第44話 水沼ダム(3)
〜櫻井正明side(共同革命軍)〜
『深緑の妖精』と会談してから2日後。
この日は彼らから連合に加入するかの検討結果をもらう事になっている。
相手もここまで生き残っており、バカではない。連合に入ればそれだけで大きなメリットがあるので、何か加入の条件が出るかもしれないが断られることは無いだろう。
最近は多少余裕を持ってエルフ達ともやりあえており、領地の維持も問題ない。やはり連合の人数が増えてきて余裕が出てきたのが大きい。ただ、人数が多くなると統制を取ることが難しくなってくるデメリットもある。
俺たちも誰でも連合に加えようとしていない。ある程度常識のある者たちを選別して加入させている。
ただ、事前調査を行い振るいに掛けてから直接面接し加入した者たちでも、時間が経って徐々に素が出てくると想定と違った人物だったりする。こういった輩が一定数いるのは、組織になるとどうしても仕方のないことだ。
更に人数も多くなったことで、大津港方面への領地拡大も少しずつ進めている。もともと後から加入してきた連合員達が大津港方面に拠点を持っており、それがキッカケではある。
『共同革命軍』は、水沼ダム北部を中心に東西に長い領土を保有しており、中々の規模になってきた。
◯ : 北茨城市(他者領地+未開拓地)
△ : 高萩市(他者領地+未開拓地)
◉ : 深緑の妖精
◆ : 共同革命軍
【地図】※横向き推奨
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約束の時間になって『深緑の妖精』のメンバーが予定の10分前に先日と同じ水沼ダムの辺りにやって来た。
さすが日本人、時間には余裕を持って行動してくれて、少し好感度が上がった。テーブルやイスを多少多めにセッティングしてあるが、メンバーも先日と変わらなかった。
「こんにちはお待たせしてすみません。」
「いえいえ、私たちもさっき来たばかりですから、気にしないで下さい。」
五十嵐さんが挨拶してきた。そして、みんな席に着いた。こちら側も先日のメンバーと変わりない。
そして、相葉が先日と同じ様に『共同革命軍』の方針などを改めて説明した。
その後いくつか確認等を行い、あとは相手の結論を聞くだけだになった。
「ご説明ありがとうございました。私達『深緑の妖精』は、今回連合への加入を見送らせていただきたいと思います。いろいろとご説明いただいたにも」
五十嵐さんの思いもよらない回答を聞いて話を遮って質問してしまった。
「この連合への加入は決して悪く無いのにどうして見送りになったんですか?正直、多少条件が出てくると思ってましたが、加入していただけると思っていました。理由を教えていただけませんか………?」
「連合への加入に関しては見送らせていただきましたが、違う提案があります。話が途中だったので説明できませんでしたが……。」
「……わかりました。まず、一旦そちらのお話をお聞かせ下さい。」
「ご理解ありがとうございます。先程も申し上げた通り、連合への加入は見送りさせていただきたいと思います。これにはいくつか理由がありますが、最も大きな理由は……私達の同盟にエルフと獣人の異世界人がいる事です。」
五十嵐さんの言葉に驚いてしまった。
安倍や相葉も同じ反応だった。
そして、五十嵐さんは一拍間を置くと話を更に続けた。
「『共同連合軍』さんはエルフ達と戦闘を繰り広げておりますので、異世界人との共存……特にエルフと一緒に行動するとなるとかなりの抵抗があると考えてます。
・・・・・因みに何があろうとこのエルフと獣人たちはすでに我々の大切な仲間となっております。私自身もかなりの信頼を寄せておりますし、これからも頼れる存在です。」
「しかし、異世界人ですよ。・・・・本当に大丈夫なんですか?」
相葉が疑問を投げかける。
「他のエルフや獣人たちがどうかわかりませんが、私達はうちにいる仲間を信用してます。普通の人間と一緒ですよ。人種・種族によって信用出来るできないは決まらないと思います。その人自身の人柄などによると思います。
だって、地球にも様々な人種がいますが、違う人種の人が全て悪だとは限りませんし、それと同じと思います。」
「それはそうですが……確かに我々でもエルフと聞くとこんな状況ですので・・・・、異世界人を受け入れるのはたぶん時間が掛かると思います。家族や親友、知人を亡くした者もおりますので・・・。」
「……理由はわかりました。残念ですが、連合への加入は断念ということで、こちら側も承知しました。・・・・ところで、先程のこちらへの提案っていうのは何でしょうか?」
五十嵐さんの返答に相葉が納得した。
そして、俺は相手の提案を聞くのだった。
「………協力体制を築きませんか?折角、今回このような申し出をいただいたので、そのまま断るのは双方に取っても勿体ないことだと思いまして…。」
「……連合と協力体制は何が違うんですか?結局の所一緒のような気がします。それなら連合への加入でも良いのではないでしょうか?」
「連合とまでなると交流が多くなり過ぎると思っております。時間が経つにつれ異世界人と仲良くしている我々だけ、連合内で浮いてしまう可能性が高いと思います。・・・要は距離感が全く違うということでしょうか。」
「協力体制の内容しだいですが、それだと双方にどんなメリットが出てきますか?」
「細かな内容は詰める必要がありますが、双方対等な関係であまり強制力を持たない内容にした方が長続きすると思います。そちらのメリットとしては、主に3つほどでしょうか。」
「メリットが、3つもあるのですか・・・興味深いですね。」
そうゆうと、五十嵐さんが3つのメリットについて、説明し始めた。
「・1つ目が、南側からの侵略の壁役を得る。現在、ここから南側に対してこちらの同盟がおります。私達がいる限りそちらに獣人たちの攻撃が届く可能性がかなり低くなると思います。
・2つ目が、高萩市などの情報入手。私達は幅広く多処に領地を獲得しておりますので、その情報網で得られる情報を共有することができると思います。
・3つ目が、強者のサポートを受けられる。ここにいる風馬くんはすでにレベル5を越えており、クラスチェンジしております。ピンチの場合に多少共闘が可能かと思います。以上が、簡単ですが現状考えられるメリットですね。」
五十嵐さんは考えられるメリットを簡単に説明してくれた。
嘘を言っているようには感じない。特にこっちにもデメリットは感じられないし、折角、近隣の同盟なので出来れば友好な関係を築いておきたい・・・。
話が拗れて『深緑の妖精』と揉めて敵対関係になってしまったら、防衛に戦力を割くことになりエルフ族との戦いに支障が生まれる可能性がでる。
「わかりました、協力体制を組む方向で調整させて下さい。ただ、最終決定は連合内で幹部たちと相談したいので、一旦持ち帰えられせいただきます。また、2日後の13時に返答させて下さい。その際に協力体制の細かな内容を詰めさせて下さい。」
「わかりました。その方向でよろしくお願いします。」
「今日は私の予想とは違った形となりましたが、良い方向に落とし所を持っていけそうで良かったです。ありがとうございました。」
「こちらこそ、良いお返事をお待ちしております。ありがとうございました。」
互いのメンバーもあいさつを行い、『深緑の妖精』を見送った。
〜風馬side〜
後日、『共同革命軍』と良い方向で協力体制が築けたとの連絡を涼真さんから受けた。
これで北側の防御に戦力を割かなくて良いので助かる。俺たちも協力体制を組む立場なので、頑張って南側から獣人たちの侵略をおさえる必要があるな。
協力体制の内容に不可侵の内容も含まれたようだ。これ以上水沼ダムの周辺を開拓するつもりはないので問題ない。
そういえば、水沼ダムはバス釣りで昔何度か訪れた事がある。
いろんなポイントがあって一日中釣りをした。
因みに水沼ダムでは50アップの大型バスをあげた事がある。釣り以外にも近くのキャンプ場にもお世話になった。田舎のザ・自然って感じだ。
家にアウトドアの道具が置いてある。こんな世界になる前も中々仕事が忙しくてキャンプを楽しめていなかった。
「何かの機会にキャンプしたいな。」と思いつつ、水沼ダムを後にしたのだった。
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おまけ
<風馬派閥>
・恋人 : 2人 ミレーネ、高橋奈緒
・従属配下 : 6人 ミレーネ、ナビル、ジェイド、サミュエル、田村秀樹、高橋奈緒
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