第3話
「きっこちゃん、もう、びっくりしたやんか。こういうことは、あらかじめ、言うといてくれんと。」
「ごめんやで。ほんまに来ると思わへんかったんや。」
私の結婚式の日が決まり、それまでに、とこちゃんと二人で、一泊旅行をしようということになった。出発の日、特急に乗り換える駅のホームに、私の婚約者が見送りにあらわれたのだ。
「ああ、びっくりしたあ。」
とこちゃんはまだふくれている。
「ごめんな。大事な友達のとこちゃんと、結婚する前に、旅行に行きたいからって言うて、今日のデート、断ってん。そしたらな、何時の電車やって聞かれて……びっくりさせて堪忍やで。」
「まあ、もうええけど。」
それから私達は、近場の温泉宿に着き、思う存分、温泉につかり、食事を楽しんで、ふかふかの布団にくるまって、おしゃべりを続けた。
「とこちゃん、夢がかなってよかったな。子供のころから、恋愛結婚したいて言うてたもんな。ほんまによかったわ。」
「きっこちゃん、うち、勇気だして、告白してよかった。武藤さん、自分からは言うつもり、なかったらしいし。」
「なんで?」
「仕事で、うちに、厳しいことばっかし言うてるから、うちに嫌われてるて思てたらしいわ。ほんま、女心、わかってへんわ。うちは、武藤さんに認めてもらいとうて、一生懸命、頑張ってたのに。」
「でも、武藤さんかて、とこちゃんのこと、好きやったんやから、よかったやんか。」
「えへへ……うん、素直に嬉しい……仕事では厳しい人やけど、他の時は、すごく優しいねん。」
「そうか。とこちゃん、ええ顔してる。幸せそうや。結婚は、もう少し先になるんか?」
「うん。お姉ちゃんの結婚式が済んだら。」
「よかったやんか。うち、気になってたんや。おじちゃんとおばちゃん、お姉ちゃんの結婚が先やて、とこちゃんの結婚、承知しやはらへんかもしれへんて、心配してたんや。お姉ちゃんの結婚、決まらはったら、安心や。」
「きっこちゃん、お姉ちゃんの結婚相手の人、クリスチャンやねん。せやからな、ちょっと、大変やってんで。」
「そら、えらいことやな。」
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