第84話 中郷町(7)
〜ジェイドside〜
敵のプレイヤーまで攻めに参加し始めた。
強制的に解放領域が閉じるまでで後20分程だから持ち堪えられるか……かなり厳しそうだな。
手持ちのモンスターを全て犠牲にすれば、運良ければ僕たち兄弟は生き残れるかもしれない。確実なのは誰か殿をすれば2人は生き残れるな……。
「ナビル兄さんとサミュエルだけでも逃す事も考えておくか…。」
死を覚悟して、どうすべきか考えを巡らす…。
その時、僕たちの後方に動きがあった!
そう、待ちに待った援軍が駆けつけてくれたのだった。
「良かった……フウマ殿達が来てくれたみたいですね。」
フウマ殿達が僕たちのところへ敵のモンスターを殲滅しながら来てくれた。
「ジェイド、遅くなってすまない。他所でもいろいろあってな。」
「いえいえ。間に合ってくれて良かったですよ。」
「お前たちは誰もやられていないよな?」
「ええ大丈夫ですよ。そこら辺の人族なんかに負けはしませんよ。」
「なら良かった。だったら、反撃を開始するぞ!」
「っえ、この状態でですか?ハッキリ言ってこちらはほとんどモンスターが残って無いです。フウマ殿が連れて来た480体だけでは難しいかと思いますが……。」
「そこは心配するな…まあ見てろよ。」
そういうとフウマ殿は減っていたモンスターを一旦解放領域の外へ出して、また戻す事によりモンスターの補充を図った。
「そろそろだな。残り時間も少ないがやれる所まで徹底にやってしうぞ!」
フウマ殿がそんな事をいうと、更に1,000体程の軍勢が2部隊も現れて、敵軍目掛けて突撃していった。
そこには南側で戦っていたはずのタムラ殿や北側で戦っていたキサラギ一家の姿があった。
〈対戦状況〉
俺 約3,000体 vs 敵 約10,000体
敵もどんどんとモンスターを補充しており開戦当初の数と変わらない感じだ。
サイトウ殿のマジシャン系の数が600体へ増えた事により殲滅スピードが上がる。
更に元プレイヤーたちが一気に増えた事により、各所で的確な指示が出て更なる殲滅スピードのアップに繋がる。
それから10分後、変なシステム音が鳴り響いた。
『C級モンスター以上の出現を確認。戦闘規模2万以上を確認。2つの条件を満たしたため、解放領域の戦闘可能時間が5時間へ変更されました。』
この世界は面白い、日々変化が起こる。
時間に余裕が出来たが気を抜かずに一気に片を付けに入る。
更に30分が経過した頃、敵の6割近くを倒して、だんだんと援軍が現れなくなった。
フウマ殿たち2,000体の援軍が駆けつけてくれたので、戦場は一気にこちら側に傾いた。そして、余裕が出たナビル兄さんはフウマ殿と張り合って最前線へと向かって縦横無尽に動き回っている。
どちらが多くのプレイヤーを倒せるのか勝負を始めた様だった。
ちょっと呆れて、笑みが浮かんだのが自分でもわかった。
〜井上彰(空列激新団)side〜
俺は『空列激新団』の同盟リーダーの一人である。
途中から参加した同盟であるが、我が連合の規模は中郷町では一番だろう。
領地も大きく獲得しており、西からやってくる異世界人からの攻撃を我々が受け止める事により、中郷町の安全を守ってきたとの自負がある。
そんな事とは裏腹に日本人同士でも派閥があり、いざこざが絶えない。
政府の機能が崩壊して、法律の縛りなど無くなってしまったこの世界では、仕方のない事なのかも知れないが、残念な状況である。
今回も中郷町の東側半分を占領した『深緑の妖精』同盟がどんどんとこちらへ向かって攻めて来ている。
4人の小さな同盟のはずなのに何故か運良く事が運んで、今ではあそこまで大きくなっている。
そのせいで、行き場を失ったプレイヤーたちが高萩市、磯原町、中郷町の西側の我々の領地などへ移動している。
日本人同士で手を取っていけないのか些か疑問である……。
まあ、人がいればいるだけ、考え方・思いがあるので必ずしも一致しない。
それを纏める1つのアイテムが『法律』なのだろうが……。
まあ、この話はキリが無いので切り上げよう。
2〜3週間ほど前から調子に乗っている『深緑の妖精』と始めた戦争……相手を格下と思って開戦した。
プレイヤー数的にもどう考えても絶対に負ける訳が無い。
しかし蓋を開けるとC級モンスターを従える部隊の突破力は凄まじいものだった。
決死の決断で攻めた中央部隊との戦いは、序盤から中盤まで特攻隊として敵陣へ突っ込んでいく我らのモンスターの活躍によって、甚大な被害を出しつつも相手を窮地に追い詰める事ができていた。
しかし、最後の詰めの局面になって形勢が逆転した。
相手に強靭な2,500ほどの援軍が駆けつけて、こちらが劣勢な状態になっている。
しかも、連合の仲間達も次々とやられてしまっている……。
連合員がやられる事に配下のモンスターが光と共に消え失せてしまい、補充部隊もどんどんと減ってしまった。
連合の柱の一人である高木真一さんが、敵の獣人を討ちに同盟員5人全員で出撃したが、戻って来なかった……。
この事により、この中央部隊を指揮・判断する人間が居なくなり、ズルズルとここまで来てしまった。
「ここは一度撤退して体制を立て直すべきだ。」
すぐに周りの人を集めて指示を出した。
「高木さんが戻らない今、一度撤退して体制を立て直そう。まだまだこちらの方が人数が多いし、挽回のチャンスは必ずあるはずだ。」
三者三様だったが、賛同者が多くいたので、撤退する事になった。
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おまけ
<風馬派閥>
・恋人 : 2人 ミレーネ、高橋奈緒
・セフレ : 1人 笹野静香(恋人公認)
・従属配下 : 9人 ミレーネ、ナビル、ジェイド、サミュエル、田村秀樹、高橋奈緒、田中一雄、田中和美、田中美咲
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