第7話
次の日の夕方、 疑惑や憤怒や悲しみで重くなった体を引きずるように実家に出向いた。
空は斜めに見え、遠くで光る稲妻と一緒に落ちてきそうであった。
出迎えしてくれた母と、リビングで椅子に掛けた。
母が口を開いた
[急にどうしたの?]
[急に実家に帰ったらいけないの]
私は今まで母に反発的な口をきいた事はなかった。思春期の時も。
だから母は真剣な顔付きになった。
右手は太ももにあった、その手を上下に動かしながら言った。
[手紙の事、、、聞きに来たのよね、、、]
[今度は全部話して、、、私、中田さんに会って来たの。中田ももよさん]
母の顔が青ざめた
大きく深呼吸をした後、まるで1人事のように小さな声で話し出した。
[始めに、貴女に謝らないといけないわね、、、貴女が私の子どもではないと言う事、言わないで、、、ごめんなさい]
深く頭を下げた。
謝らないといけないのは私の方かも分からない。私の存在そのものが母を苦しめているのだから、そう思いながらも
[私が双子だったと聞いていた。
姉だった人が産まれて直ぐに亡くなった事も、、、私は戸籍では次女になっていたわ]
それはみんな嘘だった。母に怒りをぶつけるのは間違っている
怒りを奥歯で噛み砕き答えを待った。
母は長く息苦しい話しを、たまには呑み込むように、たまには吐き出すように。
[23年前に私は1人の女の子を出産した。
でも、、、
産まれて直ぐ、心臓の手術をする事になったの。
、、、その時その子の血液型を調べたら、私達からは余り産まれない型 であった事から、、、
あなた、シスという血液型があるの、知っている?]
[いいえ、、、知らないわ]
[私も知らなかったの、その時は、、、私の血液型はO。パパはAだったの、だからAかOの子供しか生まれないのが普通なのだけれど、稀にABの子供が生まれる事があるらしいの。
その子がそうだった。
私がRh-型だったからなのだけれど。
私は不思議にも思っていなかった、あの人の子どもに間違えないから気にもしていなかった。
でも、あの人は、、、]
母が全てを語らなくても判った。
父は母の浮気を疑ったのだ。
[その子が亡くなり、私は悲しかった。死にたいほど悲しかったわ。
小さな体が棺に納められるのを見て、私の心も死んでいった。]
[ それが戸籍上のお姉さんなのね]
母はこくりと頭を下げてから
[3日後にあの人があなたを連れて来てくれた。
親戚の娘さんが若くして産んだ子だ。と、
シングルだし育てる自信がないから、里子に出したいと言っているって。
あの人、一緒に育てないかって、、、
私は亡くなった子には悪いけど、涙が出るほど嬉しかった
私達は、あなたを本当の子どもとして育てようと相談して、、、]
(ああ、だから双子、、、。そんな事が出来たのは、病院長が友人であったから?
今では考えられない事だけれど。
あの女が言った事は本当だったのだ。
私は父にとってはもしかしたら、復習の道具で、、母にとっては亡くなった子の代わり、、、そしてあの女にとってはいらない存在)
つらかった。
私が生まれた意味って、、、そういう事。
この体を木端微塵にして霧のように消えてしまいたいと思った。
母は
[貴女を愛している、今でも可愛いい。そうでしょう。赤ちゃんから育てたのよ、、、]
それから横を向いて続けた。
[だけど、、、あの人が亡くなり、遺品を整理していたら、写真を見つけたの、、、女の人、、、
直ぐにあの人の愛人だと判った。]
私の心からは涙が溢れていた。
そう、私はあの人に似ている。母にではなくあの女に❗️
泣きたかった でも泣かなかった。泣かないと決めたのだ、子どものように泣いたあの日から
母は泣きながら尚も続けた。
[私は嫌な女に成りたくなかったの。
でも怖かった、、、いつか貴女に意地悪い事をしてしまうのではないかって、、、]
(だから私を遠ざけた、、、
私は、これからどうしたらいいの、、、ねえママ、、、)
その言葉を呑み込み玄関を出た。
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