side 美来 不安

 今日の朝は散々だった。何で私は蓮水と一緒に登校してるんだ。しかもそれを、島田さんに見られてしまうし……。

 どうしよう。あれで良かったのだろうか。もう少し言い訳しても良かったのかも知れない。私に蓮水と付き合う気はさらさらないのに……!

 何故か蓮水と一緒に教室に着くと、島田さんはいなかった。蓮水とはそこで別れ、私はまた一人になる。

 ――なんかもう疲れた。あんなに喋るのには慣れていない。

「嫌だな」

 小さく呟いた、その時だった。

 不意にまた、目の前の机が歪んだ。――まただ。託宣だ。

 最初に見えたのは赤。赤い空……夕焼けが映し出される。ふわっと風が吹いて、目の前に人影が現れた。

 ……屋上?この景色は――

 その時、ぼやけていた人影に焦点が合った。……島田さんだ。島田さん⁉

 次の瞬間、彼女は屋上の柵をひらりと飛び越えた。

『美来、じゃあね。元気で』

 きっぱりと言い、私の視界から姿がかき消える――

「……嘘」

 託宣が弾け飛んだ。叫びだしそうなのを口を覆ってこらえる。戻ってきた”今”の中、私は呆然と彼女の席を見やる。

 島田さんが……飛び降り?まさか……

 自殺?

 恐ろしくて目眩がした。……最近、命に関わる託宣が多くはないだろうか。こっちは気が重い。

 でも何故。ほんの少し、胸がざらりとする。

 あれがいつ起きる託宣なのか――もう託宣は、私がイメージしなくても現実になるようになっているのだ。私が干渉しなければ、島田さんは確実に飛び降りる。死んでしまう。

 私しか知り得ない未来だ。彼女はどうして、飛び降りるなんて考えたのだろう――私は、どうするべき?

 ――ふと、思い出す。思わず口を覆った。

 私が、蓮水と登校していたとき。

 島田さん、笑っていたけれど、少し目が陰っていなかったか?

 まさか。私が付き合うと思ったから、そんな事を考えた、とか?

 いや……流石にそれは考えすぎだろう。でも島田さんは誤解しているかもしれない。きちんと説明しないと。

 チャイムが鳴り響いた。私ははっとする。担任が教室に入ってきたけれど、島田さんはいないままだった。

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