第39話 審判の日(1) <2031年4月>


ヒデさんが仲間になってから1ヶ月後。


そういえば、ヒデさんも俺の家を最初見たときは驚いていた。みんな同じ反応だ。


ヒデさん用に個別の家を用意してあげ、特別に欲しいものがあれば、カスタマイズをしたりしている。キッチンはデフォルトのものを設置してある。自分で簡単な料理を作るのには、十分な設備だと思う。


なお、夕食は、情報共有や日々の報告事項をおこなったり、親睦も深めたいと思っているので、基本的に俺の家のリビングで仲間のみんなと取ってもらうことにしている。もちろん、ホワイト企業?なので、労働(戦闘)は、9−17時としている。

突発的な戦闘がなければ、この労働条件?を崩すつもりは毛頭ない。


俺の家のリビングで食事することは、従属配下が増えても徹底するようにしたい。

あまりにも人が多くなってしまったら、どうするか考えるが・・・それは、今後起こったときにでも考えれば良い。


コミュニケーションは大切だ。

どうせ仲間になったのなら、良い関係を築きたい。主従関係は時に必要だが、いつも張り詰めた空気だと自分も相手も互いに疲れて、無理が出てしまうと思う。


因みに食事は自分たちで作ったり、食堂の品を出前形式で運んでいる。

食堂の食事は、和洋中と様々なメニューが用意されている。ゴブリンシェフ達もかなり料理が上達している。料理人も既に100体以上になっている。まあ、配下数千人の食事をすべてになっているので、そのくらいの人数になっても良い。というか、少ないかもしれない。



ヒデさんは、風呂、娯楽施設なども俺の家を自由に使って良いことにしている。

あんな多大なDPを消費して作った施設なので、保養所感覚でみんなにドシドシ使ってもらいたい。ただ、2階にだけは入るのを遠慮して貰っているのは、まあ皆さん察してほしい。


たまにねーちゃんと涼真さんも遊びに来ているし、仲間とのコミュニケーション作りの一環として、風呂や娯楽施設などを活用してくれているので、本当に創造して良かった。相当DP使ったからね!!



当初、ヒデさんが仲間に加わったことをねーちゃん達にも連絡したら、早速、ヒデさんはねーちゃんから呼び出しを受けていた。

ヒデさんには、自由時間は好きにして良いと連絡してあったので、すぐに葛城道場へ移動して、2人して剣術の稽古をしていたようだった。


ねーちゃんも俺と同じく、ヒデさんの事を気になっていたようだ。

剣術の才能があって、高段者だったヒデさんがその道から外れてしまうことを勿体ないと言っていたのを思い出す・・・。



〜田村秀樹side〜


あの6年前の交通事故で、俺は家族を亡くし後遺症の残る体で社会の厳しさを痛感していた。持ち前の忍耐力でリハビリを乗り切り歩けるようにまでなった。


ただし、右足は思うように動かず、右手にも後遺症が残っている。会社へ復帰しても以前のように仕事を上手くこなせなかった・・・・。会社の仲間の足を引っ張る日々が続き、段々と自信を失っていった。

「会社の人からは気にするな」と言われていたが・・・表立っては何も言われない、影で何をいわれているのか・・・。そして、俺は、最終的にその状況に耐えきれずに逃げてしまった。会社を辞めたのだ……。


それ以降は、中々良い条件の仕事が見つからずに・・・・結局、生活保護を受けたり、貯金を切り崩しながらなんとか生きてきた・・・本当に目標もなく、だた生きてきただけだ。



良いのか悪いのか、そんな毎日が1年前に突如激変した。

変な声が頭の中に聞こえきて、異世界ダンジョン陣取りバトルという、マンガの世界のような現実が目の前に起きたのだった。


謎のモニターが現れて、そのモニターで大抵のことができてしまう。

モンスターの召喚。建物の創造、食事もDPを消費することで、ポチっち押すだけで完了だ。ある程度生活に必要なものはこの【創造】で召喚できてしまう。


俺にとってもっとも厄介だったのは、家(領地)から出られない事だった。

事故を起こしてこの体になってから、海を見るのが好きで浜辺へ良く通っていた。


しかし、領地を拡大しないとこの主拠点から移動が出来ない。

範囲も狭くて、いつも変わり映えしない風景で、息が詰まってしまう。


多少剣術には自信があったので、それを生かして何とか生存して来れたが、『審判の日』まで残り1ヶ月、日本人ランキングも低くそろそろ潮時だった・・・。

そんなとき、以前お世話になっていた葛城道場の息子の風馬くんと出会いによって、俺の新たな人生が始まった。



彼はジュースでもくれるかのように、貴重なポーションを俺にくれた。

某RPGなどのゲームなどでポーションといえば、俺の印象だと最下級の回復薬である。俺自身はそのポーションですら入手出来なかったが…。


「騙されたと思って一度これを飲んでみてもらえませんか」と言う彼の言葉を受け、そのポーションを飲むと、なんと事故で受けた後遺症が一瞬にして完全に治った。


元の世界の医療ではどうしようも無いほどの怪我が、この世界になってから一瞬で治った。それは衝撃的な事だった・・・・。

この恩を返す為にも俺は風馬くんと従属契約をした。


風馬くんは特に何か俺に対して強要する訳ではなく、普通に仲間として接してくれる。そういった人柄もあり、彼には従属契約したエルフや獣人の異世界の仲間がいる。そして、その従属契約した彼らは、風馬くんに対して全く不満が無いようだ。

仲間として大切に扱われているのであろう。



それに『深緑の妖精』の同盟には、理沙師範もいらっしゃった。

最近では毎日のように夕食後に稽古をつけてくれる。

まだまだ全盛期感覚が戻っていないが、自由に動く体がある事はものすごく嬉しい。


こんなに充実した日々が再び訪れるとは思っていなかった。

この6年間の時間を取り戻すかのように、今はただただ剣術の稽古に勤しんでいる。



更に、戦闘に関しても、5番隊を任されている。

主な役割は、高萩の海岸線の制圧だった。


装備も配下モンスターも存分に使える環境だ。風馬くんの仲間になって1ヶ月経過した頃には、南下して高萩市の海岸線をだいぶ占領した。


現在、中央部の海岸線を占領している『高萩連合』との領地争いが激化している。

ナビルたち獣人たちの力も借りつつ、順調に領地の拡大を進めている。


それに、今は亡き家族との思い出の場所である自宅も守りとおしている。

自分だけの心を落ちつけられる場所をこの先もずっと守って行こうと改めて決心した。




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おまけ


<風馬派閥>

・恋人 : 1人 ミレーネ

・従属配下 : 5人 ミレーネ、ナビル、ジェイド、サミュエル、田村秀樹






<他作品>

最強のクズ職〜てめぇら見てろよ召喚士だがこれからは俺のターンだ〜

https://kakuyomu.jp/works/16817330647505909489


よろしければ、ご覧ください。

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