第52話 巨大な木(2)
〜風馬side〜
巨大な木なバケモノがいる暗がりの奇妙なエリアについて、多少わかってきた事がある。
①プレイヤーは、領地縛りの概念が無くなり、自由に移動が出来る。
②プレイヤーの移動可能範囲は、約直径約2kmほど(巨大な木を中心に半径約1km)。
③1部隊のみ出撃可能。
④プレイヤーに対して攻撃ができない。
※プレイヤー同士の攻撃には防御壁?が発生して防がれてしまう。
現時点でわかったことはこんな所だった。
現在、俺、ミレーネ、ナビル、ヒデさん、ねーちゃんの5人+モンスターたちで巨大な木のバケモノを偵察に来ている。
ねーちゃんが勝手に1人で突っ込んで行きそうだったので、結局心配になりみんなで海岸から南中郷駅方面へ人の波とは逆方向へ移動している。
南中郷駅を過ぎ、線路を渡って更に少し進むと田園が広がっていた。
そして、その田園の中にヤツはいた。
「そっちの世界だとこんなモンスターはいるのか?」
「私たちの世界でいうなら、ときどき突然変異で出現す亜種のモンスターに近いかしら…。」
「ミレーネの言うと通り突然変異の亜種かもな。もしくは、ダンジョンの特定の階で発生するフィールドボスに似てるな。」
「確かにダンジョン内のフィールドボスって感じの方が当っているかもね。」
「そうだろ!」
「亜種とかフィールドボスか…まあそれが正しいんだろうな。」
ミレーネとナビルが答えてくれた。
「どのくらい強いのかしら?C級モンスター以上は強いわよね?」
「そうだろうな。C級上位からB級ってところか?」
「それは楽しみね。」
「ねーちゃん戦う気満々だな…。」
「師範流石です。微力ながら俺も手伝います。」
「うん。よろしく頼む。」
ねーちゃんとヒデさんがフィールドボスへ挑む話をしている。やっぱり、戦闘狂はこれだから・・・。
「ちょっと待ってくれ。ねーちゃんまさかアレと戦うのか?」
「当たり前でしょう!あの木のバケモノは倒し甲斐があるわよ絶対!」
「……そりゃそうだろうが、少し様子を見てからの方が良くないか?」
「フーマ諦めろ。リサはこうなったら絶対に1人でも行くぞ。だったら、監視役でついて行くべきだ。」
俺とねーちゃんのやり取りにナビルが諦めろと言ってきた。確かにこうなってしまったねーちゃんには何を言ってもダメなのだが・・・。
「ナビル・・・お前も戦いたいだけだろう……これだから戦闘狂たちは困る…。まあ仕方ないから俺たちも付き合うが、ヤバかったらすぐに引き返すぞ!ねーちゃんそれで良いよな!?」
「わかったわよ。仕方ないから危なそうな時はいうことを聞いてあげる。」
ねーちゃんを1人で行かせるわけにもいかないので、俺たちもねーちゃんについて行くことになった。
田園地帯なので、周りに隠れるところがない。フィールドボスからもこっちの姿が丸見えである。
奇襲をかける事も出来ずに正面から対峙するしかない状態だ。そのため少しでも死亡リスクを下げるため、ボスの動きを調べておきたかった。
「申し訳ないが、ねーちゃんのモンスターたちを小手調に木のバケモノへ向かわせて、相手の出方や動きを確認しないか?」
「風馬のモンスターを向かわせるのは勿体ないか…わかったわ。」
そう、俺が連れてきたモンスターはD級であり、ねーちゃんのモンスターは、F級であるので、仕方ないことである。
「みんなもアイツを自分が相手すると想定して動きを観察しておいてくれ。何か気付いた事があれば共有よろしく。」
「「「「了解(わかった)。」」」」
モンスターを10体ほどの10部隊に分けてフィールドボス(巨大な木のバケモノ)を囲むように配置した。
そして、順々に相手の出方を伺うように、配下のモンスターをけしかけた。
フィールドボスは遠距離の攻撃手段を持っていないのか、ある一定の距離になるまで攻撃をしてこなかった。
ボスは初めのゴブリン20体に対して、手のような大枝を左右に力一杯振り回し攻撃してくる。
または、大枝を上に振り上げ力の限りゴブリンども目掛けて叩きつけた。
渾身の一撃といった感じだ。
更にフィールドボスが少し動きを止めたと思ったら、次の瞬間、モンスターのいる真下から木の根が突き出てきた。
それによりゴブリンたちは光と共に消えてしまった。
フォールドボスの移動速度はそこまで速くなかった。それこそ幼稚園生が走るくらいの速度だった。
ゴブリンたちがフィールドボスの攻撃射程圏内に入ったら攻撃を仕掛けてくる感じだ。どちらかというと待ちのタイプの敵のようだった。
大体の攻撃パターンを把握したので、一旦浜辺へ戻って体制を整えることにした。
奈緒を加え、配下モンスターをD級→E級へと入れ替えた。
というのも、フィールドボスは巨大な木のバケモノなので、木といえば弱点は炎だろうとの推測で【魔力】特化で魔法攻撃の威力が高い奈緒の参加だ。
あとフィールドボスの攻撃を食らうと例えD級モンスターでも一撃で消えてしまいそうなので、壁役だったらE級でも代わりないと判断した。
ねーちゃんも一応新たな配下を補充した。
「ねーちゃん、どう戦う?」
「まずは小細工無しで正面からやってみたいわね。」
「やっぱりそうなのね…。死なないと思うけど気をつけてくれよ。ヤバそうなら即後退だ!」
「わかってるわよ。田村さんとナビルも来るわよね?」
「もちろん俺も参加するぜ。」
「師範にお供します。」
ねーちゃん、ナビル、ヒデさんの3人は正面から戦う気満々の様だ。この3人なので大丈夫だろう。
万が一の事があっても、生きていればポーションでどうにかなるだろう!
「じゃあ、俺たち(ミレーネ、奈緒含む)は援護するわ。ミレーネと奈緒は遠距離から攻撃だぞ。」
「うん、任せて。」
「わかった。でも、理沙さんたち大丈夫かな?」
「ねーちゃんたちは大丈夫だ。本当にヤバそうなら俺が連れ戻す。」
「ならいいけど。」
奈緒がねーちゃんたちの心配をしているが、フィールドボスの動きを見た限り大丈夫だろう。
一撃の攻撃力は相当なモノだがあの程度のスピードなら、ねーちゃんたちが捕まる事は無いと思う。
数時間後、準備を終えて再び田園へやって来ると、フィールドボスは集落の方へ向かって移動しているようだった。
「それじゃ、行くよ。」
「オウ。」
「わかりました。」
ねーちゃんたち3人がフィールドボスへ向かって駆け出した。俺は慌てて気休め程度かも知れないが、【支援スキル】を使用して、ねーちゃんたちを追う様に俺たちも走り出した。
〈対戦状況〉
俺 6人 vs 敵 巨大な木のバケモノ1体
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おまけ
<風馬派閥>
・恋人 : 2人 ミレーネ、高橋奈緒
・従属配下 : 6人 ミレーネ、ナビル、ジェイド、サミュエル、田村秀樹、高橋奈緒
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いつもご愛読ありがとうございます。
現代ファンタジー週間ランキング【49位】となりました。これも皆様のお陰です。重ねてありがとうございます。
今後の執筆活動の頑張り甲斐のためにも、お手数ですが、☆評価およびブックマークを頂けましたら幸いです。
これからもよろしくお願いします。
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