第6話 隣人(1)


俺は西側の進軍出来なかった場所近くで謎の声が言っていた72時間の保護期間が切れるのを待っていた。


「なんとなく想定していたが、やはりこういうことだったか・・・・・。」


そう目の前には敵のプレイヤーがいたのだった・・・・・。

保護期間が切れて敵のプレイヤーの姿がはっきりと分かるようになったのだった。

ステータス画面の【地図】でも、今まで俺の領地しか乗っていなかったのが、他プレイヤーの領地が記載されるようになっていた。

地図上の青色が俺の領地、赤色が他プレイヤーの領地だった。


そして、目の前に突如現れた敵プレイヤーは、明らかに日本人の服装をしていなかった。

ファンタジーで語られているような冒険者や狩人といった感じの服装で、そこまで大きくはないが、弓矢を装備品として持ち合わせていた。

その服装や装備品も使い込まれているようで、体に馴染んでいるように感じる。


背は俺より低いだろう165cmくらい。

顔は布で覆われておりはっきりとは確認できない。イスラム教のヒジャーブ(スカーフ)を付けている感じだ。

ただ、胸は大きな膨らみが2つあり、クビレもあり抜群のスタイルの持ち主だった。明らかに女性だろう。

そして、こちらを警戒するようにすぐに距離をとり、弓を構えて威嚇し始めた。


「っ、ちょっと待ってくれ。怪しいもんじゃないだ。言葉は通じるのかな・・・?」

「・・・・・・誰だ貴様は・・・・、なぜ急に目の前に現れたのだ。・・・・・得体のしれない魔法をつかったのか・・・・・?」


俺は、慌てて手を上げた仕草をして、少し距離を置くように後ずさんだ。

もちろんこうなることも想定しており、仲間のモンスターは連れずに俺一人でこの場所に来ている。

やはり、第一印象は大事であり、こちらが危害を加えないとアピールするためにも、一人できたのだ。


「まず、言葉は通じるみたいだな・・。謎の声が言っていたと思うが、3日間の保護期間というのが切れたからそれに伴ってお互いに認識することが出来たんだと思う・・・・・。」


俺はそういうとしばしの間、相手の反応を伺った。


「・・・・・・・・・・・・あの声か。あれによって私は助かった面もあるが・・・・・チキュウとかいう場所に飛ばされて、やりたくもない戦争に付き合わされているのは迷惑な話だ。」

「まあ確かにこんな戦争になるなんて、何が起こるか人生わからないもんだな。

 なあ、隣人になったことだし仲良くしないか。」

「っは、何をいう?貴様は人族ではないか。そういって今まで我々エルフに対してしてきたことを覚えているのか!

 捉えて無理やり奴隷として売られていく同胞を数多く見てきた。貴様も同じことを考えているのだろう。」


こうゆう人種間でのイザコザはどこにでもあるのか・・・。どうにか、話の流れを修正しないとな。


「いやいやそんな事は全然考えてないよ。そもそも、俺は地球人だし、おたくたちの世界の人間?、人族とは関係がない。

そもそも、地球には人族しかいなかったから、エルフと話すのも今回が初めてだ。

まあ、確かにファンタジーで有名なエルフだったら超絶美人さんなんだろうから一度拝んでみたいと思うけど、決して変な事は考えてない。」

「ほら言わんこっちゃないやましい気持ちがあるのだろう、私は騙されんぞ。」


隣人エルフはそうゆうといきなりこちらへ向かって弓矢をいってきた。


「うわっ危な。」


しかし、ガキンという音と共にこちらの領地に入る前に見えない壁に当たったかのように矢が落ちた。

この壁が無かったらそのまま俺の胸に矢が突き刺さっていただろう。

女性ということもあって少し気を許していたが、これは陣取りバトルなのである。

相手にとっては、異世界人だろうが地球人だろうが、憎き人族に変わりない。そのため、彼女は俺のことを殺す気になっているようだ。


「っち仕留めたと思ったが命拾いしたな。これから貴様を始末してやるから待っていろ。」


俺もモンスターとの戦いだけやってきて、lv2土地も余裕で取れているので油断していた。

プレイヤーはモンスターと違い自分で考え自分の判断で襲ってもくる、そうこれは陣取りバトル・・・・殺し合いにより、領地を拡大するんだ・・・・。

警戒レベルを上げて、冷静に対処しないとな・・・ちょっと挑発してみるか。


「俺はここにいる。せいぜい頑張って俺のところまで来てみろ。」


俺は自分の領地に警備の兵士を置かずに数マス離れた場所で相手を挑発した。

隣人エルフは、俺の安い挑発に触発されて、すぐさま配下モンスターと共に俺の領地に進軍してきた。「もうちょっと、考えて行動すれば良いのに・・・。」と思いながらその行動を観察した。


結果は見えている、5分ほどすると俺の領地は隣人エルフの領地へ変わっていた。

ただ、進軍のクールタイム10分があるので、残り5分は待ちぼうけだ。

俺は、隣人エルフに自分の姿を見せるようにして挑発を続けると別で、2部隊を編成して隣人エルフの領地を最大戦力のモンスター80体を率いてどんどんと侵略していった。

隣人エルフは俺の領地を侵略しては俺に「逃げるな」「こっちに来い」「正々堂々と戦え」などと言ってくる。

そう俺はというと、隣人エルフが近づいて来ては隣の領地へ移動して、隣人エルフとこれまでと同じだけの2マス領地をあけた距離を保っている。




まあ、これまでの隣人エルフを分析すると多分レベル1だ。

進軍してくる部隊数は1部隊で、侵略する部隊兵数は20体だった。

モンスターもゴブリン、コボルトがほとんどだ。

武器は銅シリーズを装備しているので、【力】【創造】にステータスポイントを振ったのだろう。

このレベルだったら、わざわざ回りくどいことをせずに、配下モンスターを守りに置いて反撃すれば簡単に打ち取れそうな気もするが・・・・。

どうしても、人を殺すのには抵抗があるな・・・。


この状況が隣人エルフには見えていないのだろうか・・・・、明らかに仲間がいないと俺に勝てないと思われる。

ただ、周りを警戒しても敵勢力は見当たらなかった。それともこの状況が、彼女の作戦で罠なのだろうか・・・。

俺はそんなことを考えながら、いつでも逃げられるように周りを警戒しつつ、どんどんと隣人エルフの逃げ道を囲むかのように領地を取って囲んでいった。


何度か相手の領地に「占領」をかけると相当数のモンスターが「待機」しているがモンスターの質ではこちらが圧倒的に勝っていた。

モンスターが大勢待機している場合は、もう1部隊を突っ込ませて逆に敵のモンスターを殲滅して戦力をどんどん削っていった。


2部隊で侵略する俺と1部隊で侵略をしている隣人エルフとの戦いの結果は見えている。

徐々に隣人エルフの行動範囲を狭めていき、戦力も削いでいった。


数日間、俺とのやり取りを行って流石に隣人エルフも自分の状況を理解し、西側に逃げる用に進軍していった。

隣人エルフの領地の北東には川が流れており、この陣取りバトルでは川を領地化出来ないため、彼女の逃げ道は西しか無かった。


そして、西側に逃げるために領地拡大していた隣人エルフだったが、とうとう俺に回り込まれて、西側への逃げ道も防がれ、主拠点を残すだけとなった。


◯ 俺の領地

◎ 俺の主拠点

▶︎ 隣人エルフの主拠点

空白 土地Lv3以上 

       北

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ◯◯ ◯ ◯  ◯  ◯◯

 ◯  ▶◯   ◯ ◯ ◯

西  ◯◯◯  ◯◯ ◯ ◎ 東

 ◯ ◯ ◯   ◯  ◯◯

    ◯ ◯◯ ◯  ◯

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

       南



様子見で隣人エルフの主拠点へ召喚したモンスターたちを10体ほど向かわせたが、流石に隣人エルフに傷を与えることが出来ずに全滅してしまった。

そして、俺が隣人エルフの主拠点付近で待機していると、隣人エルフは、主拠点の地下室から地上へ出てきた。


「さて、こんにちは。とうとうあなたの領地は1つとなってしまいましたが、どうしますか。降参しませんか。」

「何を言っている、貴様に降伏するくらいなら私は最後まで戦って名誉の死をあげるぞ・・・・。」

「そうですか・・・・・そんなに死に急ぐこともないと思うんですが。」

「そう思うなら、貴様自身がこっちに来て正々堂々と私と勝負しろ。私が貴様を血祭りにあげれば私は死ななくて済むのでな。」

「それはそうだが、まあ考えておく・・・・・、また来るわ。」


そう言って、俺は隣人エルフへ言いたいことをいって、そのまま放っておいて、その場を後にするのだった。

そうすると、遠くの方から何か声が聞こえてくるのだった。


「卑怯者、待て〜。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る