第4話 心と体は繋がっている。体も心と繋がっている。
一番危惧していたクラスメートにバレるということを初日からやらかしてしまった。
ちなみにヨウヘイの方は、「殴打能力倍増」という特殊能力を、ハジメは「瞬間移動」という能力を持っていたはず。
どちらもシズカの「治癒魔法」程ではないが、レアな能力なのは間違いない。
「マチダくん、タナカくん、どうしたの……?」
こっちの世界に転生してから、シズカとお母さん以外との会話が初だったから、緊張でうまく言葉がつながらない。
「おいおい、苗字で呼ぶなんてよそよそしくて嫌だな。俺の事はヨウヘイでいいぜ。逆に俺達もお前のことをユウヤって呼んでいいか? ハジメもハジメって呼ばせていいよな?」
「そりゃ、勿論。てか、お前も大変だよな。特殊能力なしなんてさ」
まさか、この二人が「忌み子」と呼ばれている俺とまともに会話してくれるとは思ってなかったので、ビックリした。
もしかすると、「ユウヤ」自身も話しかけづらい態度をとっていたのかもしれないのではと少しだけ思った。
「まあ、うん……。そうだね」
……話すリハビリが俺には足りてなかったようだ。
「ところで、さっきも聞いたけど、ここで何してるんだ?」
「あ……ここで料理してたんだ。シズカを待つ時間があったから」
「ユウヤ、料理できんのかよ! すげーな! なんか、めちゃくちゃ旨そうな匂いがしたから、つい入っちゃったぜ」
「ヨウヘイの言う通り。同い年のやつで料理出来る奴は周り見てもいないからな」
「いや、多分いると思うよ」
「絶対にいないね。もし、ユウヤさえよければなんだけど、ちょっと、食べてもいい? 訓練後でお腹が超空いてて……」
そうハジメは言って、お腹をさすった。
「久々の体育会系ノリだー」と思ったのはここだけの話。
そんなことを考えていると、ヨウヘイが無言で皿に盛られているカレーを食べようとしていた。
「ちょっと、しょっぱいよ」と言いかけたが、遅かった。
俺の言葉より、ヨウヘイのスプーンを動かすスピードの方が速かった。
モグモグ……ゴックン……
「いやー、訓練後の濃い味いいな! 元気がでる。これなんて言う料理なんだ?」
ヨウヘイは俺のカレーをそう言って、褒めてくれた。
「……あ、これはカレーっていうんだけど、しょっぱすぎない?」
「このしょっぱさがいいんだよ。もう今日めっちゃサンドバック殴らされて、もうヘトヘトだったから、マジ助かる。ハジメも食ってみろよ」
そう言われたハジメも一口食べる。
「どれどれ……。これ、めっちゃうまいじゃんか。これって作るの難しい? もし、簡単だったらレシピ教えてくんね? 俺のお母さんにもお願いしたいし」
ハジメも気に入ったらしく、質問責めをしてきた。
「まだちゃんとできてないけど、この状態でよければ、メモに書いとくね」
「マジサンキュー! ユウヤ、めちゃめちゃいい奴じゃんか。ヨウヘイ、俺らもっと早く話しかけとくべきだったぜ」
「マジでそれ。ユウヤ、今まで変に避けてて、ごめんな」
前世で有名な誰かがこんなことを言っていた。
「能力のある人はちゃんと感謝出来て、ちゃんと謝罪出来る。逆に能力がない人は感謝も謝罪も出来ない」
正に彼ら二人を表している様だった。
今回のことで、彼らの優秀さと人を惹きつける魅力というものに気づくことが出来た。
よく考えるとシズカもそう。本当に優秀な人はおごらないというのは真実なのだろう。
「全然、大丈夫だよ……。逆に美味しいって言ってくれてありがとう」
そう言った瞬間、全く意図してなかったが、自然と涙が頬を伝っていった。
多分、今まで辛い思いしかしてこなかったユウヤの魂が久々の生の嬉しい言葉を聞いて、感極まってしまったのだろう。
心と体はつながっている。逆に言えば、体も心と繋がっている。
「わ……悪い。俺、なんか変な事言っちゃったか?」
ヨウヘイは俺が急に泣き出したので、オロオロしていた。
「違う……違うんだ……。2人の言葉が嬉しくて……」
「……ユウヤ、お前本当に変なやつだな。でも、嬉しいなら笑ってくれ。」
ハジメは俺に笑顔でそう言った。
「そうじゃないと、お前の嫁さんに俺達、怒られちまう」
「嫁さん?」
「なに言ってんだよ。ユウヤとマツリは恋人なんだろ?」
ハジメの言葉のせいで涙も思考も止まった。
加えて、体も硬直した。
俺とシズカは付き合ってない。それは紛れもない事実。
訂正せねば。
「いやいや、俺とシズカは付き合ってないよ」
「なーに、言ってんだ。皆、噂してるし、今もマツリを待ってるんだろ?」
「確かに待ってるけど……。でも、本当に付き合ってないよ」
やはり、男は何歳になっても話す内容はあまり変わらない。
その噂のシズカが来るまで、俺たちは男特有のバカ話で盛り上がっていた。
復学一日目はこれ以上ないほどいい一日だったのではないかと思う。
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