第7話 同盟



随分と隣人エルフに時間を費やしてしまったし、彼女には精神攻撃を継続して行うことにしている。


俺は隣人エルフの主拠点の周りを数百体のモンスターで常に囲んで、相手が攻めて来ても返り討ちにできる状況を作りだしている。


そして、毎日数十回不定期で相手の主拠点へ少数だったり大群だったりとランダムで攻め入っては、引いてなどを行い精神的な攻撃をし続けている。


もちろん、1日に1回は配下にならないかと俺自らコミニュケーションを取りにいった。


あと1週間くらい追い込んでそれでも配下に加わる気配がなければ、その時は侵略する決心をしないといけないな・・・・。


と言う事で、とりあえず隣人エルフをまだ放っておく事にしている。


その間にレベル上げと更なる検証をおこなうことにしている。【同盟】をどうするかって感じかな。


隣人とのやり取りの間にできる事はおこなっていた。チャットで情報収集を行うとちらほらと各地で戦争が起こっていた。


鬼人、獣人、エルフ、異世界人など様々な者たちと地球人が戦っていたり、レベル2になったプレイヤーたちの同盟設立の案内が多くチャットに出ていた。


プレイヤーレベルが2になると、【同盟】機能が開放される仕様となっているそうだ。


同盟には、学生オンリー、社会人オンリー、地域の集まりなど様々で募集があった。



まだ俺には同盟は早いかな。というのは、ある人と同盟を組みたいからだった。当初、個人メール・チャットで連絡を取りたかったが使えなかったのだ。


情報収集してわかったことだが、互いにレベル2にならないと個人メール・チャットは使えなかった。


つまり、俺はレベル2になったが、相手がレベル2になっていないのでまだ連絡が取れないでいるのだ。


あの人のことだから死ぬことは無いだろうが、なるべく早く連絡は取りたい。



「よう元気かい?」


俺は毎日の日課である隣人エルフのところへ来ている。


「・・・・・また貴様か。この状況を見て元気に見えるか・・・・。」


「・・・・いや、そうは見えないな。・・・・大変そうだな。」


「誰のせいだと思っているのだ、貴様が毎日毎日不定期に攻め込んでくるせいで、私は全然眠れてないんだよ。」


「それは大変だな。ところで、そろそろ俺の配下にならないか。」


「こんな事をするやつの配下になどなるわけがないだろう。消え失せろ。」


「はいはい。じゃあまたな。」


「二度と来るな。……いやこっちに来て正々堂々戦え!」


俺はまた、隣人エルフに振られてしまったようだ。去り際に手を振りながらそのまま主拠点へ戻った。


「まだまだ、元気みたいだから隣人エルフはもう暫く精神攻撃を続けるか。」





この手のゲームは序盤にいかに良い領地を取るかが今後の行動のカギを握ると思っている。


しかも土地は無限ではなく有限である。獲得できる土地が無くなったら、自分を強くすることが出来なくなる。そうなると敗者の仲間入りだ。


優秀な仲間が入れば救われるかもしれないが、寄生虫と化してしまうと見限られてしまう可能性がある。こんな世界なら尚更Give and Takeが重要だ。


「今はまだ、他種族との争いが目立っているようだが、そのうち日本人同士での争いも起きそうだな・・・。ってか、実際は、すでに日本人同士でも、殺戮がおこなわれているんだろうな・・・。」


チャットの情報だと、自分の家を主拠点に設定しているものがほとんどだ。


だから、市街地での領地確保が出来なくて飽和状態らしい。


日本人なので、なぜかこんな世界になっても日本人同士での争い事は少ないようだ。


「やはり、信頼出来る仲間が今後は必要になるよな、個人で出来ることなんで限られている。早くあの人と連絡を取って、同盟を組んでおきたいな。」





数日後、地図を確認していると遠くからであるが、東側からこちらへ近づいて来るプレイヤーを発見した。


俺は、華川町の主拠点から東側の市街地へ向けて優先して土地を確保して行く。


そして、数時間後には、lv1の土地を取って近づいて来るプレイヤーの進路を塞ぐことに成功した。


周りにあるlv2の土地も可能な範囲で占領しておいた。



暫くしたら、井上真太郎という方から個人メールが届いた。


知らない名前だったがメールの内容を確認すると、俺の領地が点在している華川町の山に向かって移動しているプレイヤーであり、俺と会って話したいとの内容だった。


会うことを承諾し、1時間後にそちらに向かうと返信した。俺は万が一のことも考慮して、500体のモンスターを連れて待ち合わせ場所へ向かった。



「こんにちは、お待たせしました。」


「……いや、大丈夫です。こちらこそ、態々お越しくださりありがとうございます。今日来たのは戦いをしに来たわけではありません。これだけは信じてください。」



井上さんは、俺が500体のモンスターを引き連れて現れたので、ちょっと驚きながらもその後冷静さを取り戻し会話を続けた。


「そうですか、わかりました。万が一のことを考えてちょっと大所帯で来てしまいました。ところで、話ってなんですか。」


「あはは、そうですか。こんな世界になって何が起こるかわかりませんからね。まあ、少し心当たりはあるかもしれませんが、単刀直入にいうと、・・・・・話というのは同盟についてです。葛城さんはまだ同盟に加入していないようですが、私たちの同盟に入りませんか。」


井上さんの言う通り、こういった展開になるんではなかろうかと、8割型思っていた。あと、2割は本格的なバトルだが、その可能性はまだ低いと思っている。


「・・・・それは、急な話ですね。まだ、お互いの事を知らないのによく俺のことを誘う気になりましたね。」


「まあ、驚かれますよね・・・・・。ですが、私たちは可能な範囲で遠くから地図を活用し華川町の山の中の状況も確認しており、ここまで領地を拡大している人のことが気になっていたのです。信頼については、これから徐々に気づいていけば良いと考えております。」


「・・・・・・そういわれても、急な話ですし、ちょっと考えさせてください。こちらも、いろいろと忙しいですので、また後日、連絡させてもらいます。」


「……そうですか、わかりました。実はもう1つお願いがあるのです。私をこの先に通して欲しいのですが、よろしいですか。」



まじか、そっちの話も出して来るか・・・手ぶらでは帰れないといった感じかな。ただ、そんなことを許可できないけどね。


「………すみませんが、それはお断りします。俺に攻撃を仕掛けて来なければこちらから攻めるつもりはありません。それなので、違うルートから来て貰えれば、今の所それを邪魔するつもりはありません・・・・・・。」


「わかりました。今日は一旦帰らせてもらいます。先程の同盟については、良い返事をお待ちしております。」


俺は多少奇襲を警戒したが、このあと何もなくお互いにモンスターを引き連れてこの場を去った。


後日、井上さんの同盟の申し出は、他の同盟に入る予定があるからと断った。



同盟の申し出を断ったあと、井上さんからしつこく山の中へ進ませてくれと連絡が来た。


異世界人たちと戦うために日本人同士で協力すべきだろうなどと本当にしつこかったが許可は出さなかった。


俺は自分の安全を確保したいから近場には可能な限り他プレイヤーを入れたくないとの言い分を押し通したのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る