第7話 ボッカイの街
これは、ドラファンの街並みだわ」
某国民的ゲームを例えに、レンガの壁と木のドアで出来た家々が立ち並ぶ、ボッカイの街を見渡した。
キャンプした場所から数時間歩き続けて着いた街、ボッカイ。
多くの人々が行き交い活気にあふれている。
まるで原宿のように賑やかだ。ただ、原宿と違うのは個性的なファッションな人達ではなく、頭に耳が生えている猫のような人間や、テカテカ光る鱗のトカゲ人間、亜人と呼ばれる人々も交じっていること。
国産というより海外産のゲームの世界みたいだ。
「ひと昔前は、魔法使い達の遺跡しかない忘れられた村だったが、今はコス市随一の繁華街へと変貌したのだよ」
太陽の下、多くの人々がいる中でもピリスの存在は一際、目立っている。
グラマラスな美人でもあるが、それは彼女がこの世界イセコスにある、シャギーリ共和国の軍隊であるエレメントアーミーの特務大尉でもあるからだろう。
昨夜は日が出始めるまで多くの事を教えてもらったが、正直眠すぎて全て覚えているかはあやしい。ただ、この国はエレメントマスターあってこその繁栄を築き、エレメントギアの進歩によって生活水準を上げ、魔物の脅威を下げたそうだ。本来、あのエビルベアの存在も異例のことらしい。
「さて、もう少しキミとの時間を楽しみたいのだが、私にも仕事があるのでね」
「え、マジで? ここでお別れ?」
「そう、マジで。と言っても、路頭に置き去りにというわけにはいかないから、ある場所を尋ねると良い」
「それは異世界の迷子センターみたいな?」
「迷子――言い得て妙なことを言う! キミはやはり面白いな!」
子供のようにはしゃぎながら、背中をバシバシ叩いてくる。
わりかし、痛い。
「まぁ、アイツ等が迷子ともいえるか、ケイラスに翻弄されるイセコスの迷子たち」
「ケイラス?」
「何でもないさ。尋ねる場所はボッカイ魔法協会にいる、えーっとどっちだ、アカネ……アカネ・ミソノだったかな」
もろ和名なのだが。
「それって、もしかして俺の世界の」
「いや、イセコスの民だ。考え方は異世界かもしれんな」
イジワルする前の子供のように口角を上げた。
この顔は不安でしかない。
「オブザーバーもあるから私が居なくても言葉は通じる、きっと親切にしてくれるさ、魔法使い達なら」
「え、魔法使いって、そういえば魔法協会とか言いました!?」
「はいこれ」
右手に収まる程度の麻袋を渡してきた。ズシリとした感触。
「当分は生活に困らない程度の金貨だ。大事に使えよ」
「あ、ありがとう、でも、魔法使いって」
俺の質問を遮って
「お別れの前に一つ……キミのお陰で私はキミと同じくもう一度、生きる道が得られたようだ。感謝している」
ピリスが急に神妙な顔つきになり、
「キミは、この世界に大きな一石を投じることになる……いや、なった」
いきなり変な事を言いだした。
昨日、光の粒子が見えたとか言ったから中二病だと思われているのか?
「感謝しているなら、ピリスが住んでいる街の方がありがたいんだが」
ピリスは神妙な顔つきから、わずかにほほ笑んだ。
「キミを連れて行きたいが……キミは、魔法使いと出会うべきだよ、スギヤマ」
「それはどういう?」
ピリスは何も言わず、ターンと高く飛び上がり街の城壁を越えて去って行った。
最後までマイペースだったな。でも、色々親切にしてくれたのは間違いない。
城壁の向こうへと届くように頭を下げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます