第29話 新同盟員 <2031年1月>



地球人の半数が処刑される『審判の日』まで、残り3ヶ月を切った2031年1月某日。


チャット画面を眺めていると、たまたま救援要請が目に入った。

最近では良く見かける事であった。


『審判の日』まで残り期間が無い状況なので、自分が生き残るためにみんな必死のようだった。


それは、ねーちゃんの自宅から割と近い高萩の市街地でプレイヤーから一方的に攻撃されており、助けを求めている内容だった。


俺は何故かそのチャットが気になり目を止め内容をよく確認したところ、偶然にも救援要請を出していたのは、中学の途中で転校してしまった幼馴染の奈緒だった。



当時はかなり仲が良かった。

それこそ、周りからは付き合ってるんじゃないかと言われるくらいだ。


実は、彼女のことを好きだった。

ただ、告白して断れてしまったら、その関係が崩れてしまうのではと勇気を出せないでずっとそのままだった。


というのも、奈緒は頭脳明晰で明るく、気が利く美人さんだった。

学年で1番美人とまではいかないが、間違いなくクラスでは1番の美人という感じだ。


それなりにモテており、何人にも告白されていたが、結局俺の記憶では誰とも付き合ったりしていなかった。


そして、突然、中学3年の夏休みに親の仕事の都合で東京へ転校した。虫の知らせってあるんだな。本当にたまたま目に入って気になった程度なのだが・・・。


直ぐそのチャットの救援要請へ返信すると、やはり俺の知っている奈緒だった。

急をようする状況らしく、ねーちゃん達に連絡して助けに行く事にした。






ダンジョン陣取りバトルの声が初めて聞こえた日、奈緒は仕事の都合で茨城県日立市まで出張に来ており、帰りに久々に高萩の親の実家へ寄ったそうだ。


既に奈緒の祖父母は他界しており、実家は空き家だったが、お盆休みなど線香をあげるなど纏まった休みに家族で帰郷し、掃除なとしているので、綺麗になっており寝泊まりできる状態だ。


運悪くダンジョン陣取りバトルのチュートリアルをたまたま実家で受けて、主拠点を実家に設定してしまったことにより、高萩での活動が始まったようだ。



奈緒は近場のプレイヤーと同盟を組んで主拠点付近で地道に活動していた。

最近そこへ過激派の同盟が現れて、周りの人達を抹殺しているらしい。


奈緒の所へも明日にでも攻めて来そうな状況に陥っていた。



俺はすぐに獣人達を呼び寄せて、ねーちゃんの自宅へ転送陣で移動すると、5部隊を率いて奈緒の主拠点を目掛けて進軍した。


ミリーナは主拠点の南側の守備に当たらせている。


俺はなり振り構わず市街地を奈緒の拠点目指して進軍していく。

旗から見たら誰かれ構わず市街地を占領しまくっている・・・。荒くれ者の所業だろう。


そんな俺を見て周りの同盟やプレイヤーが警戒の色を強める。

中には領地獲得の保護期間を使用した進軍妨害をしてくる輩もいるが、その場合無視して迂回するため他プレイヤーの領地を侵略して進行して行った。

どんな事をしてでも、助けたい相手だった。



12時間後・・・。

やっと奈緒の主拠点まで数マスの所まで来たが、敵のほうが奈緒の所へ着くのが早そうだった。


しかも、奈緒は周りのプレイヤー達と同盟を組んでおり、同盟員が次々と侵略してくる敵の餌食になっていた。


そして、奈緒の同盟も残すところ奈緒1人になってしまっていた。



奈緒にすぐに同盟を抜けさせ、俺たちの『深緑の妖精』へ誘おうとした。

しかし、同盟の加入には待機期間が1日間必要らしく、直ぐ奈緒を同盟へ加盟させる事が出来ない・・・。


これは予想外だった。

最悪、俺の到着が間に合わなければ、うちの同盟へ入れて助けようとしていたが、待機期間が1日間あるなんて知らなかった……。


そういえば、涼真さんへ相談した際に「同盟へ誘うには時間が無いなぁ」などと言っていたのを思い出した。


このことだったのか…。




更にマズイことに、奈緒は正義感が強い性格だったので、同盟員の援護にほとんどのモンスターを向かわせており、もうすでに手元にモンスターがほとんどいなかった。


「っち、巻き返して来たが、ギリギリ間に合うどうかだな。」



侵略している敵のプレイヤーが奈緒の主拠点へ俺より先に到着してしまった。ただし、こっちも数分もしないうちに直ぐにたどり着いた。



俺が先頭に立って、全力で一気に奈緒の元へ向かう。


「これは俺の獲物だぞ!市街地には他にいっぱいキレイな女は居るだろう。そっちを相手にしろよ。」


敵のプレイヤーはそう言うと俺の方へ剣を握って向かって来た。逃げると追うのが厄介なので、こっちへ来てくれるなら手間が省ける。


「そんなの知らん。お前が他のやつを相手にしろ。奈緒は渡さん。」


俺は向かってくるプレイヤーを躊躇なく一太刀で始末した。





久しぶりに見る奈緒の姿だった。

肩より少し長くしたストレートの茶髪。相変わらずの健康的な肉体(エロい意味じゃない)。中学時代の幼さが抜けキリッとした美人さんだった。


俺はゆっくりと奈緒の近くまで歩いていった。ちょっと照れくさいな。


「よう。久しぶり。」

「フーくん、本当に来てくれたんだ………。先にあの変な人がここに来ちゃったから、私もう駄目だと思っちゃった。でも……良かった。」

「すまん、ちょっと遅れちまった。これでも相当急いで来たんだぜ。」

「うん。わかってる。」


「とりあえず、俺の同盟に来いよ。待機期間が完了するまで俺がここにいてやるから。こう見えても、昔より強くなったんだぜ。」

「見れば分かるよ。……それに私が憧れてるフーくんは昔から強かったよ。芯の強い人だって知ってる。」

「そうか?結構いい加減だったような気もするがフフフ。」

「そう?フフフ。」

「やっと笑ってくれたな。奈緒は笑った方が良いよ。」


再開してから、奈緒はずっと緊張しているのとちょっと震えているように感じた。

俺と少し雑談をすることにより、やっと緊張が溶けた気がした。




奈緒を襲ったこのクソ同盟はドラゴンブレスとかふざけた名前の同盟だ。


こんな世の中を良いことに、可愛い子を見つけて、暴力を奮うなど悪さをしているようだった。

中には従属契約で好みの女を配下にして、性奴隷のように酷いことをしているようだった。


少し遅ければ奈緒がそうなっていた可能性があるかと思うと怒りが込み上げて来る。

俺は近くにいる獣人たちへ命令を下した。


「ナビル、ジェイド、サミュエルはこのクソ同盟の残党を叩き潰しに行って来い。」

「オウわかったぜ。ってかそいつらはどこに居るんだ?」

「そうだよな、ちょっと待ってろ。」


俺は【地図】の機能を使って、このクソ同盟(ドラゴンブレス)を敵対同盟として登録した。


その機能によって、【地図】のマップに色々な色が出ている。

この情報は、従属契約した配下へは共有される情報である。


青色 : 俺の領地

緑色 : 同盟員の領地 ※同盟加入時のみ

赤色 : 他プレイヤーの領地

黄色 : 敵対同盟・プレイヤーの領地 ※設定が必要


「ナビル、ちょっと【地図】を開いてみてくれ。そこに黄色の表示されてるのが今回のターゲットだ。可能な限り殲滅してこい。」


そして、ナビルたち獣人3兄弟は近場にいる『ドラゴンブレス』の同盟員を倒しに市街地を駆け回った。


結果、ドラゴンブレスの1人を倒すことに成功した。領地を奪ってくる程度かと思っていたが、本当に倒してくるとは思わなかった。



そして、この闘いで、ナビルがレベル5となりモンクへクラスチェンジした。



名前 葛城 風馬 (支援スキルLv1)

レベル 5

クラス ナイト

ステータスポイント 0

能力値

 力 C (35)

 魔力 F (0)

 配下 D (20)

 創造 E (5)


名前 ミレーネ

レベル 3

クラス なし

ステータスポイント 0

能力値

 力 E (12)

 魔力 F (0)


名前 ナビル

レベル 5

クラス モンク

ステータスポイント 0

能力値

 力 D (34)

 魔力 F (0)


名前 ジェイド

レベル 4

クラス なし

ステータスポイント 0

能力値

 力 E (12)

 魔力 F (0)


名前 サミュエル

レベル 4

クラス なし

ステータスポイント 0

能力値

 力 E (12)

 魔力 F (0)




もちろん奈緒は、同盟待機期間が完了したら『深緑の妖精(俺の同盟)』へ加盟した。



名前 高橋 奈緒

レベル 2

クラス なし

ステータスポイント 0

能力値

 力 F (0)

 魔力 E (10)

 配下 E (5)

 創造 F (0)



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