第68話 日常(1) <2031年7月>



斉藤くんが同盟へ加入してからは、lv5土地を毎日最低1つ確保している。


被害を出しながらも、順番に領地を獲得しており、俺と斉藤くんは互いにDP(ダンジョンポイント)の獲得量を高め合っている。


唯一、ねーちゃんだけが、あまりDPを必要としていないので、lv5土地をたまに占領する程度だ。


というのも、斉藤くんが入ってからD級モンスターの召喚者が2人になってかなり領地の防衛にも余裕が出て来ているため、高レベルの領地確保も毎日行えるようになっている。


俺だけのカウントで、ここ1ヶ月でD級モンスターが800体ほど増加している。

(1日50体〜60体を召喚して、1ヶ月で1,300体程度。1ヶ月の防衛任務にて500体ほどのモンスターが死亡してしまったので、大体800体増加したという計算だ。)


このまま順調に数字を伸ばして行ければと思っている。




◇◆◇◆◇◆


〜理沙side〜


最近はlv5の土地獲得を毎日行っているので、多少良い運動になっているが、やっぱり歯ごたえが無くてもう少し訓練になる相手との戦いを行いたい…。


葛城道場の近くでは、歯ごたえのある相手がなかなか居ない。


昔、歯ごたえのある獣人たちが領地を奪いに侵略しに来ていたのだが、段々と数が減って最近ではパタリと来なくなってしまった。


「私とナビルで敵を次々と相手していたら、気づけばあまり攻めて来なくなったのでそれが原因かな……。」


こっちからあまり攻めて無いので、獣人たちにとってすれば、警戒する必要が低いのだろう。今は中郷工業団地の警戒も私の管轄になっている。


そっちには、友好的な関係になった風馬の同僚がおり、配下のモンスターを配置して防衛しているが特に侵略されることは無い。


たまに日本人プレイヤーが獣人たちから敗走して、その獣人たちがこっちの領地を奪いにやってくる程度だ。



◇◆◇◆◇◆


そんな中、中郷工業団地周辺で不審な覆面集団が出現するとの情報を得ることが多くなった。


特に見た目が不審なだけで、日本人プレイヤーに対して、残忍な行為をしているわけでもなく、基本的に異世界陣営と対立している感じだ。


特に気にしていなかったが、数日後に私が見回りをしている間にうちの同盟に対して接触してきた。


目の前までその不審な覆面集団の領地が迫ってきた。そして、そこには、情報通りはんにゃの面をした5人組が現れたのだった。


「「「「「…………。」」」」」


相手は全く何も言葉を発しずにただ立っているだけだった。なぜか笑っているのか、体が少し震えるように前後に動いている。


「何用だ?無益な殺生はしたくない。大人しく引き合えせ。」


「「「「……っっううぅ。」」」」


何か様子が変だった。

警戒して少し近づいていく。


「っえ?泣いてる……。」


なぜか相手は泣いているようだった。


「どうした?何か用があるのか?」


そうゆうと、1人のプレイヤーがいきなり丸腰で私を捕まえるがように両手を広げて迫ってきた。


丸腰の相手に対して抜刀するのは、恥ずかしさがあり、私を捕まえに迫ってくる相手を最小限の動きで躱し、相手の足を引っ掛けて転ばせた。


そして、すぐさま相手を拘束して身動きを封じた。


残りの覆面の4人が何かするわけでもなくただ立っているだけだった。そして、拘束した相手の覆面を取ると……。


「っっううぅ、師範ん〜〜〜〜。」


私が手の力を弱めると、相手は拘束から抜け出し、私の胸に飛び込んできた。そして、涙、鼻水でびちゃびちゃの顔が私の服についてしまった…。


知り合いだった。


「静香、久しぶりだな。元気してたか。」


私はその子の頭を軽くなでながらあやすように言葉を発した。


「っばっぃ。はい、元気ですです。うえ〜〜〜ん。」


残りの4人も覆面を外して、こちらに歩いてきた。


全員知り合いだった。


「「「「師範、お久しぶりです。」」」」


「ああ、久しぶりだな。みんな元気そうでなりよりだ。」


そこにいたのは昔の教え子たちだった。


「師範が中郷工業団地でフィールドボスを1人で倒したとの噂を聞いて、どうしても会いたくなって、みんなで来てしまいました。」


「今は葛城門下生のこの5人で同盟を組んで活動しています。」


「それにしても師範は、流石ですね。フィールドボスを1人で倒してしまうなんて…強さは健在ですね。」


「ところで、態々そんな変な格好までして会いにきたんだ、何があった?」


私は今回このように門下生達が私の元に来たことに何かあると思っている。


「……いや特に困った事があった訳じゃなくて、これからも師範に教えを乞いたいのです。」


「………そうなのか。稽古については良いぞ。いつも2人で夜稽古をしているから来ると良い。」


「わかりました。場所は葛城道場で良いのでしょうか?」


「う〜〜ん、道場には入れないだろうから、場所は追って連絡する。」


「わかりました、よろしくお願いします。」


一応、門下生達の要望も叶ったし、私も久々にあいつらに会うことができたので、良かった。


その後、どの程度まで腕が上がっているか、一人ひとり確認のために軽く立ち合いをおこなった。


この世界のためもあるのだろう、結構腕が上がっていた。教え子が成長しているのは率直に嬉しかった。


その後、連絡を取り合って無事一緒に稽古を実施する運びとなった。


そして、初回のサプライズとして、私と覆面をした田村秀樹さんが立ち合いを行った。その後、覆面を外した田村さんを見てみんな驚いていた。


「どうやって治ったんだ?」「あの怪我がなぜ?」などと驚いていた。


後々聞いたことだが、彼らが私に会うために覆面を被っていたのは、感動の涙で顔がぐちゃぐちゃになるのを隠すためにみんなで考えたことだったそうだ。


変態集団が現れたのかと思ってちょっと引いていたのだが……門下生達だったとは…。まあ、これから退屈しのぎで訓練が出来ると思うとそれはそれで良かった。





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おまけ


<風馬派閥>

・恋人 : 2人 ミレーネ、高橋奈緒

・従属配下 : 9人 ミレーネ、ナビル、ジェイド、サミュエル、田村秀樹、高橋奈緒、田中一雄、田中和美、田中美咲



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