第3話

「秀子おばちゃん、亡くならはったんやなあ。」

一緒に宿題をしていたら、とこちゃんがふとつぶやいた。

「秀子おばちゃんのこと、正直言って、大嫌いやってん。うちの家のこと、近所に言いふらさはって、ほんま、いややった。」

「きっこちゃんのとこだけやないわ。秀子おばちゃんのおしゃべりのネタになった家はぎょうさんある。」

「せやな。最後は、かわいそうな亡くなりかたやったらしいな。」

「うちのおばあちゃん、秀子おばちゃんのお葬式、行ってあげたんやて。」

「とこちゃんのおばあちゃん、優しいなあ。」

「うちのおばあちゃんが言うにはな、秀子おばちゃんって、戦争中にお嫁に来やはったらしいわ。結婚式いうても、普段着のもんぺやったんやて。花嫁さんの荷物、風呂敷一つだけで、いくら戦争中で、ぜいたくできひんかった時代でも、あんまりやて思うたんやて。」

「秀子おばちゃんが結婚した人ってどんな人やったんか聞いた?」

「中村さんって大きいお家があるやろ、そこの次男さんやねんけど、ちゃんとした分家があるわけでもなし、本家の敷地の隅っこの小さい小屋みたいな家で暮らしてはったんやて。」

「それってひどない?」

「何でも、中村さんの次男さんは、遊び人で、嫁のきてがなかったから、貧乏な家からお嫁さんをもらったんやて。それが秀子おばちゃんやて。下目の家からあえてお嫁さんをもらったら、どんな辛抱もするって思わはったんやて。」

「あんまりやわ。」

「ひどすぎるわ。普段から、おばあちゃんとかお母ちゃん、近所の家のこと色々と言うていて、たいがいのことには驚かへんうちも、びっくりしたわ。」

いつの間にか、宿題をほったらかして、二人で憤っていた。

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