幽霊考
幽霊の正体や如何に?
とはいえ、今日のお話は怪奇現象を語るわけでも、怪談で怖がらせようというものでもありません。幽霊の正体をもっとしっかり解明してほしいという願いのような結末になります。
民俗学的、あるいは科学、医学の分野からの個人的な視点です。「信じるか信じないかはあなた次第」では止めない、妖怪学的探究です。
まず、断っておきますが、私は幽霊、少なくともそれが人の化けて出たものとは信じていません。
だって、人は一日でも何人死にます? 果たしてその中で満足な死を迎え、安らかに天国に行った人がどれほどいるか。それのほうが少ないでしょう。
恨みや心残りなど、多くの人にあったはず。
幽霊が恨みや心残りで化けて出てくる「人」であるというのなら、無数のそれがあってもおかしくない。
ところが、そうはならない。では、なぜ幽霊として出られる人がいるのか、それをいつも考えてしまうのです。
アニミズム的な神さまの存在の報告も。
そのすべてを否定することは出来ない。
じゃあ、「幽霊」っていったい、何なの?
私は何か、いわゆるブラックマターのような、まだ人類が見ることのできないものが作用しているのではないかと考えています。
それが場所、あるいは個人、濃くたまっているところで人の残留思念のようなものと結びついて「幽霊」として存在を現すのではないかと。人の魂そのものが幽霊になるのではなく、変質した何かが幽霊と認識されるのではないか。そう考えるのです。
こういうと神秘主義的と敬遠されるでしょうが、私は真剣です。
参考にすることは、現代医学の発展の過程。
病気はかつて、何か因果があって、つまり自分自身や過去の祖先の罪などによって起こるものと考えられていました。伝染病や感染症といった、広く人類を苦しめるものは悪魔や
古い昔の治療は、今の目から見れば本当にばかげていると見えるものばかり。
それもしかし、原因が見えないから。
見えないものに対して必死に抵抗していたことが、今の世から見ればそれこそ幽霊を信じるようなばかげたものになってしまったのです。
ばかげていると考えたのは、現代の人間だけではありません。
昔の人だって、「何か原因があるはず」と真剣に考えたのです。
だからこそ、医学は発展、数々の病気も克服されてきました。
伝染病、感染症の原因が悪魔の仕業ではないと知れるようになったのは「見える」ようになったから。
細菌であったり、ウィルスであったり、それを顕微鏡などの道具で発見し、見えることによって病気を引き起こすメカニズムも解明したから。
可視化することによって原因は突き止められ、「見る」ことの重要性もまたクローズアップされるようになりました。
しかし、幽霊というのは実にあやふやな「見る」ことのできない存在です。
そもそも幽霊の考え方自体が時代によって変わり、それにつれて姿かたちさえ変わるのです。
平安の昔、漢字が日本に伝わり、カタカナ、ひらがなも出来て日常の記録や物語が書き残されるようになったころから、幽霊の存在は語られてきました。
ところがそこでは死霊の存在は稀で、例えば源氏物語でも生霊が主でした。
死霊といえば、
平安の昔は貴族文化で庶民の話などほとんど語られませんが、生霊にしても、死霊にしても、生前と全く変わらない姿、あるいは人を超えた神さまの形をとって出てくるのです。
死霊の存在が庶民の間で膨れ上がっていくのは江戸の時代、それもやはり物語のなかです。(それゆえ、地方の自然発生的な口承を重視する柳田国男先生は、都市部で「作られた」幽霊を語るのを嫌がっておられたのですが。)
説話や因果物語の流布、とりわけそれが「親の因果が子にたたり」と庶民娯楽の代表である歌舞伎に取り入れられた影響は無視できません。
足のない、手をだらりと前に出す、そんな幽霊の姿は浮世絵に描かれますが、現代まで続く日本人の幽霊の特徴は極めてそれに影響されている。
外国に行けば「幽霊には足がない」といっても通じませんからね。
そこがすでにおかしい。
幽霊が世界共通で「人が化けて出たもの」だというなら、姿かたちに差異など生まれないはずです。人間は人間に違いないのですから。
時代が下るに従い、死生観も、それに伴う葬送も変わっていきます。すれば、幽霊もまた、出てくる理由も姿かたちも変わっていく。けれど、「何か」がいることだけは変わらない。
もしかしたら「それ」は全く別の何かで、幽霊(人の魂)とみられるのは文化的な刷り込みから「人が化けて出てきた」と思い込んでいるだけかもしれない。
幽霊が精神に異常をきたすような電磁波によるものといわれてもピンとこない。
映像や写真にはっきり映り込むなど、確かな存在としての報告が幽霊や神さまといわれるものにある以上は、何かがずっとこの地球上に存在しているのは間違いないのではないでしょうか。
その存在が異常な電磁波を出して、それによって人間を苦しめていると逆を考えてもおかしくはない。
病原菌やウィルスのように。
幽霊は時に人が生活する上での妨げになります。
それを解明して生活を守ることは決して人類の不利益にはならないはず。
怪力乱神を語らずといいますが、科学的な解明、幽霊の可視化は、先の見えないあやふやな現代にこそ必要なのではないでしょうか。
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