第9話 隣人(3)
俺は隣人エルフへの侵略を一時中断し、手遅れになる前に西側へ防御を敷くために隣人エルフの主拠点を後にした。
そして、西側の向かった先にいたのは、エルフ3人だった・・・・。
隣人エルフは俺が血相を変えて出ていったのを見て、水を得た魚のように勢いよく主拠点の周りの領地を占領し、俺との隣接を切った。
そして、そのまま逃げるように援軍に来たエルフ3人が待つ西側へ向けて領地を拡大していったのだった。
夜中だったのと隣人エルフの攻めの事で、周りを警戒しておらず敵の接近に気づかなかった・・・・。
こちらが狩る側だと思ってそれに夢中になってしまい、狩られる可能性があることを忘れてたぜ。これはいい勉強だな・・・、次に活かそう。
ただ、かなり不味い状況である。
攻め込んできているエルフは3人、そこへ隣人エルフが加われば、敵プレイヤーの合計は4人となってしまう。
俺は少し落ち着いてきたが、先程まで気が動転して隣人エルフに止めを刺すことさえ怠ってしまった。
しかし、俺があそこでいち早く前線に出向いて全体に指示を出し始めたおかげで、ここまでの被害で済んでいる。
俺とエルフたちで部隊数が全然違うので、徐々にモンスターと領地数が減っていく。
そして、数時間経過すると隣人エルフも援軍にきたエルフたちの元へ辿り着いてしまった。状況はますます悪化するだけだった・・・。
しかし、エルフたちの様子が少しおかしいように感じた。
援軍エルフが隣人エルフに近づいているが、手を差し伸べ助けているような感じが全くしなかった。
それより、隣人エルフの領地が安全地帯なため攻撃を受けないだけで、攻撃できる状況なら、それこそ攻撃を受けてしまうのでは無いかとさえ思えてしまう。
気のせいかと思ったが、俺が思った通りの状況となった。隣人エルフは領地の安全地帯期間が経過すると援軍エルフより攻撃を受ける始末だった。
そんな隣人エルフが攻撃を受けて窮地に立たされている姿を見て、俺はなぜか胸糞が悪くなった。
そして、隣人エルフが援軍エルフに殺されかける瞬間・・・・・何故か、俺の体は隣人エルフへ向かって全速力で動いていた・・・。
「天下一刀流 縮地斬」
縮地斬・・普段脳がリミッターをかけている力を無理やりこじ開けて、一瞬だけ2倍の力を開放し、瞬く間に敵の背後まで移動。それと同時に相手の首元へ一撃を加える技だ。
俺は一瞬で援軍エルフの背後へ移動して首を刎ねて、ギリギリ隣人エルフを助け出すことに成功したのだった。
それの行動は、考えるより先に体が動いた感じである。
「おのれぇーーー貴様ーーーよくもローレンをぉーーー!全軍あ奴を血祭りにあげよ。」
「ロ、ロ、ロ、ローレン……。なぜあいつがこんなところで死なないといけないのだ・・・・・。絶対にあいつは逃がすな。」
その光景を少し離れた場所で見ていた援軍エルフ2人が、ここに向かって主力部隊を率いて押し寄せてきた。
「おいしっかりしろ。このままだとあの2人がこっちに来ちまう。流石にあの数を凌ぐのは、いまの俺の戦力だと厳しい。君たちに何があったかは知らんが、君が蔑まれている姿を見るのに耐えられず、勝手に体が動いていた…。
君さえ良ければ、俺の仲間になってくれないか。生きていれば、いつか良かったと思える日がかならず来る。それを俺が君に与えてやる。だから、今は俺のこの手を取って【従属契約】を受け入れてくれ、頼む。」
俺はそういうと、隣人エルフの目を真っ直ぐに見つめ静かに右手を差し出した。これで隣人エルフが俺の手を取ってくれるかは賭けだ。
隣人エルフは、俺の目を見た後、俺の差し出した手に目を移してどうすべきか困惑の表情を浮かべて固まっている。
「・・・・俺を信じろ!」
力強く発した俺の言葉に、隣人エルフはハッとなり軽く頷くと俺の手を取ってくれた。
『従属契約』
俺は急いで隣人エルフに従属契約を行った。
すると、隣人エルフの胸の心臓辺りがポワッと光り、何かの紋章みたいな物が記された。
たぶんこれで、隣人エルフは俺の配下に加ったのだろう。
隣人エルフは従属契約後に緊張の糸が切れてしまったのか、疲労が溜まっていたのか、急に倒れ込んでしまった。
ただ、これで隣人エルフを俺の領地の中まで運べるはずなので、俺は隣人エルフをお姫様抱っこすると急いで、主拠点へ戻った。
隣人エルフに大きな外傷は無かった。ただ、彼女は(たぶん俺のせいで)疲労が溜まっており、起きる様子が無かったので、そのまま俺の家の客間で寝かせておいた。
そして、援軍エルフたちは数が1人減ったが、こちらが劣勢なのは変わりない。
そのため、俺はエルフたちに対して領地の保護期間を活用した妨害活動(時間稼ぎ)を行ったのだった。
◯ 俺の領地
◎ 俺の領地(保護期間中)
▷ エルフ領地
▶︎ エルフ領地(保護期間中)
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▷▷ ▶◎ ◯
▷▷ ▷▶▶◎◯ ◯
▷ ▶◎ ◯ ◯
▷▷ ▷▷ ◎ ◯◯
▷▷ ▷▶▶◎◯
▷▷▷ ▶◎ ◯◯
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たった数時間だったが、生きた心地がしなかったこの時間は、かなり長く感じたのだった。
朝になり妨害工作も成功して、相手は疲労の色も見え始め一時退却する形となった。
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