第8話 隣人(2)
先日の井上さんとのやり取りもあり、他勢力からのちょっかいや、今後本格的な敵プレイヤーとの戦闘が想定されるため、拠点作りや進軍方向などについて、絶賛考慮中である。
主拠点の建物については、配下の総数✕1.2くらいを目処に設置しているので今の所問題ないと思っている。
ただ、食料が問題なんだよなぁ。既に1,000体程のモンスターがおり、これ以上増やす事もできるがそうすると食料創造だけでDPを相当消費してしまうので、考えどころである・・・・。そうなると自給自足を行うべきだな。
【創造】には田畑があるので、俺は以前より徐々に検証で始めていた田畑へ移動して農作物の発育状況を確認したのだった。
正直、通常の環境だと農作物が育つのにはそれなりの時間がかかるため、芽でも出ていれば良いだろうとの感覚だったが、実際に田畑を確認してみるとその状況に驚いた。
せいぜい1週間前ほどしか時間が経過していないのにも関わらず、田んぼの稲は既にかなり発育していた。
野菜に至っては、種類によって成長スピードが違っているが、既に収穫できるものさえあった。
「こりゃすごいな。通常の数倍……いや、そんなスピードじゃ追いつかないくらいの速さだ。10倍とかそんな感じのスピードだぞ…。
これなら食料問題も解決できて、配下モンスターもどんどんと増やして、戦力アップを図ることが可能だぞ。そうと分かれば、早速農業改革に取り掛かるとしますか。」
「とりあえず、地下室の拡張をおこなってと・・・・・。次に農作業専用の配下を召喚した方が効率が良いかもな。だったら、二足歩行で、手も動かせてっと、まずゴブリン、コボルト、アジザルあたりを中心に試してみますか。数は・・・、とりあえず、各10体づつとして、計30体を召喚っと。
そんでもって、拡張した地下スペースに田畑を設置っと。稲と作物の苗は、ゴブリンたちに指示してっと・・・。良し、これで、大体の自給自足の体制を整えることが出来たかな。・・・・何か過不足あれば、都度調整って感じかな。」
俺はステータス画面でポチポチとボタンを押すことで、あっという間に田畑を設置することができた。やっぱり、なんと行っても文明の利器ではなく・・・魔法の利器?かな。
「次は進軍方向について考えみるかな。
まず、北側は既に川まで領地を拡大しておりこれ以上は無理っと。東側はこれからも出来るだけ市街地目指して領地拡大がベストだな。
南側は・・・ある程度進めていて、他プレイヤーも近くに来ているので、刺激しないように一時進軍の優先順位は下げておこう。
最後に西側は・・・俺の見立てだと山の奥に手つかず広大な土地があるはずので、こちらも出来るだけ領地拡大だな。つまり、西側と東側を優先的に領地拡大を進めるって方針にしよう。」
◯ 俺の領地
◎ 俺の主拠点
▶︎ 隣人エルフの主拠点
△ 他プレイヤー
= 川
空白 土地Lv3以上
北
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
===============
==
← ◯ ◯ ◯ ==
← ◯◯ ◯ ◯ ◯◯→ ==
← ◯ ▶◯ ◯ ◯◯→ △
西← ◯◯ ◯ ◎ ◯◯ ◯ → 東
← ◯ ◯ ◯◯ ◯ ◯◯◯△
← ◯ ◯ ◯ → △
← ◯ ◯
△ △ △ △
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
南
西側と東側の領土を優先して拡大し始めて数日経過した・・。
他プレイヤーからの攻撃も無く平和そのものであり、領地育成ゲームと化している気さえする・・・。
忘れるところであったが、そろそろ隣人エルフとのやり取りも1週間以上経過していた。ここまでやっても心も折れないしだんだんと可愛そうになってきたと共に隣人エルフをイジるのも面倒になってきてしまった。そう思ってしまったので、仕方ないでは無いか・・・。
「結構やつれて来ているし、昼に説得してみてダメだったら、これ以上続けても俺が期待している結果になることはないだろうな・・・。」
俺は次が最後の説得のチャンスだと決断し、隣人エルフの元に向かっていった。
「こんにちは。」
「・・・・貴様は私をどうしたいのだ。
殺すわけでもなく、攻めようと思えば一気に私の事など殺せるだろ…。」
「いや、まあ、こんな状況だからといって、やはり人を殺すのっていうのは・・・、決して気分が良いものじゃないだろう。だから出来れば、殺さずに越したことはないと思ってだな・・・・。」
「っふ、ふざけたことを。貴様は甘いのだな、そんなことではすぐに我が同胞に殺されてしまうぞ。もう少し気を引き締めた方が良いぞ。」
隣人エルフはかなり状態がよろしく無いのだろうが、俺がいるので強気に振る舞っていいるようだった。
しかも、ちょっと俺のことも気にしてくれてる感じ?・・・。
「ご忠告ありがとう。だが、このやり取りもそろそろこれは最後となりそうだ・・・。あんた、本当に俺の配下にならないか。」
「・・・愚問を、・・・・・貴様の配下になどならんよ。」
「そうか・・・・・邪魔したな。」
俺は少し寂しそうな顔をしながらその場を後にした……。
いつもは、空元気でも食って掛かってくる隣人エルフがこのときは、何も無かった。これまでと若干俺の雰囲気が異なっていたので、ある程度気づいていたのだろうか。
そして、最後の最後まで、優柔不断な性格のせいで隣人エルフに対する処遇をどうするか迷いに迷っていた・・・。
とうとう夜中になってしまったが、俺は隣人エルフを討つと決断して、2部隊160の大群を率いて彼女の主拠点へ押し入ったのだった。
地上に10体ほどの敵モンスターが「待機」されていたため、別次元が解放された。
早々に10体のモンスターを片付けたら、隣人エルフが自らモンスター60体ほどを率いてやってきた。
「こんばんわ。」
「とうとう貴様自らのご登場か・・・・。
やっとその首を落とせる機会がやってきたと思うとうれしいぞ・・・。」
「なあ、・・・・本当に俺の元に来ないか。」
「いや、そうゆうことは、もうやめよう……。いざ尋常に勝負。」
「………わかった。こちらこそよろしく。」
隣人エルフは、俺の言葉を聞くと配下モンスターへ指示をだし、俺めがけてモンスターを進軍させた。
俺は俺で配下モンスターたちに隣人エルフのモンスターを攻撃するように指示を出したのだった。
結果はこれまでの戦いの通り、火を見るように明らかだった。
俺のモンスターのランクの方が高いため、どんどんと隣人エルフのモンスターが殺られていく。
ただ、隣人エルフが放つ弓によって、俺のモンスターも殺られていく。
戦闘を開始して数十分後、戦力差を加味すると結構もった方だと思う。
隣人エルフは思っていた以上に強く、要所要所で良いタイミングで放たれた矢が俺のモンスターを倒していく。
ただ、やはり数の暴力にはかなわなかった、多勢に無勢だ。彼女のモンスターも残すところ10体ほどまで減り、俺自らが戦闘へ加わり終止符を打とうと前線へ向かった。
その時だった、俺の領地が攻められているとの知らせが入ってきた。
ステータス画面を開き【地図】を表示すると、西側から勢いよく領地が取られているのが確認できた。
しかも、取られるペースが尋常じゃなかった。こんな夜中に6部隊で相当なスピードで侵略されている状況、かなりヤバいと判断した。
そう、夜中だからヤバいのだ。
これは明らかに計画的な犯行だ!
相手が寝静まって油断しているだろう時間帯を狙って、奇襲を掛けてきたとしか思えなかった。
しかも、これまで気づかなかったほど綿密に且つ6部隊で迅速な行動を起こしているとなると・・・・どう考えても良いような事はない。
俺は隣人エルフへの侵略を一時中断し、手遅れになる前に西側へ防御を敷くために隣人エルフの主拠点を後にしたのであった。
そして、西側の向かった先にいたのは、エルフ3人だった・・・・。
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