第10話 隣人(4)
朝に一旦止んだエルフたちの侵略は昼間には再開され続いているが、計画的に遅延工作しているので、そこまで進行速度は速くない。
なんやかんやで夕方近くになり、ちょうど俺が家のリビングで休憩していると彼女は客間から出てきた。
「よう、体調はどうだ?」
「・・・うむ、ゆっくり休ませて貰えたので大丈夫だ。」
「・・・そうか、それは良かった。何か食べるか?腹減ってるだろう。」
「ああ、頼む……。」
彼女はこちらまで歩いてきて、テーブルを挟んで目の前のイスに座った。
俺は創造から食事【良】と飲み物を出し、彼女の前に差し出して、自己紹介を始めるのだった。
「そうだ、自己紹介がまだだったな。俺は葛城風馬だ。風馬って呼んでくれ。」
「・・・・私はミレーネだ。」
「ミレーネか、いい名前だな。」
「ありがとう・・・。」
ミレーネは少し照れながら、食事を取るために顔の布を取り始めた。
・・・・・俺はその姿に目を奪われてしまった。
そこには金髪のストレートロングヘアーをした絶世の美女が現れたのだった。
目鼻立ちは整っていて、二重瞼でパッチリしている。
小顔でシュッとしており、やはりファンタジーだね、お耳の先がトンガっているのだが、想像していたまでトンガってはいない。
鎧を脱いでいたので気づいていたが、スタイルは抜群で、鎧を着ていても大きいと思っていたが、自己主張が強すぎるほど大きい胸が印象的だ。
俺はミレーネの素顔を見て、顔が少し熱を持ち、鼓動がかなり早くなったのが分かった。
「……そんなに見ないでくれ、失望させてしまったか、・・・・どうせ私は醜い…。」
「…いや、逆だ。美しすぎて見とれていた……。てか、ど、ど、どこが醜いんだ?
ミレーネみたいな美人でスタイルも抜群と来れば世界中探しても滅多にいないぞ。」
「な、な、な、何を言っている。からかうのもいい加減にしろ。」
ミレーネは顔を真っ赤にして恥ずかしそうに言い返してきた。
「冗談なんかいうもんか・・・。
私はこの外見のせいで、村中から蔑まれ奴隷にまでされそうになってしまったんだぞ。
フーマはこの醜い胸を見てもどうも思わないのか?」
「醜い胸?いや俺にとっては、いや地球人のほとんどは、その大きな胸に夢と希望が詰まっていると思っているぞ!」
「夢と希望??」
「だから、大好きだということだ。」
「っつ。」
ミレーネはまた顔を真っ赤にして顔を伏せてしまった。
俺もつい思っていることをストレートに言ってしまい顔を赤くしてしまった。
そして、話を誤魔化す様に食事の方へ方向転換した。
「……そうだ、せっかく食事を用意したんだし、冷めないうちに食べてくれ。」
「そうだな。ありがとう、そうさせてもらう。」
あとでミレーネに聞いた話だが、エルフ族の女性は顔が皆綺麗なのは当たり前なので、胸が小さい方が美しいとされているとのことだった。
戦闘や移動に胸が大きいと邪魔になるというのが直接的な原因のようだ。
そのため、胸が大きいエルフはブサイクと一族内で蔑まれることになるのだそうだ。
そして、貧乏な村が危機に陥った際に、ブサイクな村民が犠牲になり奴隷として他種族に売られ、村の危機を乗り越えることもあるそうだ。
今回、謎の声によりこの陣取りバトルが行われなければ、ミレーネは奴隷商に売られて、それこそ人族に売られていれば、性奴隷として生き地獄を味わっていただろうとの事だった。
ただ、ミレーネは運が良く、奴隷とされて売られそうになる直前に陣取りバトルにより各地で人々の移転が始まり、彼女は1人でエルフの集落から離れた所に主拠点を築いたとの事だった。
ミレーネの食事が終わり、お代わりの飲み物を出し今後の話を切り出した。
「ミレーネ、早速だが話すことが3つある。
「現状説明」、「確認事項」、「対策会議」だ。
なお、何か質問や意見があれば、都度言ってくれ。」
「わかった。何かあれば言うようにする。
・・・と、その前に私はフーマ殿をどう呼べば良いのだろうか?従属契約を結んでいるので・・・これからは、ご主人様?などとお呼びすれば、良いのでしょうか?」
ミレーネは自分でご主人様などと俺を呼んで、顔を赤くしている。可愛らしい。
従属契約って、主人に逆らえないんだよな・・・やりたい放題なんだよな・・・。
こんな絶世の美人を・・・ヤバイヤバイ。
少し前屈みになってしまった。
「いやいや、ご主人様・・・なんて(こんな美人から言われたら、凄く嬉しいんだけど)、そんな呼び方しないでいいよ。
俺もこの通り既にミレーネを呼び捨てだし、俺のことは、風馬と呼び捨てで呼んでくれて構わないよ。
後、今まで通りの口調で大丈夫だよ。」
「ですが、私は既にご主人様と・・・そのぉ、従属契約をしておりますし・・・基本的にご主人様の命令には逆らえませので・・・。」
ミレーネがもじもじしている・・・やっぱり可愛らしい。
「・・・それでもだ。ミレーネは俺を信じて従属契約をしてくれたんだ・・・、俺はミレーネにはなるべく俺と対等な関係でいて欲しいと思っている。
たまには無茶を言うかも知れんが、ミレーネが普段通りに・・・なるべく早く俺を信頼してくれる様に頑張るよ。」
「そうですが・・・・わかったよ。フーマこれからもよろしく頼む。」
「あぁ、それでいいね。よろしく。」
ミレーネは少し顔赤くして、笑顔を見せてきた。
うん、俺はこの笑顔を絶やさないようにしようと心に決めたのだった。
「って、ちょっと脱線したが、まず現状説明をする。現状は決して良くない。
ミレーネの同胞の2人が今もこの本拠地を探して侵略に来ている。
2対1なので劣勢としか言いようがないな。どう対処するかは、後で説明するからもう少し待ってくれ。
次に確認事項だ。
ミレーネの能力値について教えてくれ。
プレイヤーのときみたいにステータス画面は出せるか。」
「ちょっと待ってくれ。」
ミレーネはそう言うと、ステータス画面と念じたようで、目の前に画面が現れた。
しかも、俺にもミレーネのステータス画面が見えている。
そこで、俺は立ち上がり、ミレーネの横へ移動し画面を覗き込んだ。
「俺にも見えるんだな。ただ見れる項目が【ステータス管理】【土地(地図)】【連絡】だけに減ってるな。
これは新情報だ。では、【ステータス管理】を開いてくれ。」
「わかった。これでどうだ。」
俺はミレーネのステータス画面を見れるが、操作することは出来なかった。
ミレーネがポチッと画面を操作した。
名前 ミレーネ
レベル 1
クラス なし
ステータスポイント 3
能力値
力 E(5)
魔力 F(0)
【配下】【創造】の項目が消えていた。
そして、ステータスポイントが3となっていた。
「ステータスポイントは残していたのか?」
「いや、力に5ポイント、創造に5ポイント振ったはずだ。」
「となると、【創造】のポイントが還元されたってことなのか?ただ、5ポイントじゃないから、還元率があるって感じか…。
これも優良な情報だなありがとう。因みにミレーネは戦闘において何が得意なんだ。」
「弓だ。私は魔法の力を授かっていなかったので、弓を使って獲物を狩って生活していたんだ。」
「そっか。じゃあ、今後もそのまま力を伸ばす方向でステータスポイントを振ってくれ。それでいいよな?」
「ああ、それで構わないと思う。」
そして、俺は最後にエルフたちへの対策会議をおこなうのだった。
「最後に戦闘の対策会議だ。
正直このままじゃジリ貧だ、徐々に領地を取られて最後にはここまで攻められてしまう恐れがある。
そこで、こんな事を考えているのだがどうだ?」
俺は現在自分が考えている作戦を詳細まで説明した。
その内容にミレーネから質問や改善事項があがり、より良い作戦になっただろう。
「でも、そんな事をして本当に大丈夫なのか。危険な事は私へやらせるべきではないのか。フーマがやられたら従属契約している私もどの道・・・・。」
「そこは大丈夫だ俺を信じてくれ。それにミレーネに危険なことを任せたくないしな。
危険なことは男の俺の役目だ、心配すんな上手くいく。」
「………わかったフーマを信じるよ。」
ミレーネは少し顔を赤らめながら、頷くのだった。
<他作品>
最強のクズ職〜てめぇら見てろよ召喚士だがこれからは俺のターンだ〜
https://kakuyomu.jp/works/16817330647505909489
よろしければ、ご覧ください。
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