第43話 水沼ダム(2)
〜相葉純一side(共同革命軍)〜
「……同盟員の数は置いといて、仲間は9人ほどになりますね。」
それを聞いて、相手の幹部3人がピクッと動いた。
五十嵐さんの返答を聞いてちょっと驚いていた。
小さい同盟と思っていたが、『深緑の妖精』には9人の仲間がいるようだ。ただ同盟員と明言しておらず仲間と表現しているので、従属契約をしてプレイヤーを引き込んだのだろう。
更に華川町が拠点かと思っていたら、高萩の北部にも拠点を持っているとのことだった。
ここで連合に引き込めれば、他拠点へ進軍できるし、戦略の幅が広がる可能が大きくなる。この機会に是非とも仲間に引き込みたい。
「そうなんですね。仲間が9人だけだと防衛等の手が足らないのでは無いでしょうか?」
「我々は対応できる範囲で地道にやっておりますので、・・・・お陰様で今のところ何とか対処できております。 特に華川町の北側のエルフ族を『共同革命軍』さんが対処してくださっているのが大きいです。」
私の問に五十嵐さんが答えてくる。
「まあ、うちも南側の獣人達の進軍を『深緑の妖精』さん達が防いでくださっているのでお互い様ですよ。」
そして、そろそろ世間話を終わらせ本題に入った。
「そろそろ本題に入らせていただきます。五十嵐さんはうちの連合に興味がありませんか?」
「う〜ん。連合自体は興味を持っております。数は力ですので、協力者を集め集団で敵に打ち勝つのは、今後必要だと思っております。ただ、『共同革命軍』さんの方針や条件、メリットなども分からない段階で、その質問にお答えしようがないですね・・・・。」
「まあ、そうでしょうね。方針・目的は、日本人が安心して過ごせる領土を確保することに尽きます。そのために互いに協力して共通の敵の殲滅や装備・物資の共有・供給などもおこなってます。更に共に成長するために領地の分配などもしています。」
ここで、私に続き、櫻井さんが補足で話しをした。
「補足するなら、身の安全を確保できるというメリットもあります。今ではうちも26人の大所帯となりました。強力な高レベルの仲間がたくさん居ますし、これまでエルフ族との戦闘経験も十分にあります。
他の異世界人の種族が相手でも敗けるつもりはありません。因みにうちは半分近くがすでにレベル4となっており、残りの殆がレベル3です。・・・みなさんのレベルはおいくつですか。」
そうするとここで初めて葛城さんが口を開いた。
「レベルの情報はそのまま同盟や連合の強さを示す基準ですので、正確にはお答えできませんが、とりあえずクラスチェンジした者がいるのは事実です。」
その言葉に私たちの口が開いてしまった。こちらの優位性を示すために櫻井さんがレベルの話を出したが、逆にやり返されてしまった感じだ・・・。
その後も五十嵐さんたちはこちらの連合方針・目的・メリットなどを聞き、時々質問をしてくる。
「『共同革命軍』さんのことは、だいぶわかりました。この場では、判断しかねるので一旦持ち帰って仲間たちと検討させて下さい。」
「……わかりました。できればこの場でご判断いただきたかったですが、重要なことですので仕方ないですね。因みにご返答はいつ頃いただけますか。」
「そうですね。……明後日の昼過ぎ13時まで時間をいただけますか。その時間にこの場所を再度伺います。」
「・・・・わかりました。では、良いお返事をお待ちしております。」
そういって、『深緑の妖精』との会談が終了したのだった。果たして、明後日に良い返事が聞けるのだろうか。
うちの同盟方針やメリットは十分に説明できたつもりだが、果たしてそれを相手がどう捉えるかどうかだろう。クラスチェンジしている者がいるという時点で、ポーションの入手も出来ているはずだし、・・・・逆にポーションの入手をしたい・・・。
それに単独での戦力で見るとあっちが上かな・・・、総力戦ならうちが勝つだろうがな。そこをどう見るかだろうな。
明後日、答えが出る・・・。
〜風馬side〜
『共同革命軍』との会談が終了した。
一度、ミレーネたちも含めてみんなに集まってもらって、状況を報告した。
一晩、各々で考えをまとめもらい明日話し合う事になっている。
次の日13時に打合せだ。
打合せの日、当然のごとく集まるのはウチのリビングであり、時間10分前には既に9人全員が集合していた。そして、珍しくねーちゃんが初っ端話し始めた。
「みんな揃っているわね。ちょっと早いけど、これから『共同革命軍』の連合へ入るかどうかの会議を始めるけど、一応決め事のおさらいね。 まず、みんなで意見交換を行い、その後に採決を取る。ただ、採決を取るけれどもその結果はあくまで参考で、最終決定はリーダーである涼真が決定する。これでイイわね。」
みんなそれぞれ「「「はい(うん)(おう)(了解)」」」などと肯定の返答をする。
「因みに私はこの連合加入には反対よ。理由は日本人が安心して過ごせる領土の確保って言うところかな・・・。」
「私も理沙さんの意見と同じです。日本人って所に引っかかってます。」
ねーちゃんと奈緒が答えた。
「俺もまだ無理して仲間を増やす必要は無いと思う。連合までじゃなくて……う〜ん、もっと違う形で協力体制を築ければいいと思う。まあ、そんな都合が良いことを相手が受け入れてくれるかわかんないけど・・・。」
「確かにそんな形を取れるなら、何かの条件に縛られることが無いからいいかもね。」
「そうだね。わざわざ協力体制を提案してくれているのに、折角の縁を切るのは勿体ないと思います。」
「俺も風馬くんの考えに近いかな。いま連合と組んでしまうとエルフたちとの戦争にも強制参加させられる可能性が出てくると思う。そうなると、現在の領地を防衛する戦力が無くなってしまうと思うんだ。」
俺の意見にねーちゃん、奈緒、ヒデさんが賛同してくれた。
「確かに連合を組むと、北側のエルフ達との戦闘にも駆り出される可能性があるね。ミレーネやナビル達はどう思う?」
「私はちょっと怖いかな。あの連合はエルフ達と戦闘しているから、・・・・どうしても私に対して悪いイメージしか無いと思うから怖いわ・・・。たぶん仲間や恋人などが殺されてしまっていたら・・・・だから、出来れば組みたく無いわ。」
「俺たち3人は、『反対』って結論がでた。その連合の奴らと全く接点が無いからなんとも言えないが、信用できるか分かるまでは、フーマ達が認める人族以外と極力組みたくない。」
「特に僕達は獣に近い見た目なので、多数の人と共存するとなると心配ですね。やまり、人族は見た目で僕達を軽蔑する人が大半でしたからね。こちらの世界の人たちは、どうか知りませんが、まだ抵抗があります・・・。」
更に俺の問に、ミレーネ、ナビル、ジェイドが自分たちの思いを話した。
その後、いろいろと意見交換をして、気付けばすでに17時を過ぎていた。約4時間近く話し合いが続いていたことになる。そろそろこの辺りで結論を出して明日に備えるように話を誘導した。
多数決では、・・・反対多数だった。
最後に涼真さんから、最終方針に関しての話が始まった。
「長い時間、会議に付き合ってくれてありがとう。みんなの意見は十分にわかりました。それを加味して『深緑の妖精』として、今回の連合への加入は…………『断る』ことにします。ただ、こういった縁は中々無いので、可能な限り協力体制を整えられるように調整したと思います。」
「よかった。」「わかった。」「了解です。」などみんなが望んだ方向で結論が出たので安堵している。
明日この内容を伝えて、相手がどのような態度に出て来るかが心配だな。
上手く良い落とし所を得られることを祈るだけだ。
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おまけ
<風馬派閥>
・恋人 : 2人 ミレーネ、高橋奈緒
・従属配下 : 6人 ミレーネ、ナビル、ジェイド、サミュエル、田村秀樹、高橋奈緒
<他作品>
最強のクズ職〜てめぇら見てろよ召喚士だがこれからは俺のターンだ〜
https://kakuyomu.jp/works/16817330647505909489
よろしければ、ご覧ください。
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