少年の矜持

 ハルオの頭は青い。カラーリングを念入りにしたと聞いている。羨ましいなぁと思うけれど、僕の赤い胸も、なかなかいいものじゃないかと内心思ってる。ナナコの金粉もいいけど、僕の銀剣も美しい。清らかな学園生活において、持ち物がいかに実用的で魅力的かは、大きな分水嶺となる。

 シャン、と音を立てて、ロビーの上空から、白羽の矢が飛んできた。深々と肩に刺さる。痛みに耐えながら、僕はワンターンした。途端に、体は白鳥の湖のプリンスのごと軽やかになる。

「さて」

 僕は一歩を踏み出した。草木の息吹が頬に触れていく。大理石から草原に、足ざわりが変わる。

「楽しみにいこうっと」

 楽隊はもうそこにいる。僕はどの配置についてもいい。そういう決まりなのだ。トリックスターとしてのね。弾けてゆく太陽を尻目に、僕はターンを繰り返しながら外に向かっていった。歌声はよく響いてくれるだろう。

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