第36話 海岸(1)



ドラゴンスレイヤーとの戦いから数日後の夜、同盟員には家のリビングに集まってもらっている。領地拡大の新方針について、今まで考えていた事をねーちゃんたちに話すことにした。


「このまま華川町の山中を確保するとの別に、海岸線にも領地を確保したいんだよね。海岸線だと海側からは敵が侵入してこれないから、防衛に適していると思って……。今後何が起こるかわからないし、そういった場所も確保しておいて損はないと思っているだけどどう思う?」

「僕らの同盟は、風馬くんの華川町、理沙たちの実家(高萩インター付近)、僕たちの自宅(高萩市内)3箇所拠点があると思うからこのままでいいと思うけど。どうしてもというなら、奈緒さんの実家付近から海岸線へ向けて行くっていうのはありだと思う。」

「私は反対かな。この人数で更に守る場所が増えると手に負えなくなると思うのよ。」


俺が提案すると涼真さんは合わせてくれて、ねーちゃんは反対な感じだ。


「確かにねーちゃんの言う通りこの人数だと守る箇所を増やすと大変なんだよな……。」

「……だけど、風馬がやりたいなら、無理しない範囲で頑張ればいいんじゃない。私のところは、ナビル達がいなくても風馬のD級モンスターをある程度預けてくれればなんとかなるし。」

「それなら、海岸線の占領も戦力的になんとかなりそうだな。」


只今、ナビルたち獣人たちには、ねーちゃんと共に葛城道場から西側の山へ向かって異世界人たちのと攻防を繰り広げてもらっている。

俺の領地の守りは、俺はもちろんのことミレーネと涼真さんが主に行っている。

涼真さんの主拠点は、市街地とのこともあり俺のD級モンスターを守りに着かせている。


◯ : 北茨城市(他者領地+未開拓地)

△ : 高萩市(他者領地+未開拓地)

◉ : 風馬領地

◆ : ねーちゃん領地

▶ : 涼真領地

◀ : 奈緒領地


【地図】※横向き推奨


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ねーちゃん達の了解も得て、海岸線の占領へ向けて動き出した。

まずどこの海岸線を狙うかというと、高萩の北側に狙いを定めていた。


というのも、この前ドラゴンスレイヤーを壊滅させた事により、磯原駅へ向けて進めることも考えたが、海岸線まで凄く遠い・・・・。また、ドラゴンスレイヤーがいなくなり、市街地では空地が出来てその領地争いで結構ゴタゴタしていた。

下手に刺激して、本拠地を狙われるのを避けるため、磯原の海岸線への進行をやめた。本当に遠いしね……高萩の北側と比べて4〜5倍ほど距離がある。



いまリビングには、ミリーナ、奈緒、獣人3人が集まっている。

この前話した高萩の海岸線を占領するための対策会議である。

奈緒も参加しているが、自分のレベル上げに全力を費やしてもらうので、情報共有のみだ。まぁ俺ん家に住み込んでいるので、必然的に参加している感じである。


「この前、ねーちゃんと涼真さんと話していたからわかっていると思うが、防衛に特化した領地を確保したいと思う。万が一何かあった場合のために備えておきたいと思っている。その第一歩が今回の高萩の海岸線の占領だ。」


俺の言葉にみんな耳を傾けてくれている。


「今回、事前調査で海岸線は主に3つの同盟が占領しているとわかっている。位置的には、もっとも北側に『ドラゴンブレス』、中央に『高萩連合』、南側に『チーム不死鳥』となっている。

 そして、その3つの同盟を取り囲むようにいくつかの同盟が海岸線を手に入れるために隙きを伺っている構図だ。先程も言ったが、俺たちの狙いは北側の『ドラゴンブレス』だ。」


俺はこの辺りの地図を紙に書いて可視化してみんなへ説明した。


「北側の『ドラゴンブレス』をターゲットにした理由は、一番近場で攻めやすいということもあるが、もう2つある。

 1つ目が奈緒を襲った同盟であること。

 2つ目が手負いで攻め時であることがあげられる。」


「………。」

「あのとき逃した同盟ですか、この機に葬るのは悪くないですね。」

「奈緒のことを襲った奴らなら躊躇する必要はないな。」


奈緒は黙ったままで、ジェイドとミリーナが返答してくる。


「そうだな。奈緒を助けた直後、『ドラゴンブレス』はナビルたちに追撃されて、かなり戦力を失っており状況が悪くなっているはずだ。そこへここぞとばかりに他の同盟からも攻撃を受けていたようだ。

緊急で同盟員を募集しているようだが、これまでの評判が良くないため人が全く集まらずにいる。叩くなら仲間が増えて体制を整えられる前だな。」


「何か作戦はあるのか?」ナビルが質問してきた。


「今回は力押しだ。敵の海岸線の領地の真ん中より多少北側を目指して海岸線まで突き進む。海岸線まで到達したら要塞を設置して、そこを拠点として徹底抗戦をおこなう。

そこから上下に部隊を分けてゴリ押しの力技で敵を倒す。『ドラゴンブレス』はあまり周りの同盟から良く思われていない。

そのため、俺たちが攻撃を仕掛けたら、他の同盟も連動し三方から攻撃を受ける可能性が高い。そうなれば、なお楽勝モードというわけだ。」

「俺たちは目の前の敵をただ倒せばいいわけだな。(ポキポキ)」


さっきの地図を使って簡単な作戦を示したら、ナビルが拳を鳴らしながらそう答えた。


「今日からこの作戦を進める形でいいんでしょ?誰か守りに残る必要はある?」

「今日は行けるところまで進行する。華川町の防衛は涼真さんへ頼んであるので、全員でこの作戦を進行する。」


みんなは準備のためリビングを出ていった。

そこには奈緒だけが残っていた。


「奈緒も思うことはあるだろうが、今は気にせずに自分の出来ることをやってくれ。」

「……うん、わかった。」

「今まで好き放題にやってきたんだろうから、そのつけをきっちり払わせるわ。」




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