第61話 候補者(2)




〜斉藤和人side〜


僕達の同盟は、2人(僕、一郎)と3人(昌光、愛華、彰)の2部隊に分かれて順調に獣人の領地を「占領」している。


僕の配下モンスターはどちらの部隊にも配置させているので、ステータス画面越しなら隣の戦闘の状況を把握できる。


そして、隣の領地で戦闘している仲間が劣勢になっている場合、僕は時折、解放領域から抜け出して、隣の領地へ援軍を送ってフォローなどをしている。


ただ、そんなとき辺りが嫌な雰囲気に包まれ始め、だんだんと暗くなり始めた……。

急いで一郎が1人で戦っている解放領域へ戻った。


「一郎。そ、そと、外の様子がおかしいから、そろそろ拠点へ戻った方が良いかも知れない。」


いつも以上に声を出して、解放領域の外の状況を一郎へ伝えた。


「どうしたんだ。和人がそんな大声出すなんて!!」

「そんな事はどうでも良いから、早くこの場所を離れよう。何か嫌な予感がするんだ。」


いつになく大きな声ではっきりと話せている僕に一郎が少し驚きつつもすぐさま納得してくれた。


「わかった。この場所はモンスターどもに任せて、俺たちは一度離れるか。」


「うん、その方が賢明だと思う。一応隣の昌光たちにもチャットで連絡してある。」


僕と一郎は急いで占領中の解放領域を出て、昌光たちを待っていた。


「どんどんと暗くなってくるな……どうなっちまうんだ。」


その時、昌光たちも占領中の解放領域から離脱して、地上へ姿を現したので、合流できた。


「和人、この天気はどうしたんだ?さっきまで晴れてたのに急にこんなに暗くなって……。」


「僕にもわからないんだ。いきなり暗くなり始めて、嫌な予感しかしないよ。」


「和人、お前も結構しゃべるんだな。」

「ときと場合によるよ。」


僕自身でもこんなにはっきりと自分の意見を言えるとは思っていなかった。

それだけ、切羽詰まっているのだろうと思う。




次の瞬間、近くに2首の獣の巨大なバケモノが出現した。


「「グワァァァァァオーーーーーーーーン」」


「何だこの大声は!」「うるさぁー」みんなが一斉に耳を塞ぐ。

「アレだ……。」


僕が指を指した方をみんなが向くと、みんな言葉が出ずにただ立ち尽くすだけだった。


次の瞬間バケモノがこっちへ迫って来る。

すぐさま配下のモンスターたちを壁として配置する。


「みんなボーとしてないで動け!逃げるぞ!」


僕はいつになく冷静な判断が出来てみんなへ指示を飛ばしていた。


「「「うわー。」」」一斉にみんなで逃げ始める。


近くにいた他プレイヤーたちはこのバケモノの攻撃を次々と受けていた。

果敢にバケモノの攻撃を避けて反撃をしている者もいるが、大したダメージを与えられないでいる。


明らかにバケモノの姿を見てみんな萎縮しており、全力の半分の力も出せていない感じだ。その他は逃げるのに必死になっている。


他のプレイヤーも僕と同様に配下モンスターをバケモノとの間に入れて壁役にして時間を稼いでいる。


「愛華、大丈夫か?」


「うん大丈夫。それにしてもあのバケモノは何なのよ!」


「俺にも分からない。分かるのは明らかにヤバいバケモノってだけだ。」


「みんな大丈夫か?今のうちに遠くへ逃げるぞ。」


「それにしても、和人が声を出してくれなかったら不味かったな。」


「確かにありがとうね、和人!」


みんなからお礼を言われた。

何故かものすごく達成感が出てきた。


「いや、必死だっただけさ。」


さっきの場所からかなり離れられた。

逃亡することに必死になって全然気にして無かったが、他人の領地を普通に通過している事に今更ながら気づいた。


「そういえば、ここって他人の領地だよね?何で通れるんだろう?」

「確かになぜだ……?」


僕の問いかけにみんなハテナマークが頭に浮かび、安堵からかクスクスと笑ってしまった。


「じゃ、もっと離れて早く拠点へ戻ろう。」


昌光がそう言って歩き出した瞬間、何かバスケットボールほどの丸い何かが僕の後方から頭上を超えて、前方へ向けて飛んで転がった。


と同時に後ろからドサッと人が倒れる音がした……。


「「グゥルルルーー。」」


後ろを振り向くとまたが目の前に飛び込んできた……。


そして、僕達はさっきのバスケットボールほどの物が何なのかを知ることになった・・・・。


それは、愛華の頭だった…。





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おまけ


<風馬派閥>

・恋人 : 2人 ミレーネ、高橋奈緒

・従属配下 : 9人 ミレーネ、ナビル、ジェイド、サミュエル、田村秀樹、高橋奈緒、田中一雄、田中和美、田中美咲



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