第14話 風邪
ミレーネが仲間になって数週間が過ぎたある日の朝。
ミレーネが中々部屋から出て来なかったので、少し心配になり扉をノックしたが・・・返事が帰ってこない。
「入るぞぉ〜。」
そう言って、少し大きめな声を出して、入ることをアピールしながら、ゆっくりと扉を開けて、部屋の中に入るとミレーネが顔を真っ赤にして、すごい汗をかいてうなされていた。
俺はすぐさまミレーネの元に駆け寄り言葉をかけた。
「ミレーネ!大丈夫か?」
ミレーネは部屋に入ってきた俺に気づき、ゴホゴホと咳をしながら起きあがろうとしているので、俺は起き上がるのをやめさせた。
「・・・あ、ああ、大丈夫だ・・・、多分風邪だと思う。すまないが、体調が戻るまで暫く休ませてもらってもいいか?」
「勿論だお前に何かあったら取り返しがつかん。ちょっと待ってろ。」
俺は食い気味にそう言うと台所へ行き、玉ねぎをスライスし卵を溶いた。
鍋に水、醤油、顆粒和風だし、塩少々、玉ねぎを入れてひと煮立ちさせる。
そこへごはんを入れ更にひと煮立ちさせたら溶き卵を回し入れ、完成したのは、消化に良いおじやだった。
結構簡単にできて消化に良いので、昔風邪のときによく自分で作って食べていた。
そして、DPを使って風邪薬を召喚しようとしたらできなかった。
「大したものじゃないが、これを食べてくれ。こういったときは体力をつける為に何か食べた方がいいから。
消化に良いものを作ってきた。」
「こんな私のためにありがとう……。」
ミレーネは起きあがり涙を浮かべているようだった。
たかだかおじやを作っただけなのだが…。
ミレーネは村ぐるみで奴隷にまでさせられそうになっていたので、今までいろいろと厳しいことがあったのだろう・・・・。
人の優しさに飢えているのだろうか?
「こんな私のためなんて言うなよ………もう俺はミレーネが居なきゃダメなんだ。
まだ少しの時間しか共に居ないが、ミレーネとの時間が……俺の生活の一部になってんだよ。」
「フーマ……。」
ミレーネがベットに座って、倒れかかるように俺の胸に軽く頭を付けて泣いた。
俺はミレーネに腕を回して背中をさすってあげている。
少しの時間そうしていたら泣きやみ、少し恥ずかしそうにしておじやを食べ始めた。
「ゆっくり寝てろよ。そんで何かあったらメール入れろ、直ぐに飛んできてやる。」
「わかったありがとう。ッゴホッゴホ」
俺はそう言って部屋を出ると、ミレーネはベッドへ横になって寝たのだった。
それから2日ほど休養をとったミレーネは元気になった。
本当にただの風邪のようで安心した。
このことがきっかけで俺とミレーネの距離がぐっと縮まった気がする。
一つ屋根の下に異性が居れば日々にハリがでるよな。
しかも絶世の美女とくれば、なお充実する。
◇◆◇◆◇◆
だいぶレベル2になってきているプレイヤーも多くなり同盟も少しずつ浸透し始め、結構なプレイヤーが同盟を組み始めたとチャットに流れている。
本当かどうかの真偽は怪しいが……。
チャットの掲示版には、市街地に主拠点を設置した者たちは、土地の余りが少なくDPを稼げていないなどと不平不満の情報も掲載されていた。
「なんで市街地になんて拠点を置いたのか・・・市街地に拠点を設置したら、人も多数おりDPを稼げないと気付かなかったのだろうか。
DP獲得量が少ない事が、自分の死に直結することを認識できないのだろうか?」
それとも自分は大丈夫だろうという、根拠なき自信があるので、領地に閉じこもってレベル上げをしないでも平気でいられるのだろう・・・・。
「後々自分自身が不利になり追い詰められると気付かないものかねぇ〜。
気づいているのも多いけど、他人を攻撃できなくて、どうしようも無くて、気づかない振りをして自分を誤魔化しているのか。
同盟という仲間に囲まれて、周りの同盟も自分たちと同じような生活を過ごしていると・・・安心するのかな。
それが普通、だから自分は大丈夫だ・・・的なことだろうな。」
強くなろうとしている奴とそうでない奴の差が開く一方だな。
更に異世界人は山奥に拠点を作っている事が多く、市街地まで攻めてくることも無く安全だから安心し切っているようだ。
異世界人の対応は、別のどこかの同盟がどうにかしてくれるから、どうせ自分たちの元に異世界人は来ない。
そんな考えなのかも知れない。
それって実はただ現実逃避しているだけだと思うのに……。
<他作品>
最強のクズ職〜てめぇら見てろよ召喚士だがこれからは俺のターンだ〜
https://kakuyomu.jp/works/16817330647505909489
よろしければ、ご覧ください。
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