第4話

「なあ、きっこちゃん、聞いてくれるか?」

「とこちゃん、改まってどないしたん?」

「笑わんといてな。うちな、ドラマみたいな恋愛結婚したいねん。いらん人、押しつけるような、人員整理みたいな結婚、絶対にいやや。」

「当たり前や。」

「でもな、きっこちゃん。うちの家族って、人員整理の結婚で成り立っているんや。」

とこちゃんは、悲しそうに言った。

「どういうことや?」

「きっこちゃん、うちのおばあちゃん、きつう、背中まがっているやろ。」

「確かに。それが、どうかしたんか?うち、とこちゃんのおばあちゃんのこと、大好きやで。」

「うちのおばあちゃん、なんの病気かようわからへんけど、若い頃から背中まがってんねん。お嫁の貰い手がないって言われて、実家で肩身が狭かったんやて。そんな時、お嫁さんの来手がのうて困っている人がいるって言われて、おじいちゃんのところにお嫁に来たんや。おじいちゃんは、悪い人やないで。ただ、おじいちゃんのお父さんとお兄さんが、遊び人で、ほとんどの財産、食いつぶさはった。おじいちゃんのお母さんは苦労がたたって亡くならはった。そんなこんなで、おじいちゃん、三十過ぎてもお嫁さん、なかったん。」

「そうやったんや。とこちゃんのおじいちゃん、苦労しやはったんやな。」

「おじいちゃん、おばあちゃんを初めて見た時、恥ずかしいて、背中丸めて小そうなってると思ったんやて。訳を聞いてびっくりしたけど、おばあちゃんがにこにこ笑っていて可愛らしいから、結婚したんやて。でも、子供できひんかって、お父ちゃんとお母ちゃんを子供にしたんや。お父ちゃんとお母ちゃんも、お互いに子だくさんの家に生まれて、周りの都合で結婚したようなもんらしい。夫婦でおじいちゃんおばあちゃんの子供になったんも、お父ちゃんとお母ちゃんの実家にしたら、体のいいやっかい払いやねんて。」

「とこちゃん、事情はようわかったわ。でもな、とこちゃんとこは、みんな仲良うて、ええ家族や。うちが知っているどこの家よりも、ええ家族やで。」

「きっこちゃん、ありがとう。うれしいわ、そんなん言うてくれて。でも、うちは絶対に恋愛するねん。」

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