第11話 決戦
ミレーネの体力が大分回復したので、夕方から無理しない範囲でエルフたちとの戦闘に参戦してもらうことにした。
ミレーネにとっては同胞との戦いなので、後方から援護という形を考えている。
敵の攻撃は夜に一度止み、次の日の朝を迎えた。
俺はこれまでの領地の取り合いを止めて、敵が一番攻めて来そうなポイントに配下共々「待機」させていた。
その待機させている配下数は総勢500体からなる大所帯だ。
E級モンスター100体(前衛80体、後衛20体)
F級モンスター400体(前衛370体、後衛30体)
ミレーネを仲間にする前に数回エルフたちと戦ったが、1対1ならやや俺が優勢といった感じだが、1対2になるとたちまち俺が劣勢になってしまう。
そして、予定通り、配下を待機させていた領地へエルフA(今後2人のエルフをA、Bと呼ぶことにする)とモンスターが現れた。相手の部隊数は1つであった。
現れたエルフAが俺に向かって穏やかな口調で話しかけてきた。
「今日は大勢でお待ち構えですか。総力戦って感じですかね。ちょっと待って下さい。これだと人数的に不利なので仲間を呼び寄せますよ。」
「ずっと領地の取り合いを繰り返していても面白くないし、どちらにせよ最終的には総力戦になるんだ、そろそろ決着をつけたくてな。」
「そうですね。私もそろそろこの戦いにも飽きて来ました。」
そうしている間に、エルフAのもう1部隊が戦が場に入ってきた。エルフAの2部隊集まっての総数は、80体×2部隊で160体である。
・E級モンスター 160体 (前衛140体、後衛20体)
まあ、どうせあと1人のエルフBも呼び寄せてるのだろう。
「じゃあ、始めるとするか。それとも、どうせもう1人来るんだろうから、待ってやるか?」
「いや、こちらは構いませんよ。早くローレンの仇をとってやりたいですし。そこの裏切り者にも制裁を与えなければ……。」
「では、敵陣目掛けてかかれー。」
両者から各々の合図があり、戦闘が開始された。
モンスターは、ここ数日の消耗戦のせいで、Eランクが多くやられてしまって、こちらが全体的にランクの低いのが多目だった。
ただし数では大きく優っているので、互角以上の戦闘を繰り広げている。
そしてなんと言っても、ミレーネの加入である!ミレーネは元狩人であり弓が得意であった。
その為、ミレーネには、後方から弓で高ランクのモンスターを優先的に攻撃して貰っている。
戦闘開始10分。
もう1人のエルフB(80体×2部隊 160体)が現れて状況は変わった。
・E級モンスター 160体 (前衛100体、後衛60体)
モンスターランクの差を3倍の数で補っていたが、敵に援軍が入った事により、敵が優勢となっている。
「ちょっと配下モンスターの消耗が激しいので、俺も前線に行ってくる。その間にミレーネ1人になるが、無理をせずに気をつけて。万が一、危なくなったら、ミレーネの命を優先してくれて構わないから、逃げてくれ。」
「フーマ・・・ありがとう、命を落とさないと誓おう。そっちこそ絶対に死ぬなよ。」
そういって、俺は配下のモンスターをかき分けて前線へ立つと、敵モンスターを次々と倒していった。
戦闘開始から30分。
俺が前線に参加しているため、何とやや劣勢までになっているが、激しい戦いの末、お互いにモンスターを消耗し、残りが少なくなっていた。
そして、ここぞと思い俺は前衛のエルフAに向かって勝負を挑みに行った。エルフたちは前衛の戦士タイプ(エルフA)と後衛の魔導士タイプ(エルフB)がいた。
「やっとご対面だな。こっちのモンスターも残り少ないんでそろそろ決めさせてもらうよ。」
俺はそういうと戦士タイプのエルフAへ向かって一気に駆け寄り、連続攻撃を仕掛ける。敵もそれを必死に受けながら耐えている。
よしイケると思ったとき、横から俺目掛けて勢い良く炎の矢が迫ってきた。
俺はギリギリのところでその魔法を避けることに成功したが、大きく体勢を崩してしまった。その隙を戦士タイプのエルフAに攻撃され、かすり傷を受け後退した。
この前の戦いも、このエルフたちの連携パターンにやられそうになったのだ。前衛が俺と対峙してるときに横から正確な魔法でもう片方が援護攻撃してくる。そして、俺が体勢を崩すと、戦士タイプのエルフAに追撃される。
最終的に俺が押し負ける形になってしまう。
しかし、今回は前回と違いミレーネがいる。
「ミレーネこっちへ来て援護を頼む!」
しかしミレーネは顔を下に向けたまま立ち尽くしている。
「エルフの面汚しめお前は出てくるな!」
戦士タイプのエルフAがミレーネに向かって怒鳴り散らすと、ミレーネは一瞬ビクつきこの領地のエリア外へ駆け出してしまった。
「そんな…。」
俺は愕然してしまった。
ここへ来て肝心のミレーネが戦線離脱してしまったのだ。
「っふ、当てが外れてしまった様だな。今度は逃がさないぞ覚悟しろ人族め。」
エルフAB、2人の連携プレイにより徐々に押され始めた俺はどんどん後退していった。
何とかエルフたちの攻撃を受け流してこれているが、このままでは防戦一報である。魔法タイプのエルフBも解放領域の中央まで来た。
「フハハハハ、やっと準備が整った。ここから本気を出させてもらうよ。」
俺はそう言ってほくそ笑むと、戦士タイプのエルフAへ向かって駆け寄った。
「頭でも打ったか。それとも絶望的になっておかしくなってしまったか。逃げずに向かって来るなら好都合だ。」
キンキンと俺と戦士タイプの剣が交差する音が数回響くが・・・・。
しかし次の瞬間、エルフAの剣が後方へ飛び、俺の剣がエルフAの胸を突き刺していた。
「さっきまでと全く動きが違う、な、な、なぜだ……グフゥ。」
戦士タイプのエルフAは、胸を押さえてその場に倒れた。残りのエルフBは、状況が掴めずにいるがすぐに我に帰り、遠方から最大出力の魔法を俺目掛けて発動させた。
ドガガガガガアア。
さっきまで俺がいた場所に大爆発がおきた。
昨日までの俺だったら、この大爆発に巻き込まれていただろう。
しかし、今の俺は違う。
名前 葛城 風馬 (支援スキルLv1)
レベル 2
クラス なし
ステータスポイント 10
能力値
力 D(15)
魔力 F(0)
配下 E(5)
創造 E(5)
ステータスポイントを使って能力値を上げていたのだ。
「なぜ、今のを避けられるのだ。急激に強くなるなんてどうなっているんだ……。」
仲間の亡骸もろとも吹き飛ばす勢いで放たれた渾身の一撃の魔法をまさか避けられると思っていなかったエルフBは驚きを隠せないでいた。
「まあ、それは・・・企業秘密だ。さっきまでは6割程の力で戦わせてもらっていた。殺さない程度に力を出すのは意外と難しいな。」
「っく。」
魔道士タイプのエルフBはモンスターを俺に向かわせて、自分は逃げる体勢に入った。
「っち、逃げるな。」
俺は最小限の敵のモンスターたちを倒しながら急いでエルフBを追う。逃がさない為に魔道士タイプのエルフBを解放領域の中央まで誘き寄せたのに、このままでは逃げられてしまう。
次の瞬間、エルフBの足に弓矢が突き刺さり悶え苦しみ出した。そう、エルフBの目の前にはミレーネが現れたのだ。
「っなぜお前がいるのだ……さっき逃げ出したはずでは……。」
「やぁねぇ、演技に決まっているじゃない。私にはフーマがいるから。だから、もうあなたたちの言葉なんて私には届かないのよ。」
「まあ、そうゆう事だ。ミレーネにはお前たちの退路を塞ぐ為に戦闘の途中でこの場を戦線離脱してもらう算段になっていた。」
ただ、本当にミレーネが逃げ出したと思うほどの演技だったので、俺も一瞬ヒヤリとしてしまった・・・が、助かった。
手の内を晒したので、エルフBにこの場から逃げられたら、倒すチャンスが低くなると思っていたので、何としてもここで仕留めておきたかった。
「貴様さえいなければ〜。」
エルフBがミレーネに向かって魔法を使おうとしている。
「天下一刀流 縮地斬」
俺の斬撃が敵のエルフBの首を飛ばした。
それと同時に敵モンスターの姿が光と共に消え長い戦いに終止符を打ったのだった。
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