第64話 候補者(5)



俺は、中郷工業団地に出没したフィールドボスの元へ向かいながら、田中さんから斉藤和人の情報を聞き出していた。


一言でいえば、


ちょっと消極的な性格だが、仲間思いでサポートもちゃんと出来る人材との事だった。


このフィールドボス戦で、同盟員が次々と殺られてしまったとのこと。



今回助けた恩を使って、どうにか同盟員へ取り込めないかな・・・。と考えていると、ねーちゃんがボスを倒してこっちへやって来た。


「よう、青年大丈夫だったか!?」


「危ないところを助けて頂き、ありがとうございました。僕は斉藤和人と言います。」


「私は五十嵐理沙。こっちは弟の風馬。こっちが仲間のナビルだ。君たちの仲間達を助けられなくてすまなかったな…。」


ねーちゃんの顔が少し曇った。


「……仕方ないです。僕は本当に運良く理沙さん達が来て下さったから助かっただけです…。」


「運も実力の内って言うし、この結果も君の行いの結果だろう・・・・。」


そしてここで、俺が話に割って入った。


「今日は災難だったね。酷な話かもしれないが、同盟員が亡くなってしまった状況で、斉藤君はこれからどうするんだい?」


「今後のことは……。」


「こんな世界だし、すぐにでも対策をしないと不味いと思うよ。誰か頼る仲間か同盟は居ないのかい?」


「……いや、いません。僕はあまり目立つ方ではなかったですし、消極的な性格だったので、いまの同盟員意外と仲の良い人がいませんでした。」


「そうか……。周りの同盟で協力体制を組んでいたりしてないのかい?」


「………。」


斉藤くんは下を向きながら首を横に振った。


ここで、何かねーちゃんが不穏な動きを見せようとしたので、何も喋るなよと、首を横に振ってねーちゃんへ指示を出した。ねーちゃんが何か言おうとしたが、思い止まってくれたようだ。


こういう場合、相手から目的の言葉を言わせてこっちが判断する状況を作りたかった。


少しの間沈黙が流れ、斉藤くんが意を決して話し始めた。


「もし宜しければ、僕を仲間に入れてもらえませんか?僕は【配下】重視でステータスを振っていたので、サポートなどみなさんのお役に立てると思います。助けて頂いた恩にも報いたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。」


斉藤くんが深々と頭を下げてお願いしてきた。



ねーちゃん、ナビル、俺で声には出さないが、笑顔で喜びを共有した。ただ、待ってましたかとばかりに答えると良くないので、一旦、考える素振りを見せ、真剣な顔へ戻す。


「・・・・わかりました。前向き検討しますので、一時的に同盟へ加入下さい。このまま、別れて他のプレイヤーに襲われたら元も子もないでしょうから。」


「ありがとうございます。」


こうして、斉藤くんが一時的に『深緑の妖精』へ加入しようとしたが、同盟離脱後の待機期間(24時間)があるため出来なかった。


すっかり忘れていた…。


仕方がないので、警護の意味も込めて領地を隣接させて次の日まで待ってから同盟に加入してもらうことにした。


「じゃ、今日はこの状態で待機して待ってて!斉藤くんを守れるように俺のモンスターも配置しておくから。明日また来たときに同盟へ一時的な加入って感じでよろしくね。最終判断は、うちのリーダーだの決断となるから。」


「はい。こちらこそ色々とありがとうございました。」


「いえいえ。リーダーには話を通して置くから。じゃまた明日!」


「はい。じゃあまた明日お願いします。」



斉藤くんと明日の約束を取り付けて、俺たちは拠点へ戻った。


「今日は彼にとって辛い事があったから、1人にしておいた方が良いかな…。」


まあ、斉藤くんが同盟に加入するかは、涼真さんの了解を得てからになるが、田中さんのオススメ物件だし、まあ問題ないだろう。


他の同盟員の候補者たちもチェックして良かったら、そっちも仲間に勧誘すれば良い話である。


事前に涼真さんにも同盟員の候補者の救出に行く事は伝えてあるし、良い人材であれば、直ぐにでも同盟へも誘うとも言ってあるので問題ないはずだ。


拠点へ戻ってから、ここまでの斉藤くんとのやり取りを涼真さんと情報共有した。


次の日、斉藤くんには、涼真さんと面接してもらって、それで最終判断となる。






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おまけ


<風馬派閥>

・恋人 : 2人 ミレーネ、高橋奈緒

・従属配下 : 9人 ミレーネ、ナビル、ジェイド、サミュエル、田村秀樹、高橋奈緒、田中一雄、田中和美、田中美咲


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