第3話 それでも雨は降り続ける

殺人鬼が怪しく笑った。

抵抗したくても下手に動けば力尽きる時間が早まることを悟った健二は、身動きの一切をやめた。


殺人鬼「私がなぜ君を狙ったか、それに理由はありません。ただ偶然、視界に入ったからです。」

健二「視界に入ったら刺し殺す。そんな無茶苦茶があるか。なぜこんなことを続けるんだ。」

殺人鬼「正直、私にもわかりません。なぜこんなことをしているのか。機械が時たま不具合をきたして人間の操作管理上から逸脱することってありますよね?私という人間も多分そういうことなんじゃないかなって思うんですよ。人間の人間性ってなんなんですかね?何をしたら人間失格なんですかね?」

健二「。。。」

殺人鬼「あなたは、すごく冷静な人だ。これまでの人たちとはまるで違う。そうだ、生きるチャンスをあげますよ。この後私はこのナイフをあなたの体から抜きます。なぜなら私は、証拠を残して立ち去るわけにはいかないからです。顔はあなたに見られましたが、人相だけで捕まるほど私は隠れ下手でありませんから。」

健二「抜いたら、、出血死するんじゃ」

殺人鬼「大丈夫ですよ、10分近くは持ちます。それまでにできることをすればいい。助けを呼ぼうとしたり、下手に私を取り押さえようとすれば、当然死の時間は早まります。覚悟して行動選択をしてください。」

健二「お前はいったい」

ズリュッ

鈍い音と感覚とともにナイフが抜けた。

健二「うっ」

殺人鬼「健闘を」


殺人鬼が隣から消えた。

血が、これまで見たことのない量の血が横腹から流れ出てくる。

まずは、救急車を呼ばなくては。

ダッシュボードにしまっていたスマホを取り出し、急いで救急車を呼んだ。

救急隊員を待つ間の時間の長さは、今まで経験したことのないものだった。

一瞬を永遠と感じる。そんな感じだった。

だんだんと意識が遠のき、すべての感覚が朧気になっていくのを感じる。

痛みを我慢し後部座席にあったクッションを横腹に押しつけ圧迫する。

白色のクッションは、みるみるうちに鮮血に染まる。

だめだ、出血が全然治らない。

遠のき始めた意識とともに、フロントガラスの雨水に赤色の閃光が滲み始めた。

救急車が到着した様だ。

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