。」

「でも、そういう家庭もあるよ?」

が、俺に愛情注ぐか?しないだろ。」

(佐々木さん・・・!)

(あぁ!分かってますって!)

 ついに、追い込みをかける!


「何で、そう言い切れる?」

「―簡単だよ!”財産分与”で、実の子供に渡したくねぇからだよ。」

(ざ・・・”財産分与”!?)

 …もしかしたら、これが”突破口”になるのかもしれない…!

「あいつらは・・・。表は、「有志大へ行ける男が必要!」とか言いながら、裏では「自分が溜め込んでた”汚い金”を渡したくは無い。」って理由で、俺を作り出したんだ。

 ・・・気が付いたのは、。―けど、俺には「大学を卒業する」使命があった。だけども、本当の話を聞いて、勉強に手をつかなくなった。

 でも、収穫はあった。―死刑囚の”デザイナーベイビー”が生きているって話を聞いた。」

「―それは、何処から?」

「突然、スマホにメールが来た。何通も。―開いてみたら、そこの”失敗作”の名前と顔写真が貼り付けてあった。

 俺は・・・、自分の人生に飽きて、事件を起こそうと考えた。」

「それで、警察署を襲ったのか?」

「日に日に、メールが来て、最後は[”失敗作”は警察署に居る。]と来てた。―直様、落ちぶれとつるんでいた野郎共と事件を起こした。

 ―体力は、”真人間”より上だからな。」

 …そんな事があったなんて、信じられなかった…!”遺産”を渡したくはないからって、”デザイナーベイビー”を生み出した。―なんて身勝手な…!

「・・・ありがとう。本当の事を話してくれて。感謝するよ。」

「か、感謝・・・?」

「そうだよ。・・・感謝出来ない人間は、人と話す事の大事さを知る訳がない。けど俺は、知っている。だからこそ、”感謝”を伝えたいんだ。」

 そう話すと、小次郎は腕で目を隠した…。

「・・・嘘くせぇ。」

「・・・行きましょうか。成美さん。」

 改めて、佐々木さんの”尋問”を知った。


 ―病院から出て、連絡が来た!班長からだ!

「もしもし?」

〈いいか!染が誘拐された!〉

「何ですって!?」

〈”遺伝子提供者”の早志から連絡が入った!―電話中に、何か事件に巻き込まれた!〉

「班長!どうすれば!?」

〈―今、病院か!?だったら、今すぐ戻れ!!早く!!〉

「わ・・・分かりました!!」

 電話を切って、急いで病室へ戻った!!

 

 ―病室へ戻ると、修羅場になっていた!

 なんと、警察官が、小次郎へ携帯しているリボルバーで殺そうとしている!!

「止めろ!」

 私が静止を促すと、向こうは、威嚇発砲してきた!

「こっちに来るな!!・・・こいつがどうなっても良いのか!!」

(成美さん!・・・さっきの病室の警護にあたっていた警官っす!)

(えっ!?)

 顔をよく見ると、本当にさっき挨拶を交わしたばかりの警官だった!

「・・・あんた。『反新人類派』の人間っすね。」

「―当たり前だ。こんな奴、人権がある方がおかしい。

 あんたもだ。成美巡査!・・・いいや、”失敗作”!」

「!」

 私は、ハンドガンを抜いた!

「・・・やってみろよ!は、言葉じゃ会話成立出来ないもんなぁ?」

 警官が馬鹿にしてくる…。

「止めるっす!成美さん!!」

「ううう・・・!」

 私の頭の中は、怒りで一杯だった。…再び、こんな仕打ちを受けるなんて…!


「ぐえっ・・・!」

「!」

 警官のスキをついて、ククリナイフで首を切ったのは…小次郎だった!

「何を―。」

「・・・。感謝しているんだ。俺。」

「え?」

「こんな俺でも、”感謝している”なんて言われたの・・・生まれて初めてだったんだよ!」

 小次郎が…泣いている?

「どうせ、”デザイナーベイビー”に人権はない。・・・だったら、刑事さんの役に立ちたいんだ・・・!」

 涙を流しながら、まっすぐ佐々木さんを見た…!

「でも・・・。でも!―俺は、”で生きていたい”!!」

「・・・小次郎君。」

 小次郎は、手の力が抜いて、ククリナイフを落とした…。

 私達は…”デザイナーベイビー”の本音を聞けた気がする…。


続く…!

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