第五話:災いの前兆

 ──砂の国ラハリアに着いてアリス達と別れた後、俺は休憩するために木陰で昼寝をしていた。起きて早々、落とし穴に落とされた俺は怒り心頭にバステトを探していた……。



 「出て来いバカ猫!」


 「捕まえられるもんなら捕まえてみろにゃあ」


 「どこまでもコケにしやがって、待ちやがれ!」



 木から木へと猫みたいな動きで移動しやがる。こうなったら、こっちも罠を仕掛けてやる。



 「すみません、これ下さい」



 俺は、罠を仕掛ける為に魚料理を買った。買っている最中、遠目にあのバカ猫がヨダレを垂らしながらこちらを見ていた。どうやら、魚料理は好物らしい。



 「よし、ここでいいか」



 俺は木陰に腰掛け、買った魚料理を食べ始める。



 「おお、これうまいな。うっ!苦しい……」



 もちろんこれは演技だ。そして、苦しんでいる俺を心配したのかあのバカ猫がまんまとやって来た。



 「大丈夫かにゃあ?頭……」


 「なんだとコラァ!」



 馬鹿は俺の方だった。


 「にゃははは、そんな見え見えの罠に引っかかる馬鹿はいないにゃあ」


 「おい逃げるな、この卑怯者!」


 「卑怯者はどっちにゃあ」


 「クソッ!なんだこの塀はっ」



 あのバカ猫を追いかけていたら、塀の向こう側へ逃げられちまった。



 「今日は楽しかったにゃあ、またにゃあ」


 「また逃がしちまった!本当に次期女王があのバカ猫でいいのかこの国は……。ああ疲れた、アリス達と合流するか」



 塀に寄りかかっていると、疲れが少し楽になったな。



 「神殿はどっちだっけか……ん?」



 俺は、寄りかかっていた塀の向こう側を見る。



 「ここが神殿じゃねーか!」



 バカ猫を追いかけていて全然気が付かなかった。



 「とりあえず、中に入れて貰うか」



 衛兵の人に事情を伝えたが、怪しいやつの言うことなんか信じられるかと追い返された。



 「こうなるんだったら、一緒に行くべきだったな」



 まあ、ラハリア王との面倒臭いやり取りはアリス達に任せるか。



 「やっと見つけたぞマルス」


 「ルミナス丁度良かった、衛兵に事情を説明しても中に入れてくれなくて困ってたんだ」


 「あの……マルス、言い辛いんだが……その……アリスが捕まった」


 「は?いや待て、どうせラハリア王の手の骨でも折って牢屋にいるんだろ?」



 ルミナスの反応で何となくそんな予感がした。



 「ああ、父上にも同じ事をしたっていうのに全くアリスには困ったものだ」


 「あれほど手加減しろって言ったのにゴリラ女め。しょうがねえ、迎えに行くか」


 「釈放には、5000万か王族の許しが無いとダメだと聞いたが」


 「よし、ゴリラ女は置いて行こう」



 災いを封印するより、アリスを封印した方が平和かも知れない。



 「まあ、災いの封印方法は聞いておいたからいつでも出発は出来るぞ」


 「お前も置いてく気まんまんじゃねーか!てか、災いの封印方法この国にあったのか」


 「どうやら封印には、勇者の……」


 「ん?なんだこの地鳴りは……うお、かなりデカいぞ」



 立っていられない位の地震なんて初めてだぞ。



 「ルミナス大丈夫か?どうやら収まったみたいだな」


 「こっちは大丈夫だ。しかし、さっきの地震は一体。まさか、災いの封印が……」

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