第2話 LIVEorDEAD
奏は珍しく緊張していた。
今日は百合亜が来る。
どこか遠いところに行っていた彼女に連絡がついたのは数週間前だった。
チケットを送ったら『絶対に行く』と答えが返って来た。
だから気合いが入っている。
「待っててね、百合亜」
そこにプロデューサーが現れる。ゴスロリ服を着た西洋人形の様な少女だ。
「珍しく緊張しているみたいね?」
「アリシアさん、今日はタワフェスにご招待いただきありがとうございます!」
「いいのよ、貴女の歌には期待してるわ、とてもね」
「はい!」
相変わらず見た目と年齢が合わない人だと奏は思いながら頭を下げる。
今日は大勢の人が集まるミュージックタワーフェスティバル、通称、タワフェスだ。
いつもより大勢の人が奏の歌を聴きに来る。
鏡の前で両方の頬を叩く。
「よしっ!」
彼女はリハーサルへと向かった。
ステージはすでに出来上がっている。
音楽塔真下のアリーナ。
そこから音が吸収され音楽塔から放出されるシステムになっている。
奏はマイクスタンドの前に立つと、一息。
「――僕達は出会った長い長い旅路の果て、どこまでも高い高い入道雲」
夏の歌、蝉時雨に紛れて届く。
その裏で。
アリシアがモニター室でスタッフ達と共に計器類を見張っていた。
「で? 音楽吸収率は?」
「99.8%。順調です」
「プロジェクトレクイエムの方は?」
「順調に稼働中です。ライブ本番には最高のパフォーマンスになるかと」
「よろしい、他に不確定要素はある?」
そこでスタッフの一人が駆け込んできた。
「大変です! 死神が此方に向かっていると報告が! 迎撃は失敗したと!」
アリシアは舌打ちする。
「戦闘班を全員、死神に回せ、戦力を惜しむな!」
「りょ、了解!」
「厄介なモノを呼び寄せてくれたよ奏、だがね、そのお前の歌で友を殺す事になるんだ……」
アリシアは獰猛な笑みを浮かべた。それは幼い体躯に似合わないモノだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます