第三話:ラハリア砂漠


 水もない、食料もない……俺達は、砂漠のど真ん中を歩いている。まさか、こんな事になるとは誰も予想出来なかった……


 歩いている途中、サンドシャークと言う魔物に襲われた。水と食料の入ったバッグを落としたせいで、こんな事になっている。



 「暑いな、どっか休める場所はないか」


 「あったら、とっくに休んでいますわ」


 「二人ともだらしがない」


 「お前、ほんとに付いてきて大丈夫なのか?今頃、城は大騒ぎなんじゃ……」



 そう言うと、なぜか付いて来てしまったルミナスに問いかける。ルミナに慣れてしまったせいか、タメ口で話すようになっていた。


 「お父様の部屋に手紙を置いてきたから心配ない」


 「ちなみに、なんて書いて来たんだ?」


 「お父様へ──私はマルス殿に連れられラハリアに行きます。どうか、探さないで下さい……と」


 「……と、じゃねーよ!まるで、俺が誘拐犯みたいじゃねーか!指名手配とかされないだろうな?」


 「一国の王女を救った男が誘拐犯だとは思わない……と思う」


 「……」



 最後の方だけ小声なのが気になるがまあいい。



 「二人とも見て下さいまし、あそこの岩場で休憩出来そうですわ」


 「やっと……休める」



 サンドシャークに追い回された挙げ句に水も食料も落として、もう体力の限界だ。


 腰を下ろし、少し休憩しているとアリスが……



 「何か岩の陰にありますわ、これは……動物の骨ですわね」


 「なあこれって……」



 辺りを見回すと、砂からヒレのような物が出てこちらを取り囲んでいる。どうやらここは、サンドシャークのナワバリらしい。



 「終わった……」



 サンドシャークの数に絶望していると、



 「ここは、私に任せてくれ」


 「こんな数どうするんだ?」


 「まあ、見ててくれ」



 ルナミスに言われるがまま見ていると、魔法の詠唱を唱え出した。強力な魔法には詠唱が必要なんだが……



 「はああああああああ、エクスプロージョン!」



 どこかで聞いたようなかけ声と共に、辺り一面が大爆発した。



 「「ゲホッゲホッ」」



 大爆発で舞った砂ぼこりでむせる俺とアリス。



 「また、やり過ぎてしまったな」


 「やり過ぎにも程があるだろ!」



 辺りにあった岩場は爆発で吹き飛び、跡形も無く消えていた。ほとんどのサンドシャークは死に絶え、生き残ったやつはどこかへ逃げて行った。


 「死ぬかと思いましたわ」


 「いやいやすまない、魔物を見るとつい強力な魔法を使いたくなってしまうんだ」


 「そう……なのか」



 分かった、コイツもアリスと同じゴリラだ。旅仲間のゴリラが二匹に増えた。



 「でも助かりましたわ、魔物が砂の中ではわたくしの攻撃が当たりませんの」


 「それは良かった、これからは後ろから魔法で援護しよう」



 コイツに後ろを預けたら、いつ爆殺されるか不安しかない。



 「おい、あれ見て見ろよ!街だ!」


 「あれが、砂の国ラハリアだ」


 「岩場で隠れて見えなかったところが、爆発で見えるようになったって事ですわね」


 「ようやく一息つけそうだな……」

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