第63話 候補者(4)


〜斉藤和人side〜


ボスはそんな僕にとどめを刺すためにゆっくり接近してくる。最後にみんなの分も一矢でも報いたく残りの右腕で剣を構える。


「こんちきしょ〜!」


そのとき突然、僕の目の前に凄い勢いで可憐な女性が現れて、ボスの攻撃を受けようとしていた。


「危な〜〜い。」


しかし、ボスの爪での切り裂き攻撃は空を斬り、その女性が逆にボスへ一撃を食らわせていた。





〜理沙side〜


田中さんから連絡を受けて中郷工業団地へ向かうと辺りは真っ暗だった。


この時間帯にこんな真っ暗となると思い当たるのは1つだけだ。そう、フィールドボスの出現である!


「同盟員候補を救出するために、すぐに現場へ向かう!」


田中さんの連絡に対して、チャットでみんなへ返信を入れた。


新たな同盟員の候補者を守るというのはただ建前であって、本当は1人でフィールドボスと戦ってみたいのだ!


「よし。ワクワクしてきた!」


田中さんとやり取りを行いフィールドボスの場所を確認する。やはり、巨大な木のバケモノと同じく、他人の領地に侵入できて移動もできた。


田中さんから教えて貰った場所へ急行すると、ボスの元に着いた時には1人のプレイヤーが結構ピンチな状況に陥っていた。


もしかすると候補者がもうやられているかもしれない…すでに数人が動かない状態で倒れていた。


どうにかギリギリで生き残りのプレイヤーとボスの間に割って入った。



ボスの攻撃を躱し一撃をお見舞いした。以前の巨大な木のボスよりは、硬くなくこちらの攻撃も多少通る。


しかし厄介な事にボスは多少の怪我なら傷が塞がっていく……。


少しの間、ボスと攻防を繰り広げたが、やはり私の攻撃では致命傷を与えられず、徐々にボスの傷が回復していく。驚異的な回復能力である・・・。


ボスはボスで、いくら攻撃しても私に攻撃を当てられないのでイライラしているようだ。


そして、私から視線を外し、生き残りのプレイヤーを見つめて掛けて行った。よく見るとそのプレイヤーは、かなりの重傷を負っており、動けないでいた。


「しまった!」


ボスの後を追い攻撃を仕掛けようとしたら、いきなりボスが予想しない動きで反転して私へ攻撃を仕掛けてきた。フェイントだった。


フィールドボス級になると知能が高く上手く誘われてしまい、私は不意を突かれてモロに一撃を受けて吹き飛ばされて、木に激突した。


一瞬息が詰まる。

肋骨にヒビが入ったのが自分でもわかる・・・。


そこからボスの怒涛の攻めが始まった。何とか避けるが次第に息が苦しくなり、反応速度も落ちてしまった。


その時、風馬がナビルと一緒に駆けつけて、風馬が重傷のプレイヤーを保護した。


そして、ナビルはボスへ向かって一気に迫る。ボスはナビルの気配を察して私から距離を取った。


「リサ大丈夫か?結構やられてるな。」


「ちょっと油断した……。厄介なのが、あのボスは少しの傷なら回復するのよ。」


「自己再生があるモンスターか、それは厄介だな。再生出来ないくらい大ダメージを一気に与えるしか手はないな。」


ナビルと話していたら風馬が駆け寄って来た。


「ポーションは1つしか持って来て無い。ねーちゃんまで手傷を負ってるなんて想定外だからな…。すまんが、重傷そうなあっち和人にポーションを使って良いか?」


「ああ、私は問題ないからあいつに使ってやれ。」


「助かる。餞別にこれを貸してあげるよ。貸すだけだからな。後でちゃんと返せよ。」


風馬がルーンブレードとかいう剣を渡してきた。その剣を手に取ると何か引き込まれるような魅力を感じた。


風馬は重傷を負っているプレイヤーの元へ行きポーションで傷を回復させたようだ。


「ナビルここは私1人でやらせてくれ!」

「……わかったよ。一つ貸しな!」

「それでいい、恩にきる。」


私1人でボスと向き合うと、ボスもこっちを向き構えた。ボスが一飛びでこちらとの間合いを詰めて、両腕で引き裂いてきた。


ギリギリでその攻撃を左へ躱して、ルーンブレードを下から振り上げた。それと同時にボスの右足がボトリと落ちた。


「ギャギャギャーー!」ボスが物凄い声を上げる。


ボスの傷口は少し光って回復しているようだが、腕が再生する様子はない。


それを確認すると、こちらから仕掛ける。右足を失ったボスは明らかにスピードが遅くなっていた。細かな連撃でもボスには深々とした傷ができる。


そして、最後にボスの両方の首を落として終止符を打った。



良い訓練にはなったが、自己再生だけが厄介なただの獣だった・・・。





〜風馬side〜


ほんの少し時間は遡る。


すでに田中さんから情報を聞いており、この生き残っている人が、同盟員の候補者である斉藤和人だと知って、俺はポーションを持って行った。


「大丈夫ですか?」


「正直、かなりヤバいです。左腕腕の感覚が無くなってきました。折角助けに来て頂いたのに、もう無理そうです。巻き込んでしまってすいません。」


斉藤くんはかなり痛みを堪えながら話していた。


「ねーちゃんがあの剣を持てばあのボス程度なら大丈夫ぶでしょう。」


「でもさっきまで苦戦していて、僕のせいで怪我までしてしまっているんですよ。助けに行った方が良いのでは!」


「まあ、見てて下さいよ。そうだ、その前にこれを飲んで下さい。」

「これは?」


「ゲームでお馴染みのポーションですよ!傷が治りますから。」


「っえ!それは貴重なのでは?」


「まあ、いいから飲んで、そのままじゃ死んでしまいますよ。」


そう言って、多少強引に斉藤くんにポーションを飲ませた。すると、斉藤くんの傷が瞬く間に回復したのだった。


「っえ、これは一体・・・それよりこんな凄い物を頂きありがとうございます。 あと、あの女性は大丈夫でしょうか?」


俺と斉藤くんはねーちゃんが戦う状況を見ていた。凄い動きで戦う姿が目に飛び込んで来た。そんな姿を驚いた様子で食い入るように見ている彼がいた。


そして、最後にねーちゃんがボスの両方の首を飛ばして終止符を打ったのだった。





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おまけ


<風馬派閥>

・恋人 : 2人 ミレーネ、高橋奈緒

・従属配下 : 9人 ミレーネ、ナビル、ジェイド、サミュエル、田村秀樹、高橋奈緒、田中一雄、田中和美、田中美咲



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いつもご愛読ありがとうございます。


現代ファンタジー週間ランキング【43位】となりました。これも皆様のお陰です。重ねてありがとうございます。


今後の執筆活動の頑張り甲斐のためにも、お手数ですが、★★★評価およびブックマークを頂けましたら幸いです。


これからもよろしくお願いします。



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